NISA・つみたてNISA・iDeCoどれを選べば良い?それぞれの特徴と違いを徹底解説

NISAやつみたてNISA、iDeCoに代表される投資制度は非課税で資産運用ができることから、個人投資家から人気の制度です。
しかし、実際にどの制度を利用して資産運用を始めればよいのか分からないという方も多いと思います。
こうした悩みを解決するために、この記事では、それぞれの制度の特徴や違いについて徹底解説していきます。
非課税制度を使って資産運用をしたいと考えていた方は是非参考にしてみてください。
【この記事でわかること】
- NISA、つみたてNISA、iDeCo(イデコ)の特徴
- 各制度に向いている人はどんな人なのか
目次
NISA・つみたてNISA・iDeCoの基本をおさらい
まず最初に、NISA・つみたてNISA・iDeCoそれぞれの制度内容を確認しましょう。
以下の表は、それぞれの制度概要を比較したものになります。
NISA | つみたてNISA | iDeCo | |
---|---|---|---|
非課税運用期間 | 5年 | 20年 | 最大40年 |
投資上限額(年間) | 120万円 | 40万円 | 14万4000円~81万6000円 |
税制上のメリット | 運用で出た利益が非課税 |
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投資対象 | 上場株式・投資信託・ETFなど | 投資信託・ETF | 投資信託・定期預金・保険型商品 |
引き出し制限 | なし | 原則60歳まで引き出し不可 |
それぞれの制度の目的に応じて、運用期間や運用可能額などに違いがあることが分かると思います。
それでは、各制度の違いについて詳しく見ていきましょう。
中期的に資金を増やしたいなら「NISA」
NISAでは年間120万円を上限に最大5年間、運用で得られた値上がり益や配当金に税金がかかりません。
NISAの非課税期間である5年が経過し、NISA口座で資産を保有していた場合は、下記の3つの選択肢があります。

① 翌年の非課税投資枠に移す(ロールオーバー)
NISA口座開設可能期間である2028年(2024年からは新NISAとして制度変更)までであれば、全額を翌年の非課税投資枠へ移し、保有しつづけることができます。つまり、期間内であれば最大10年間非課税枠が使えるということです。
また、ロールオーバー時に、保有していた資産が値上がりして限度額である120万円を超えていても、保有資産の全てを非課税投資口座に移すことができます。
反対に、保有資産が限度額の120万円に満たない場合は、ロールオーバーした後、120万円の枠の中で使っていない金額分までを新規に投資することができます。
② 課税口座に移す
特定口座や一般口座などの課税口座に移すことで、NISA口座で保有していた資産を保有しつづけることができます。
ただし、その後に生じた配当金や値上がり益などは課税されるようになります。
また、資産を移す際は課税口座に移す時の価格で買い付けたとみなされます。
つまり、課税口座に移した後に資産を売却すると、税金がかかる対象となるのは売却価格から課税口座に移した時の価格を差し引いた利益分になります。

例えば、NISA口座で100万円で買い付けた資産が150万円に値上がりし、課税口座に移したとします。その後、さらに200万円まで値上がりし売却した時、課税対象となるのは50万円(200万円-150万円)となるということです。
こうすることで非課税期間が終わってから生じた利益にしか税金がかからなくなります。
反対に、課税口座に移した時の価格が買付価格よりも下がっていると、本来の利益よりも課税対象額が高くなってしまう場合もあるので注意が必要です。
③ 売却する
運用を継続せずに、売却することもできます。NISA口座で売却すれば、値上がり益に税金はかかりません。
2024年から新NISAに!
さらに、NISAは2024年から制度が一部変更され、新NISAとして生まれ変わります。
新NISAでは年間の非課税枠が20万円と102万円の二つの枠に分割され、20万円の枠で国が定めた条件を満たした投資信託に投資した後、株や投資信託などに投資できる102万円の枠が解放される仕組みになります。
この仕組みは建物に例えられ、「二階建て」と呼ばれています。つまり20万円分の「一階」を先に建てなければ、102万円分の「二階」は建てられないということです。
旧NISA | 新NISA | |
---|---|---|
運用期間 | 5年 | 5年 |
投資上限額(年間) | 120万円 |
二階 :102万円 一階 :20万円 |
投資対象 |
上場株式・投資信託・ET Fなど |
二階 :上場株式/投資信託 一階 :投資信託 |
NISAのメリット
次にNISAのメリットを紹介していきます。
メリット1:年間120万円までの投資が非課税
NISAは年間の投資可能額が120万円までと、ある程度まとまった資金を投資することができます。つみたてNISAやiDeCoと比較すると短期的にまとまった資金を運用することができます。
メリット2:投資対象が幅広い
NISAは投資信託のみならず上場株式やETFなどにも投資することができます。ある程度の投資経験があり、特定の銘柄やETFに投資をしたいという方には大きなメリットですね。
NISAのデメリット
デメリット:運用期間が短い
NISAの運用期間は5年間となっており、長期的な運用はできません。そのため、10年、20年先のライフイベントのために資産形成をしたいという方や老後資金を蓄えたいという方には向いていないといえます。
NISAはこんな方におすすめ
- 幅広い商品から投資先を自分で選んで投資したい方
- 中期的な運用で積極的に利益を狙いたい方
ライフプランに応じた長期的な運用なら「つみたてNISA」
つみたてNISAの特徴
つみたてNISAでは年間40万円を上限に最大20年間、運用で得られた値上がり益や分配金に税金がかかりません。
つみたてNISA非課税期間である20年が経過したら、NISAと同様に資産を売却するか、課税口座に移すかを選択できます。
ただし、つみたてNISAでは翌年の非課税投資枠に移すこと(ロールオーバー)はできません。

つみたてNISAの制度についてより詳しくは「つみたてNISAとは」をご覧ください。
つみたてNISAのメリット
メリット1:長期的にコツコツと安定した運用ができる
つみたてNISAの運用期間は20年となっているため、資産を長期的にコツコツと積み立てていくことができます。
メリット2:対象商品は厳選された長期積立に適した商品
初心者の方にとって、数多くの商品から実際に投資する商品を選ぶことは非常に難しいことだと思います。
そのようなことを考慮して、つみたてNISAの対象商品は金融庁が選定した長期積立に適した商品のみとなっています。
メリット3:売却するタイミングが自由
つみたてNISAは運用期間が20年と長いですが、その間資産を自由に売却することができます。自分のタイミングで資産を売却できるので、何か資金が必要になった際にも柔軟に対応できるという点もメリットの1つですね。
つみたてNISAのデメリット
デメリット1:年間の非課税枠が少ない
つみたてNISAの1年間の非課税枠は40万円となっており、NISAと比較して少なくなっています。まとまった資金や収入がある方には少し物足りないと感じるかもしれませんが、その分運用期間が長いため、非課税総額ではNISAよりも多くなります。
デメリット2:対象商品が限られている
前述のように、つみたてNISAの対象商品は金融庁によって選定された限られた商品となっています。そのため、多様な選択肢から商品を選びたい方や投資信託以外にも投資をしたいという方にはデメリットになります。
つみたてNISAはこんな方におすすめ
- ライフイベントに備えた長期的な運用をしたい方
- 毎月少額から投資を始めたい方
- 長期運用に適した銘柄選びを簡単にしたい方
老後資金を作りたいなら「iDeCo(イデコ)」
iDeCoの特徴
iDeCoは個人型確定拠出年金のことを指します。
サラリーマンや専業主婦(夫)など、20歳から60歳(2022年からは20~65歳)までのほとんどの方が加入できます。
年間の投資可能額は国民年金保険の加入状況により異なりますが、年間14万4000円~81万6000円まで運用することができます。
年間投資可能額の違いをまとめると以下のようになります。

また、iDeCoでは運用益が非課税になるだけでなく拠出額が所得控除になります。
つまり、iDeCoで投資した掛金はその年の所得から控除され、支払う所得税や住民税が下がるということです。
具体的な例をあげると、所得額500万円で年間10万円積み立てをした場合、節税額は
10万円×(所得税20%*+住民税10%)=3万円(*所得税は年収によって異なります)
となり、1年間で3万円節税することができます。
さらに、60歳以降に積み立ててきた資産を受け取る際には、公的年金控除または退職所得控除が受けられます。
iDeCoで積み立ててきた資産を受け取る方法は以下の3種類があります。
- 年金として小分けに受け取る
- 一時金として一括で受け取る
- 年金と一時金を組み合わせて受け取る
年金として受け取る時は公的年金控除、一時金として受け取る時は退職所得控除を受けることができます。
公的年金控除は65歳未満であれば60万円、65歳以上であれば110万円の控除が適用されます。
そして、退職所得控除は勤続年数によって異なり、以下の計算で求めることができます。
- 勤続年数20年未満:80万円×勤続年数
- 勤続年数20年以上:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
iDeCoの制度について詳しくはこちらをご覧ください。
iDeCoのメリット
メリット1:節税効果が高い
iDeCoは運用益が非課税になるだけでなく、所得控除や公的年金控除または退職所得控除を受けることができるため、NISAやつみたてNISAと比較して節税効果が高いという大きなメリットがあります。
メリット2:対象商品は長期運用に適した商品
iDeCoの対象商品は長期運用に適した商品が用意されています。また、つみたてNISAでは対象商品に含まれていない預金や保険などの元本保証型の商品にも投資をすることができます。
メリット3:商品の売買で非課税枠が減ることがない
NISAやつみたてNISAでは年間の非課税枠が決まっていて、非課税枠を使って購入した商品を売却すると、その分の非課税枠は消化されてしまいます。
一方で、iDeCoでは今まで購入した資産を売却して、新しく資産を購入するときに非課税枠を消化することはありません。
これはスイッチングと呼ばれ、資産のバランスを整えたいときや資産全体のリスクを調整したいときなどに使われます。
iDeCoのデメリット
デメリット1:原則60歳まで引き出すことができない
iDeCoは老後の資産形成を目的としているため、原則60歳までは引き出すことができません。そのため、iDeCoの運用は余剰資金で行うことが重要になります。
デメリット2:手数料がかかる
iDeCoでは掛金納付の都度発生する加入者手数料などの手数料がかかります。手数料は少額でも回数が重なれば、いづれは大きな額となってしまいます。税金は抑えられても手数料がかかってしまうというのはデメリットの1つだといえます。
iDeCoはこんな方におすすめ
- 老後に備えた資産運用をしたい方
- 拠出額を所得控除にし、節税効果を高めたい方
NISAとiDeCoは併用できる
「NISAとiDeCo」もしくは「つみたてNISAとiDeCo」は併用することができます。
ただし、NISAとつみたてNISAの併用はできませんので、NISAとつみたてNISAのどちらを利用するかは選択する必要があります。
「NISAとiDeCo」もしくは「つみたてNISAとiDeCo」を併用することでそれぞれの節税効果を活用した資産運用が期待できます。
まとめ
今回はNISA・つみたてNISA・iDeCoについて解説してきました。
それぞれの制度の違いをご理解いただけたかと思います。
実際に利用する制度を選ぶ際は、自身の運用の目的をよく考え、目的にあった制度を利用しましょう。
このような非課税制度を使って投資を始める際はこちらも参考にしてみてください。