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江戸はなぜ260年も繁栄したのか? 高市首相が今こそ学ぶべき「強い政府と自由経済」

 江戸時代と聞くと、多くの人は「鎖国」「身分制度」「停滞した社会」といったイメージを思い浮かべるだろう。しかし、この時代の日本は世界でも珍しいほど長期の平和を実現し、都市経済や商業が大きく発展した社会でもあった。経済誌『プレジデント』元編集長で作家の小倉健一氏は、その背景にあったのは「弱い政府」でも「放任主義」でもないと指摘する。徳川幕府が作り上げた強固な平和の土台と、その内側で許された比較的自由な経済活動こそが、日本独自の成長を生み出したというのだ。では、この江戸の仕組みは、現代日本にどのような示唆を与えるのか。高市政権が目指すべき国家の姿を、江戸の経済史から読み解く。

 みんかぶプレミアム連載「小倉健一の新保守宣言」

目次

260年の平和を生んだ「強い政府」が商業経済を発展させた

 江戸時代の街並みを想像すると、誰もが賑やかな市場や活気ある町人の姿を想起する。この時代が約260年もの間、大きな戦争もなく平和であり続けた理由は、徳川幕府という政府が極めて強い軍事力と統治力を持っていたからだ。政府が強い力を持つことは、決して国民の活動を縛るためのものではない。真の目的は、国内外の争いを力強く抑え込み、誰もが安心して暮らせる社会の土台を作ることにある。戦乱の世を終わらせた政府の強さは、国民が明日の命を心配することなく、日々の仕事に打ち込める環境を提供した。

 この強固な平和という土台の上に、当時としては比較的自由な経済の花が開いた事実は見逃せない。幕府という強い政府は、軍事や治安といった大きな枠組みこそ守らせたが、日々の商売については町人の知恵にかなり任せていた。日本橋のたもとで新しい商売が生まれ、大坂の市場で米の価格が次々と決まっていく様子は、市場原理が強く働いた好例である。政府が国民の活動を細かく抑圧するのではなく、平和という安全な箱庭を用意したことが、江戸の繁栄を生んだ大きな理由の一つだと言える。

国家が平和を守り、自由な経済が繁栄を生む――今の日本が学ぶべき構図

 中世ヨーロッパの封建制や、中国の伝統的な王朝経済は、領主や国家が商売を抑え込みすぎてしまい、経済が停滞することが多かった。しかし、江戸時代がそれらと決定的に違っていたのは、幕府や藩が商売を完全に抑えきれなかった、あるいは一部で奨励した点である。この「制限が緩かった自由」こそが、日本独自の経済発展を支えることになった。

 今の日本が目指すべき姿も、ここにある。政府は、他国からの侵略や国内の混乱を許さない強い盾として存在しなければならない。しかし、その盾の内側で暮らす国民一人ひとりの活動については、できる限り自由を尊重すべきだ。誰がどのような新しいサービスを作り、誰とどのような取引をするかという個人の選択に、政府が不必要に口を出すことは、国の成長を阻害する可能性がある。平和を守るための強さと、経済を過度に干渉しない姿勢。この二つのバランスこそが、日本を再び元気にさせる鍵となる。

 経済の歴史を深く見つめてきた寺西重郎氏は、著書『日本資本主義経済史 文化と制度』(2022年、勁草書房)の中で、江戸時代の成長の核心を次のように述べている。

「江戸時代の経済成長は、人々の経済行動にかかる情報の非対称性の改善、信頼の回復によるリスクの低下によるものであり、その結果生じた取引コストの低下に牽引された商業主導の成長であった」

 この言葉が示しているのは、政府が平和を維持し、人々がお互いを信頼できる仕組み(文化的な規範の進歩)を作ったことで、商売は自然と盛り上がっていったということだ。政府が無理に経済を動かそうとするのではなく、商売をしやすい環境を整えることに徹した結果、国民の知恵が爆発したのだ。

政府の力はどこまで必要で、どこからが行き過ぎなのか

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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