「ほら、あれがフィギュアスケートだよ」…俺、泣いてる 俺、同じ時代でよかった『Echoes of Life』埼玉公演

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そうか、あれがフィギュアスケートなんだ
あの日。
気がつくと、私は泣いていました。
いくつもの声が、響く。
「ほら、あれがコンパルソリーだよ」
いまよりずっとシンプルな衣装をまとったフィギュアスケーターのみなさんがいました。彼らの声はさらに響きます。
「基礎って美しいんだよ」
ああ、私の中でそれはオンドレイ・ネペラだったり、キラ・イワノワだったり、あるいは映像や写真でしか見たことのないソニア・ヘニーだったりしました。結果はそれぞれですが、後世に知られるスケーターです。みなコンパルソリーの名手でした。
そして、すでに亡き人々でした。彼らは言います。
氷上の羽生結弦を、ゆっくり指して。
「あれがフィギュアスケートだよ」
そうか、あれがフィギュアスケートなんだ。
「ほら、あれがコンパルソリーだよ」
「基礎って美しいんだよ」
そんな声が響鳴して私を包む――私は泣いていました。
羽生結弦が生まれてよかった
すると誰だろう、映像でも写真でも知らないフィギュアスケーター、それも大勢のフィギュアスケーターも揃って、口々にこう言うんです。
「羽生結弦が生まれてよかった」
ああ、彼らは名もなき大勢の、ずっとずっと昔のフィギュアスケーターたち。五輪に出られなかったり、主要大会で表彰台にも上がらなかったりした人たち。