「遺言書を書いて」は絶対に言うな。相続の”取り返しのつかない”を防ぐ、たった一つの習慣
前回までは、実際にあった相続トラブルの事例と、書類・手続きの具体的な中身を司法書士の植田麻友氏に聞いた。最終回となる今回は、親への切り出し方と、相談すべきタイミング、どうすれば親子で相続に関心を持てるのかについて聞く。全3回の第3回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
「遺言書を書いて」の一言が、すべてを台無しにする
親に相続の話を切り出す際、最も避けるべきなのが「遺言書を書いて」という直球の一言です。特に、普段ほとんど帰省しない子どもが突然そう言えば、「そんな言われ方をされるなら、渡したくない」と、逆効果になりかねません。
大切なのは、健康や死を意識していない、不安が少ないタイミングで話すことです。すでに体調を崩している時に切り出すよりも、まだ元気なうちの方が、お互い冷静に話せます。私自身、母の誕生日のタイミングで、財産のことやもしもの時のことを自然な会話の中で聞くようにしています。特別なイベントとして構えるのではなく、日常の延長線上で聞くのがコツです。
また、話のきっかけとして、親子で相続セミナーなどに参加してみるのもよいでしょう。セミナーを探す際は、司法書士・弁護士・税理士のいずれかが主催しているものを選ぶことをおすすめします。実際の相続手続きを行う現場を知る士業が話すからこそ、具体的な事例などの紹介をしてくれます。
子どもより、孫の方が話が通る。世代を飛ばした方がうまくいく事情
実際のところ、相続の話をするきっかけは、子ども側から切り出すよりも、親や祖父母の側から自然に発信されることの方が多いというのが実感です。面白いことに、子どもから言われると身構えてしまう親でも、孫から聞かれると素直に話してくれることがあります。財産という直接の利害関係が薄い分、身構えられにくいのかもしれません。
誰が切り出すのがいいかは家庭によって違いますが、まずは「財産がどれだけあるか」より先に、「借金はない?」というネガティブな心配事から聞いてみるのが、比較的話しやすい入り口です。
もう一つ意識しておきたいのが、兄弟のバランス関係です。親が生きている間はまとめ役として機能していたバランスが、親がいなくなった途端に崩れることがあるという点です。話し合いには兄弟本人だけでなく、それぞれの配偶者の意見も強く影響するようになり、それまで仲が良かった関係が変わってしまうケースも少なくありません。事前の対策は親自身が講じることができても、兄弟間の関係性まで完全にコントロールすることは難しい、というのが正直なところです。