空き家問題は戸建てだけじゃない!空き家マンションが“負動産”になる

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 全国的に「空き家」が問題となっている中、不動産プロデュース事業を展開する牧野知弘氏によると、「マンション空き家」についても問題が生じ始めているという。いま、マンションに何が起こっているのか。牧野氏が解説する。全3回中の1回目。

※本稿は牧野知弘著『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)から抜粋、再構成したものです。

第2回:「憧れの田舎暮らし」の実態とは?その選択、実はかなりリスクが高いかも

第3回:定年後は「第2の家選び」も!大手不動産会社が55歳以上の顧客を「ごみ」扱いする理由

目次

「マンション空き家」も大問題

 空き家問題を語る場合は、戸建て住宅に問題をフォーカスしがちですが、現代の相続財産にはマンションが登場し始めています。マンションの歴史は60年以上となり、戸数は累計700万戸を超え、ごく一般的な住居形態となりました。

 親の家は戸建て、という概念も変わり始めているのです。今この記事を読んでいる方の中にも親の住まいはマンションだという方は意外に多いはずです。 

 さて親が住んでいたマンション。マンションなら貸せる(だろう)し、貸せなくとも売れる(だろう)と思いがちですが、郊外にある築年の古いマンションは人気がありません。築40年を超えるようなマンションは、都心一等地にあれば「ヴィンテージマンション」などと称され、高い価格で取引されますが、同じような築古でも立地が郊外になるといけません。

 まず借り手を探そうにも、近隣にある新築や築浅の賃貸マンションに比べて競争力がありません。ニュータウンなどになるとそもそも賃借需要そのものが存在しません。  

 その前に、親が住んでいた痕跡をなくして賃貸に耐えうる仕様にするのに途方もなくお金がかかります。近年リニューアル費用は高騰を続けており、水回りや内装などを更新すると簡単に500万円から1000万円を請求されます。高い家賃で貸せればまだしも、投資した費用をわずかな賃料で回収するのにひと苦労となります。

築古マンションが「不動産」から「負動産」へ

 ならばマンション価格も高騰しているので売却すればよいと考えがちですが、中古マンションが高騰しているのはあくまでも東京都区部など一部のエリアに限られた話です。しかも築40年ともなれば、周辺の新しいマンションと比べれば外装や共用部の仕様は見劣りします。

 オートロックのないようなマンションになると、女性だけでなく最近は男性でも敬遠します。しっかりと修繕が施されているマンションならまだしも、管理費や修繕積立金の滞納があるマンションも少なくありません。  

 マンション住民は高齢化し、若い家族が入居するには気が引けます。郊外では若いファミリー自体が減少しています。なかなか買い手が見つからないのが実態です。首都圏でも千葉県や埼玉県の郊外。JRや私鉄の主要駅からさらに支線で少しいった先の駅などにある築古マンションになると、1住戸数百万円で売られている事例などいくらでもあります。

 中には中古車1台分(150万円から200万円)くらいの希望価格が掲載されている物件もあります。このクラスになるともはや「いくらでもよいのでもらってください」レベルです。  

  借り手も買い手もいない相続マンションは非常に厄介な存在となります。所有し続けているかぎり、毎月管理費、修繕積立金が請求されてくるからです。財産であったはずの不動産が負債=負動産に転じてしまいます。  

「相続マンション、誰が持っているんだ」問題

 最近起こっているのが、相続したマンション、誰が持っているんだ問題です。郊外築古マンションで借り手も買い手もいないと思われるものを中心に相続が生じても相続人が名乗り出ない事例が頻発しているのです。  

 マンションは管理組合によって運営されています。よくマンションは管理会社が運営していると勘違いする人がいますが、管理責任は管理組合にあり、管理会社はあくまでも組合の仕事をサポートしているにすぎません。  

 管理組合では所有者の方が亡くなった場合には管理規約に則って相続人が誰になるか組合に届けてもらうようにしています。ところが届け出がなされないと、いったい誰が相続し、今後誰が管理費、修繕積立金を支払ってくれるのかがわからなくなってしまいます。  

 一人暮らしをされていたおばあちゃまがいた。いつの日からか姿を見せなくなった。高齢者施設にでも入所されたのだろう。そしてある月から管理費、修繕積立金の引き落としがされなくなる。亡くなったことで銀行口座が閉鎖されているからです。

 相続人が決まれば滞納分をお支払いいただこうと思って数か月。結局誰も届け出に来ない。さあ大変だ。これが概ねのシナリオです。  

 規則ではこうした事態が発生した場合、組合は相続人を特定したうえで請求する。相続人が現れない、あるいは連絡が取れない、支払う意思がないような場合には住戸を差し押さえて売却することで未納分を回収します。  

 ところが組合役員が実際に弁護士等に依頼して物件を差し押さえ裁判所に出向く出向くなどという行為を円滑にできるかと言えば、築古のマンションほど組合役員も高齢化しており、とてもそうした手続きを遂行できません。

 管理会社の助けをかりて実現できたとしても、実際に売却できなければ、弁護士費用を組合のお金から拠出しなくてはなりません。そんな面倒でリスクのあることを積極的にしたいとは思わないものです。  

 ただこうした状況を放置していると、別の住戸でも同様な事態が繰り返され、やがては管理費や修繕積立金の不足が問題となります。管理や修繕が行き届かないとマンションの資産価値はどんどん落ちていきます。  

 たとえ自分自身は相続したマンションできちんと管理費、修繕積立金を支払っていたとしても、物件価値は下がっていく。なかなかの負動産地獄が待っているのです。

牧野知弘著『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)など多数。

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