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「Prequel」白がいちばん明るい色、白はすべての色を溶かす…羽生結弦『“REALIVE”an ICE STORY project』試考(2)

(c) AdobeStock

日野百草 ファンしか知らない羽生結弦

目次

白は色であり、光

 それにしても「色」だ。

 それが問題だ。

 『WHITE…』その全貌はようとして知れない。それでも「Prequel」もまた色が主題であった。白い布が降りてきた、あの白、羽生結弦は〈風〉とした。〈神聖〉ともした。

 白は色であり、光である。

 色とは光でもある。

〈純粋な半透明の曇りは透明なものから導き出される。したがって、それはまた先に述べた三様の仕方で現われうる〉

〈完全な曇りは白である。空間を充満したときの最も未決定な、最も明るい最初の不透明な状態である〉

〈透明なものそのものも、経験的に眺めれば、すでに曇りの第一段階である。この曇りからさらに不透明な白にいたる諸段階は無限である〉

 そうだ、白はもっとも明るく、それでいて不透明なものだ。そして不透明な白に至る道は無限ーー。

純白をどれだけの人が目に留めただろうか

 ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは語った。そう『色彩論』だ。(※1)

 ゲーテは小説や戯曲、詩を手掛けたことは知られるが色についても考察している。

 本書の中で「色について大成しようとする試み」について古代ギリシアの哲学者テオプラストスと17世紀の哲学者ロバート・ボイルとゲーテ自身の3人であると語っているが、有名無名問わず、思想家のみならず「色」について人類の多くが「なぜその色なのか」「なぜその色になるのか」「本当にその色なのか」「私たちの見ているその色は、私たちの考えるその色でよいのか」「色とは光なのか、それとも光が色なのか」を問い続けてきた。

 ここであえて挙げるとするなら、ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルクだろうか。彼は「白」についてこうゲーテに手紙を書いている。

〈人は自分が白と呼んでいるものがどんな色なのか知っている、だが純白を今までいったいどれだけの人が目に留めただろうか?〉

 ここでは「純」のついた「白」についての疑義を呈している。私たちの考える「白」とは何なのか、羽生結弦も以前から色について語っているが、いよいよアイスストーリーに組み込んできた。

 そう、羽生結弦は氷上芸術に21世紀の「色」という論をアイスストーリーに組み込んできた。さて、難題だ。

白がいちばん明るい色である

 それでも、私は羽生結弦と「色」のきっかけを掴みたい。それは「Prequel」並びに、まだ見ぬ『WHITE…』へと至るに必要なことと思う。

 先ほどゲーテについて触れたが、この「色」については哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインも最晩年に『色彩について』を著している。ゲーテの色彩論批判ともいえる本書が現代人には一番ふさわしいと思う。また羽生結弦という「色」そのものにも、あくまで私見だが一番近い見方に思う。(※2)

〈一枚の白い紙が青空から明るさを受けとる様子が描かれている絵のなかでは、青空はその白い紙よりも明るい。しかし別の意味では青の方が暗い色であり、白の方が明るい色だ。パレットの上では白がいちばん明るい色である〉

〈一枚の紙について、それは純白だが、その紙が雪と並べられると、紙の方が灰色に見えてくる、と言うとしても、その紙が普通の環境におかれているときには、やはり私はそれを明るい灰色とは呼ばず、当然白と呼ぶだろう。もちろん実験室内で私が(たとえば精密な時間規定という純化された概念を使うことがあるように)白の純化された概念を使うことはありえよう〉

〈人が白い輝きを『白い』と呼びたくなることはありえないだろう、つまり人は表面の色として見ているものしか『白い』と呼ばないのである〉

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、修士(芸術)、芸術修士(MFA)。文芸論、人物評伝および比較史におけるポップカルチャー、またフィギュアスケートなど舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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