『ARIRANG』それは大切な人の、心の歌ーー BTSとアリラン、その「愛のメッセージ」を紐解く(3)

目次
良いものは理由がなくとも愛される
BTS The 5th Album『ARIRANG』。
アリランには「愛のアリラン」と呼ばれる詩もある。アリランには人を愛することの苦しさと切なさ、ときにかなわぬ恋や離別に対する悔しさもある。
アリアリラン スリスリラン アラリが出た
アリランの峠を越えてくれ
わたしを見て わたしを見て わたしを見てよ
真冬の師走に 花見るように わたしを見てよ
いとしの人が くるのに 挨拶もできず
エプロン 口にくわえて 微笑むばかり ※1
「密陽アリラン」(密陽=慶尚南道のミリャン)から引いたが、「アリラン」はリズムの一片でしかなくなっている。元のいにしえの名前だとか、動詞のアリダ(胸が苦しいとか、痛いの意)から転じたものとか、そういった由来の本質から離れたものとなっている。誰からも愛されるリズムとして。
多くの人に愛されたからこそ、普遍的な愛の言葉そのものが残った。良いものは理由がなくとも愛される。本来、人の愛に理由などいらないように。
心の自由、解放
RMのWeverseに投稿された1月16日のメッセージ〈僕にとっての愛、容易ではない言葉です〉も先に引いたが、それでもRMは、
〈僕はシンプルな心もままに伝えたいと思うのです。愛していると〉
としている。
愛は人を縛るが、愛はときに人を自由にする。
〈これらのうた(アリラン)は、愛の表現をつうじて、その時代の人民の生活のさまざまな側面を反映するとともに、愛という人間的な主題が、なににもまして、中世的な桎梏からの個性解放への志向とかたく結び合っている〉※2
私は先にアリランを心の自由、解放と書いたが、まさにそれを実現することのひとつが「愛の表現」であるように思う。
敬愛するナムさんのメッセージ、私も好きなリルケなので返歌として、私の一番好きなリルケの「愛の表現」を拙訳で引く。
〈私は炎よりもお前を愛す〉※3
リルケの素晴らしさーーたったこれだけだが、すべての愛の表現がある、愛の力がある。これまでこの地球上に生を受けた、たくさんの人たちがこの「愛」と共にあった。
アリランもまたそうした愛の歌だ。愛の感情もまた、果ては無いのだから。
すでに事前予約で『ARIRANG』はSpotify1位(1月21日)となった。収録曲は16曲で3月20日にリリースされる。その翌日には景福宮と光化門、崇礼門といった韓国の文化遺産で公演を開催する予定だと報じられている。またソウル市庁前の広場でもイベントを開催する予定とも。