9割は任せられる。残り1割があなたの仕事だ! 「社長」になった個人投資家が教えるAI活用術
生成AIの登場で、個人投資家もプロ並みの分析を手にできる時代になった。だが、使い方を誤れば、AIはあなたにとって都合のいい「イエスマン」にもなる。
「大事なのは、どこまで任せ、どこを自分で決めるかの線引きです」。そう語るのは、TBL Advisory代表のジョン・シュウギョウ氏だ。
証券会社に月数十万円を払わなければ届かなかった情報が、月数千円で手に入るいま、問われるのは道具の性能ではなく使い手の腕だという。
『生成AI投資の教科書』の著者に、初心者が今日から実践できるAI投資の作法を3回にわたって聞いた。連載全3回の第2回。

財務諸表もテクニカルも、いまは95%が「作業」になった
私はいま、投資に関する業務の9割以上をAIに任せています。
財務諸表を読み込ませ、何年分もの推移を分析させ、テクニカルで相場のどこに位置しているかを整理させる。かつては自分の手で一つずつこなしていた作業ですが、いまはほぼ丸ごと預けられます。人の目で見るしかないと思われていたチャートも、読む基準さえ書き込んでおけば読んでくれる。たとえば「大きく下げてRSIが30を割り、そこから戻したばかりのもの」と条件を渡せば、それに合う銘柄を拾って分析してきます。
具体的な組み方は著書で紹介していますが、おすすめはGoogleドライブ、NotebookLM、Geminiをつないで一つの分析体制にしておくことです。ツールをその都度バラバラに開くのではなく、三つを連携させて、一つの流れにしておく。そうすれば、一度ためた資料や分析を、次の判断でもそのまま使い回せます。
任せられる範囲が広がったぶん、こちらの聞き方が結果を大きく左右します。私が絶対にしないのは、「これは上がりますか、下がりますか」という聞き方です。そう尋ねた瞬間、返ってくるのは分析ではなく占いになります。
代わりに出す指示は、「ここまでの分析をふまえて、あり得るシナリオを三つ出して」というものです。三つ出させたうえで、どれをどれだけ重く見るかは、自分で決める。ここが、最後まで人間に残る仕事です。
これは、1回目でお話しした社長と部下の関係と同じです。部下に「儲かるのか」と一言で答えを迫らないように、AIにも「上がるか下がるか」ではなく、判断材料としてのシナリオを出させる。この役割分担を忘れないようにしましょう。
短期・スイング・長期で変わるAI活用法
投資憲法という土台を決めたら、その次に意識してほしいことがあります。自分の投資スタイルです。
同じAIでも、短期で回すのか、じっくり長期で持つのかによって、任せるべき仕事はまるで変わってきます。憲法がすべての投資家に共通する「基本ルール」だとすれば、スタイルは一人ひとりで異なる「使い方の設定」にあたります。ここをAIに教えておかないと、どれだけ土台がしっかりしていても、返ってくる分析が自分の戦い方と噛み合いません。
短期であれば、何より優先されるのはスピードです。チャートのパターンを瞬時に読ませたり、寄り付き前に市場全体のトレンドを数秒でつかませたりと、テクニカル面の判断を速める使い方が中心になります。
数日から数週間の波を狙うスイングなら、相場の方向性を分析させたうえで、先ほど述べた複数のシナリオを準備させることが軸になります。
そして長期こそ、AIがもっとも力を発揮する領域です。ここはほぼファンダメンタルズの分析になります。開示資料や決算説明会の資料を読み込ませ、経営陣の本音がどこにあるのか、口にしていない隠れたリスクは何かを洗い出させる。動画で公開されている説明会があれば、それも読ませます。一度決めれば一年は付き合う前提ですから、ここには十分に時間をかけるだけの価値があります。