第十三話「初犯の憂鬱」連載小説「奪われるースパイ天国・日本の敗戦ー」
スパイ防止法がないこの“天国”・日本で、知らない間に国が「奪われる」──。
表向きの歴史やニュースの裏側に潜む、冷酷な国際諜報戦と、個人の運命が国家間の巨大な陰謀に巻き込まれていく壮大な安全保障サスペンス小説、ここに爆誕。
舞台は、女性初の内閣総理大臣・高地きみえが熱狂的な支持を背景に「強い日本」を目指す日本。彼女は長年の懸案である日本人拉致被害者の奪還を決意し、極秘裏に北朝鮮の金正恩総書記との会談に臨む。しかし、その外交交渉の裏側では、すでに北朝鮮の体制に「影」が差し込み、巨大な隣国・中国の思惑が絡み合っていた。
第十三話「初犯の憂鬱」
「もう2度、こんなことはしないでくださいね! 次はどうなるかわかりませんから」。GTL社の日本支社幹部、キムは何度も同じ言葉を繰り返した。研究所に戻った山田浩一は、「護衛」をまいて危険な状態になったことの責任を厳しく追及された。「初犯」だったことから減俸30%、「護衛2人追加」の処分だけで済んだ。「一体、何のためにあんなことを・・・」。キムはそう言いかけて途中でストップした。浩一は他に失点のない真面目な研究者であり、何より彼の研究はGTL社にとって欠かせないものとなっていた。