「子どものため」「とりあえず別居」が命取りになる。離婚前に知っておくべき落とし穴
「早く決着をつけたい」「とりあえず家を出たい」——限界を迎えたとき、人は一刻も早く苦しい環境から逃れようとする。しかし、その焦りに任せた一歩が、子どもとの未来を守る大切なお金を取りこぼす原因になる。口約束だけで終わらせてしまったり、家を飛び出してしまったりと、感情で動いた結果、自ら「交渉の切り札」を手放してしまうケースは少なくないという。
数多くの離婚相談を受けて岡野あつこ氏は、「『とりあえず家を出る』は、交渉カードを捨てるのと同じ」と警鐘を鳴らす。では、確実に養育費をもらい続けるには何が必要なのか。そして、「子どものために我慢する」という選択は本当に正しいのか。
今回は岡野氏に、確実な養育費の確保と住まいの戦略、そして「子どものための我慢」に潜む罠について話を伺った。全4回の第3回。
みんかぶマガジン連載「絶対に損はしたくない!泥沼離婚のマネー戦略」第3回
目次
養育費は口約束では取れない。「書面化」だけが確実な方法
——離婚後、子どもに関してもらい損ねやすいものはありますか?
「養育費ですね。もらえるかどうかではなく、確実にもらい続ける仕組みが重要なんです。口約束では危険で、必ず書面化が必要です。調停調書か公正証書で決めておかないと、払ってもらえないケースが本当に多い。国が養育費の取り立てに乗り出そうという議論が出るほど、払わない方が多いのが現状です」
——なぜ払わない人がそんなに多いのでしょうか。
「決め方が曖昧なままで離婚してしまうからです。まあもらえるだろうと思ったまま口約束で終わらせてしまい、後から取ろうと思ったらとても大変になる。過去にもらえなかった分を遡って請求しようとすると、手間も時間もかかります。だから、離婚が成立する前に、調停や公正証書で書面として残す。それが唯一確実な方法です」
養育費の不払いは、子どもの生活に直接影響する。しかし感情的に離婚を急いだ場合、「早く決着をつけたい」という気持ちから、書面化のステップを省いてしまうことが多い。後悔しても、口約束に証明力はない。離婚協議の段階で、必ず書面に落とし込むこと。それが子どもを守ることにもつながる。
「とりあえず家を出る」は、交渉カードを捨てるのと同じ
——住まいについては、どんな失敗が多いですか?
「感情的に家を飛び出してしまうケースが多いです。でも、住まいは交渉カードなんですよ。家を出て『もういらない』と言ってしまったら、夫に取られてしまうようなものです。ローン中の家でも、売ればお金になる。その半分を請求できるのに、夫が売らないと言えばそのお金はもらえない。早く離婚したいから『もういい』と譲ってしまう方が多いんですが、それは大きな損になることがあります」
——連帯保証人になっている場合はどうなりますか?
「連帯保証人はなかなか外してもらえないことが多いです。夫が住んでいれば、よほどのことがない限りローンは払い続けますので、直接の請求が来ることは少ない。ただ、夫が払わなかった場合には来ます。だから出る・残る・売るは、感情ではなく戦略で決めないといけません。家を出る前に、その家がいくらになるか、ローンの残債はいくらか、きちんと調べてから動くことが大切です」
家を出たいという気持ちは自然だ。しかし「出る」という行動は、交渉の切り札を一枚手放すことでもある。住まいを離れる前に、不動産の査定額、ローンの残債の有無を確認しておくだけで、その後の交渉は大きく変わる。苦しい状況の中でも、その数字だけは把握してから動いてほしいと岡野さんは言う。