「日本語ゼロ、信号無視は日常」欲望の街からアジア的カオスタウンへ進化した西川口が湾岸タワマンなんかより100倍幸せに暮らせる理由
「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い連載「住みたい街の真実」。
書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第22回は、混沌の街「埼玉県・西川口」を歩く。
目次
違法風俗街から多国籍カオスへ…「欲望の街」の現在地
駅を降りて西口へ。
いささかくたびれた感じのホームから橋上駅舎を抜けて外に出ると、かつての欲望に満ちたギラギラとピンクの街は、もうそこにない。

代わりに聞こえてくるのは中国語、そしてベトナム語。あと、ヒンディー語らしき言葉も混じる。日本語は、どこからも聞こえてくる気配がない。日本語の看板に交じって目立つのは、赤地に黄色い星……ベトナム国旗だ。一歩、街に足を踏み出せば、飛行機に乗ってもいないのにアジアの空気である。ワクワク感が止まらない。
今や東京都内は、住むことすら困難になりつつある。都心各駅まで30分足らずという立地を、これだけ安く買い叩ける街は、もう東京近郊にそう残っていない。西川口は、住みたいかどうかを悩んで選ぶ街ではない。妥協で選ぶ街でもない。好んで住むべき街である。

もっとも、20年ほど前の西川口は、今からは想像もつかない「ヤバい街」の代名詞だった。最盛期には200軒を超える違法風俗店がひしめき、1万円以下で本番行為まで提供する店が当たり前。アダルト系メディアは判で押したように「NK流」を連呼した。おまけにJR西川口駅を挟んで東に川口オートレース場、西に風俗街。ギャンブルと性風俗という、欲望の二択しか用意されていない街だった。地元民でもない限り、この駅で降りる理由はひとつしかなかったと言っていい。