iDeCoはデメリットしかない?本当にやめたほうがよい制度なのか徹底解説 みんかぶ編集室 2023.11.22 (2023.11.21公開) iDeCo(イデコ) iDeCoについて調べていると「デメリットしかない・やめたほうがよい・おすすめしない」などネガティブな意見が出てきて「やっぱりやめたほうが良いのかな?」と不安に思っている方も多いと思います。 この記事では、こうしたiDeCoに関する「悪い噂」は本当なのかを徹底考察・解説します。 正しくiDeCoのデメリットを理解し、理想的な形で老後資金作りを始められるようにしましょう。 目次iDeCoがデメリットしかないと言われる理由は?iDeCoのデメリットに関する3つの誤解iDeCoのメリットを再確認|節税効果と長期運用のしやすさが大きな魅力【結論】iDeCoはやめたほうがよい制度なのか?iDeCoのデメリットを最小限に抑えるためには「他制度の活用」がポイント iDeCoがデメリットしかないと言われる理由は? iDeCoがデメリットしかないと言われている理由は大きくわけて「5つ」あります。 原則60歳まで引き出しができない 毎月の掛金が少額だと「手数料負け」のリスクがある 受け取り方次第で「課税される」リスクがある 加入資格が定められており誰でも入れるわけではない 企業型DCの積立状況によってはiDeCoを利用しない方が良いケースがある もちろん、全てのデメリットが「おすすめしない・やめたほうがいい」と断言するに足るわけではありません。 しかし、iDeCoのデメリットが許容できない人も一定数います。ですから、これから紹介するデメリットは「自分が許容できるデメリットかどうか」を考えながら読み進めていただければ幸いです。また、記事の最後に「デメリットを最小限にする方法」も紹介しているため合わせて活用していただければと思います。 原則60歳まで引き出しができない iDeCoは、個人型確定拠出年金という「個人で運用する年金制度」です。そのため、原則として加入者が「60歳」になるまで、引き出しや途中解約ができなくなっています。 つまり、積み立てた資金は「60歳まで使えない」ということ。 この資金拘束性こそ、iDeCoはデメリットしかないと言われてしまう大きな要因の一つです。 iDeCo 引き出し 原則60歳まで不可(60歳から75歳までの間に受け取り開始) 途中解約 60歳まで原則不可 もし、20代、30代で「結婚資金や子育て資金、マイホームの購入」を目的に資産形成をしたいと考えている人にとって、iDeCoは少々「柔軟性に欠ける」制度と言わざるを得ません。ただし、直近に使う予定があるお金は別の方法で資産形成をして、余った資金でiDeCoを利用する分には、利用価値は十分にあります。 毎月の掛金が少額だと「手数料負け」のリスクがある ケースとしてはあまり多くありませんが、運用する投資商品の手数料が高く、毎月の掛金が5,000円(下限金額)の場合、手数料負けしてしまうリスクがあります。 前提として、iDeCoの運用には以下の手数料がかかります。 加入時にかかる手数料 毎月かかる手数料 還付手数料(年金受け取り時の手数料) 移管時手数料(金融機関を変更する場合) 国民年金基金連合会への加入時手数料:2,829円 国民年金基金連合会と信託銀行への手数料 :171円 口座管理料:無料〜500円 国民年金基金連合会:1,048円/1回 信託銀行:440円/1回 4,400円 また、上記の金額に「選んだ金融商品の運用手数料」がかかります。投資信託を選んだ場合には「信託報酬」が主な手数料になります。 毎月の手数料は多くて数百円程度ですが、信託報酬が高い(1~2%程度)のものを選んでしまうと「手数料負け」のリスクが高まってしまいます。少額の掛金の場合はなおのことです。 ですから、iDeCoで手数料負けしないためには「信託報酬が安く・長期の成長が見込める投資信託」を選ぶ必要があります。 金融機関でおすすめされた商品を鵜呑みにして買い付けることは避け「自分で」しっかりと選ぶことが重要です。 受け取り方次第で「課税される」リスクがある iDeCoは、運用益が非課税になる資産形成層にとって心強い味方です。しかし、運用益が非課税でも「受け取り方」によっては、受け取り時に課税されてしまうリスクがあることを忘れてはいけません。 まず、iDeCoの受け取り方について説明します。iDeCoで運用した資金の受け取り方は「3種類」あります。 一時金(退職金扱い)として受け取る 年金として受け取る 一時金と年金を掛け合わせて受け取る そして、肝心の受け取り時に課税されてしまうパターンは以下の通りです。 【一時金として受け取る場合】 iDeCoで運用した資産を「一時金」として受け取る場合、一時金は「退職所得」としてカウントされます。 そして、退職所得には「控除額(この金額までは課税されないよというライン)」が以下のように定められています。 勤続年数 退職所得控除額 20年以下 40万円 × 勤続年数 (勤続年数-iDeCoの加入期間※)(80万円未満なら80万円) 20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数※ – 20年) ※企業からの退職金がある場合、会社の勤続期間からiDeCoの加入期間を引いて計算する必要がありますもし、iDeCoの一時金と退職金の合計額が「退職所得控除額」を上回ってしまった場合、上回った金額に対して「所得税と住民税」が課税されてしまいます。 【具体例】 勤続年数が40年で、iDeCoの加入期間が20年、退職金が1000万円、iDeCoの金額が500万円の場合 退職所得控除額=800万円 退職所得合計=1500万円 課税所得=1500万円-800万円×1/2=350万円 ですから、iDeCoを一時金として受け取る場合には「退職所得控除額」を超えない金額で設定する必要があるので注意しましょう。 【年金として受け取る場合】 iDeCoの資金を「年金」として受け取る場合は「雑所得」として計算されます。 そのため、iDeCoの年金の受け取り額とその他収入(厚生年金・国民年金などの公的年金)の合計額が「控除額」を上回る場合、その金額分が課税されてしまいます。 【65歳未満の人の雑所得計算方法】 公的年金等の収入金額 公的年金等に係る雑所得の金額 60万円以下 0円 60万円超130万円未満 収入金額 – 60万円 130万円以上410万円未満 収入金額 × 0.75 – 27万5千円 410万円以上770万円未満 収入金額 × 0.85 – 68万5千円 770万円以上1,000万円未満 収入金額 × 0.95 – 145万5千円 1,000万円以上 収入金額 – 195万5千円 引用元:国税庁「高齢者と税(年金と税)」 【65歳以上の人の雑所得計算方法】 公的年金等の収入金額 公的年金等に係る雑所得の金額 110万円以下 0円 110万円超330万円未満 収入金額 – 110万円 330万円以上410万円未満 収入金額 × 0.75 – 27万5千円 410万円以上770万円未満 収入金額 × 0.85 – 68万5千円 770万円以上1,000万円未満 収入金額 × 0.95 – 145万5千円 1,000万円以上 収入金額 – 195万5千円 出典:国税庁「高齢者と税(年金と税)」 年金として受け取る場合には上記表をもとに「課税される雑所得がいくらになるのか」を必ず計算しておきましょう。このデメリットを払拭するためには「一時金型と年金型」の併用をして課税される金額を最小限に抑えることが必要です。 加入資格が定められており誰でも入れるわけではない&掛金上限が異なる iDeCoには加入資格があります。この加入資格を満たしていないとiDeCoに加入することはできません。 さらに、国民年金の被保険者区分によって掛金の上限金額(月額)が変わります。 条件によっては月額が1.2万円が上限になってしまうため、メリットが感じられないという方も一定数います。 加入資格がない人、掛金上限が少ない人からすれば「デメリットしかない」と感じてしまうのもうなづけます。 企業型DCの積立状況によってはiDeCoを利用しない方が良いケースがある ケースとして数は多くありませんが、企業型DCに加入していて、会社が「2万円超〜2万7,500円まで」の金額で拠出をしてくれているケースでは「マッチング拠出の方が掛金上限が大きく」なります。 つまり、運用商品の豊富さなどは加味せず、純粋な「拠出上限金額」という観点では、iDeCoを利用せず、マッチング拠出をした方がよいということになりますよね。 企業型DCに加入している場合は、自分の運用状況を確認してから、併用するかどうかを決めましょう。 関連記事:iDeCoと企業型DCの併用は可能?併用する場合のポイントや判断基準を解説 以上が、iDeCoがデメリットしかないと言われている理由です。ただ、iDeCoの制度に対する誤解が招いた否定的な意見もあります。 次の章では「iDeCoのデメリットに関する誤解と正しい解釈」を解説します。 iDeCoのデメリットに関する3つの誤解 iDeCoのデメリットとして、よく誤解されるのが以下の3点です。 iDeCoはデメリットしかない制度である iDeCoに加入すると厚生年金が減るというのは嘘 元本割れリスクがある=ギャンブルではない それぞれ、なぜ誤解なのか、正しい解釈はどんなものなのかを確認していきましょう。 iDeCoはデメリットしかない制度である まず、iDeCoはデメリットしかない制度ではありません。後述する「iDeCoのメリット」にもあるとおり、節税効果や長期運用のしやすさは資産形成において大きな恩恵になりえます。 そのため、iDeCoは資金が拘束されるからデメリット「しか」ないという表現は言い過ぎだといえますね。 iDeCoに加入すると厚生年金が減るというのは嘘 iDeCoに加入すると厚生年金が減る!という誤情報を目にすることがありますが、それは「嘘」です。 iDeCoは、給料の天引きではなく「個人の資産から拠出する仕組み」になっているため、給与から天引きされる厚生年金とは全く別物です。 ですから、iDeCoを始めると厚生年金が減ってしまうと誤解していた人はここで、認識を改めましょう。 元本割れリスクがある=ギャンブルではない iDeCoでは、定期預金以外の「投資信託」を運用する場合「元本割れリスク」を伴います。これは事実です。 しかし、元本割れリスク=ギャンブルではありません。バイナリーオプションやFXの短期トレードなど「リスクが非常に大きいもの」に関しては、ギャンブル(投機性)があります。 しかし、iDeCoで購入ができる投資信託は、長期運用であればリスクが収束していく商品が多く用意されています。つまり、ギャンブル性(投機性)は低いということです。 また、元本割れは「額面上のお金が減ること」を意味しますが、現預金でも、インフレや円安で「実質的価値」が下がることはありえます。 ですから「元本割れ」という言葉に対して、必要以上に過剰反応してしまうと「資産を増やす手段」を自ら減らしてしまうことにもなります。 iDeCo=元本割れリスクがある=ギャンブルは誤解だと覚えておきましょう。(どれだけのリスクを許容するかは人によります) iDeCoのメリットを再確認|節税効果と長期運用のしやすさが大きな魅力 ここまで、iDeCoのデメリットを中心に解説してきました。では、iDeCoにはこれらデメリットを払拭する「メリット」はあるのでしょうか。 この記事としての結論として、iDeCoはデメリットをカバーできるメリットがある(条件付き)と考えます。 その理由は、以下3つのメリットがあるからです。特に、直近に使う予定がない余裕資金がある方には「おすすめ」できる個人年金制度といえます。 掛金(拠出額)が全額所得控除の対象になる 60歳まで引き出せない分「長期積立投資」が実現しやすい リバランスも「非課税」で行えるので運用方針の変更がしやすい 掛金(拠出額)が全額所得控除の対象になる iDeCoには「掛け金の金額が課税所得から全額控除される」という特徴があります。 掛け金が全額控除になると「課税所得(税金が課せられる所得額)」の額が減り、結果として所得税と住民税が安くなるという仕組みです。 そして、この節税効果は「年収」や「職業」、「毎月の掛け金の金額」によって変わります。 【節税効果の例】 20代 会社勤務で企業型年金は未加入 毎月の掛け金は1万円 年収は300万円 = 節税効果:約18,000円 / 年 30代 会社勤務で企業型年金は未加入 毎月の掛け金は、上限金額の2万3000円 年収は400万円 =節税効果:約41,600円 / 年 40代 会社勤務で企業型確定拠出年金に加入済み 毎月の掛け金は、上限金額の2万円※ 年収は600万円 =節税効果:約48,000円 / 年 なお「自分がいくら節税できるのか」は、楽天証券が提供している「節税シミュレーション」で簡単に調べることができます。 まずは、こうした節税シミュレーションを使って、自分がiDeCoに加入したらどれくらいの節税効果があるのか確認してみましょう。 そして、シミュレーション結果を見て「節税効果が小さいからまだ始めない」のか、「節税効果が十分あるから始めてみる」のか判断してみるとよいと思います。 60歳まで引き出せない分「長期積立投資」が実現しやすい iDeCoでは、原則として60歳まで引き出すことができません。そのため、短期的な値動きに惑わされることなく、長期的に積み立て投資を行うことができます。 長期積立投資とは、毎月一定額を積み立てて、時間の分散効果によってリスクを低減し、資産を増やす投資手法です。 iDeCoでは、毎月一定額を積み立てることができるため、長期積立投資を実現しやすいと言えます。 iDeCoで長期積立投資を行うことで、以下のメリットを得ることができます。 【リスクの低減】 長期的に積み立てることで、短期的な値動きの影響を相殺し、リスクを低減することができます。 【資産の増加】 長期間にわたって積み立てることで、複利効果によって資産を増やすことができます。 【老後資金の準備】 iDeCoで積み立てた資産は、60歳以降に受け取ることができます。そのため、老後資金の準備にも役立ちます。 リバランスも「非課税」で行えるので運用方針の変更がしやすい iDeCoでは、資産配分を変更するリバランスを「非課税」で行えます。 リバランスとは、保有資産の一部を売却し、新たに買い付けを行うことで「資産の比率を一定に保つこと」を意味します。 つまり、iDeCoで運用している商品は「受け取り」は60歳までできないものの、口座内であれば、自由に非課税で売買をして「リバランス」を行えるということです。 特に、株式市場が低迷しているときに、株式重視から「債券重視」にしたいなどの対応がしやすくなります。長期運用をするうえで「リバランスのしやすさ」は大きなメリットといえますね。 【結論】iDeCoはやめたほうがよい制度なのか? 結論、iDeCoは毎月5,000円以上の余裕資金があるなら「やったほうがよい制度」といえます。 逆に、余裕資金がない、直近でライフイベントを控えており、そのための資産形成をしたい方はNISA制度のほうが合っている可能性が高いです。 わかりやすいように、iDeCoをおすすめできる人、他の資産形成がおすすめの人の特徴を一覧でまとめましたので、参考にしていただければ幸いです。 iDeCoをおすすめできる人の特徴 老後資金の準備をしたい人 節税効果に魅力を感じる人 毎月の余裕資金が5,000円以上ある人 貯金ではなく投資の必要性を感じている人 長期運用でコツコツ資産形成をしたい人 iDeCoではなく他の資産形成方法がおすすめの人 資産はすぐに使える状態にしておきたい人 老後資金ではなく直近のライフイベントに備えたい人 すでに老後資金のめどが立っており、リスクをとって大きく増やしたい人 短期で利益を狙いたい人 iDeCoのデメリットを最小限に抑えるためには「他制度の活用」がポイント 補足として、iDeCoのデメリットを最小限に抑える方法を紹介して終わりたいと思います。iDeCo最大のデメリットは「資金拘束があること(原則60歳まで引き出せない)」です。ですから、老後資金はiDeCo、その他のライフイベント資金は別制度で補う必要があります。そこでおすすめなのが、2024年から始まる「新NISA制度」です。 iDeCoと併用がおすすめなのが「新NISA」 新NISA制度とは「2024年1月」から始まる、新しい非課税投資枠制度のことです。金融庁発表の「新しいNISA制度の概要と改正の狙い」では、以下の目的で創設されたと記載されています。 現行の一般NISAは、家計の安定的な資産形成の支援に加え、成長資金の供給拡大を目的に設けられた。 新NISAについては、一般NISAが担っている成長資金の供給拡大を促しつつ、あわせて少額からの長期・積立・分散投資を行える制度に改組するものだ。 金融庁:新しいNISA制度の概要と改正の狙い つまり、一般NISAとつみたてNISAの良いところ取りをしたのが「新NISA制度」といえますね。 この新NISAは、投資先も資金の自由度も「iDeCo」より優れています。しかし、新NISAでは「所得控除」による節税効果はありません。 だからこそ、老後資金に特化した「iDeCo」と柔軟な資産形成ができる「新NISA」の併用がおすすめなのです。 関連記事:新NISA制度はいつから始まる?年間上限投資額や非課税期間など変更点をわかりやすく解説 – みんかぶ(マガジン) この記事はいかがでしたか?感想を一言!