中学受験のプロが教える「天王山・夏」に教材を増やしてはいけないワケ

中学受験の天王山、夏がやってくる。学校がなく、まとまった時間が取れる夏休みは、苦手克服にも基礎固めにも絶好のチャンスーーそう期待する親も多いかもしれない。
しかし、個別指導塾Growy教務部長の濱野拓哉氏は警鐘を鳴らす。「あれもこれもと詰め込もうとする家庭ほど、どの学習も中途半端になって終わります」。
夏を制するために必要なのは「足し算」ではなく「引き算」だ。何を削り、何に集中するかーーその判断が、難関校合格への分岐点になる。夏期講習が始まる前の心構えとはー。全3回の最終回。
みんかぶプレミアム特集「中学受験 夏休みで伸びまくるコツ」第6回。
目次
参考書を買い足したくなる衝動の正体
夏が近づくと、本屋の参考書コーナーに足が向いてしまう親御さんは多いものです。「何か良い教材はないか」「あの子が使っていた問題集を試してみようか」ーーその気持ちは自然ですが、少し立ち止まって考えてみてください。
新しい教材を手に取ったとき、気持ちいいのは子どもではなく、親の方ではないでしょうか。新しいものを買った、対策を打った、という安心感。しかしその安心感は、得点力の向上とはまったく別の話です。
参考書には、一冊で単元全体を網羅しているという特性があります。だからこそ、潰し切ることに意味があります。途中で別の教材に手を出せば、どちらも中途半端になる。このタイミングから新しいものに手を出すのは、かなりリスキーです。
まず確認すべきは、今持っている教材をやり切れているかどうかです。塾のテキストが消化できていないなら、市販教材に手を出す前にそちらを先に仕上げましょう。
夏に必要なのは新しい武器ではなく、今ある武器を使いこなす力です。
「一冊を仕上げる」だけでいい
教材を増やしたくなる衝動の背景には、「今の勉強だけで本当に大丈夫なのか」という不安があります。しかし、難関校に合格する子たちが共通してやっていることは、むしろ逆です。教材を絞り、一冊を徹底的に仕上げる。それだけです。
なぜ一冊を仕上げることにこだわるのか。参考書や問題集は、一冊で単元全体を網羅するように設計されています。だからこそ、途中で別の教材に乗り換えると、どちらも中途半端になります。また、同じ問題を繰り返し解くことで初めて定着するという側面もあります。一度解いて答えを確認しただけでは、実力にはなりません。解けなかった問題に再挑戦し、なぜ解けなかったかを考え、もう一度解けるかどうか確かめる。このプロセスを繰り返すことで、初めて「使える知識」になっていきます。一冊を仕上げるとは、そのプロセスを一冊分やり切るということです。
基礎が万全にできていて、あとはただただ演習量を積みたいという目的であれば、市販教材を追加するのはありです。ただしその場合も、志望校でよく出る単元に絞って虫食い状態で使う、という使い方が現実的です。苦手だからといって一冊丸ごとやり切ろうとするのは、時間的にも難易度的にも、かなり無謀です。
教材を増やすより、今ある教材の中で「解けるべきなのに解けていない問題」を潰すことの方が、はるかに得点に直結します。新しい教材を買うたびに、やり切れなかった教材が一冊増えていくーーそんな積み残しを抱えたまま夏を終えないために、今持っている一冊を仕上げることに全力を注いでください。