三浦瑠麗「原発は放棄&太陽光を飛躍的に伸ばせ…」今、私たちの電気代が高いのは誰のせいか

 歯に衣着せぬ発言で、良くも悪くも話題を呼ぶ政治学者・三浦瑠麗氏。そんな彼女に思わぬトラブルが持ち上がった。夫の経営する会社が太陽光ビジネスの不正疑惑で東京地検特捜部の家宅捜索を受け、ネット上では自身の関与も疑われているのだ。ことの真偽はともかく、この機会に彼女がこれまで唱えてきたエネルギー政策の是非について、改めて点検してみたい。

「再生エネルギー推進」三浦瑠偉・夫経営の会社が太陽光ビジネスで10億円不正疑惑

 衝撃的なニュースが舞い込んできた。太陽光発電を巡り複数の会社と金銭トラブルとなっていた東京都千代田区のコンサルタント会社で、投資会社でもある「トライベイキャピタル」を、東京地検特捜部が1月19日に家宅捜索したのだ。この会社は国際政治学者の三浦瑠麗氏の夫・三浦清志氏が代表を務めている。

 朝日新聞(1月21日)によれば、『関係者によると、同社は太陽光発電事業に関連して企業から集めた出資金などでトラブルになり、出資者らから億単位の詐欺容疑で告訴されている』のだという。

 三浦瑠麗氏は自身が代表を務めるシンクタンク「山猫総合研究所」のホームページにコメントを発表。「私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ない」とした上で「捜査に全面的に協力する所存です。夫を支えながら推移を見守りたい」としていて、レギュラー出演をしていたテレビ番組などへの出演を局側の「総合的判断」によって見合わせることになったようだ。

 ネット上では、三浦瑠麗氏のテレビ番組上での過去の発言から、夫と一体となって会社経営をしていたのではないのかという疑惑が取り沙汰されているが、私はその点については、正直、興味がない。

 個人的な興味でいえば、次のようなことは少し気に掛かっている。野田聖子衆議院議員の夫が元暴力団だったことが最高裁で認定されてしまい、野田議員がなりたかった総理大臣への道が事実上閉ざされてしまったこと。そして、三浦瑠麗氏もパートナーの素行不良により、社会的制裁を食らっているところだろう。たまたま好きになった人間が、犯罪者だった場合、どうすることもできないことは想像でき、「夫ガチャ」ともいうべき事態に声を失う。結婚制度は、プライベートなことのようで、非常に公の性質を持っているということだ。

「電力会社の巨額損失を恐れて日本は原発を放棄できない」という奇説を展開

 話がそれた。本題に戻そう。今、保守系の論客と(少なくともリベラルな立場の人たちを中心に)思われている三浦瑠麗氏だが、彼女はどのようなエネルギー政策を考えていたのであろうか。

 三浦瑠麗氏のブログ(2019年9月25日)には、日本でのエネルギー政策にまつわる議論について、「私がやれやれと感じるのは、日本における議論のレベルの低さです」と挑発的な表現を使って批判をしている。

 三浦瑠麗氏は、「環境問題には、おのずと問題解決の範囲というべきものがあります。日本国内の議論だけを見ていると、この範囲をしばしば見失ってしまいがちです。本当は、2030年以降のエネルギー基本計画を更新するための答えは、ほぼほぼ見えています」と断言する。続けて、「まず、再生可能エネルギーを飛躍的に伸ばすこと。原発は、先週議論したように日本発の経済危機のトリガーを引かないために名目として掲げておくものの、実質的に撤廃させる方向に移行すること」なのだという。

 ここで三浦瑠麗氏がいう「先週、議論したように日本発の経済危機のトリガーを引かないために名目として掲げておくもの」とは、何を指しているのかを探すと、同ブログの2019年9月23日に、該当箇所と思しきものがあった。

 先週の議論というわりに2日前の更新なのだが、ブログの最後に、「※本記事は9月18日付の三浦瑠麗の公式メールマガジン『自分で考えるための政治の話』から抜粋・編集したものです」とあるから、当時発行していた週刊のメールマガジンでの日付ということであろう。

 そこで、三浦瑠麗氏は、原発は放棄するしかないのに、放棄できない理由について、下記のような「摩訶不思議な解説」を加えている。

「原発で日本の電源の20%をまかなうという目標が維持されるのは、方便に近いのだろうと思います。仮に政府が正式に原発政策を放棄したとすれば、各電力会社において原発に関連されて行われた投資は、すべて損失として計上せざるを得なくなります。天文学的なレベルの特別損失が一気に計上されれば、多くの電力会社は事実上の債務超過に陥るでしょう。そこに大量の資金を供給している銀行の債権も、不良債権と見なさざるを得なくなるかもしれません。原発政策を引き金として日本経済全体が大混乱に陥るシナリオです」

 つまり原発放棄できないのは、電力会社の特別損失を気にしてのことらしい。あまり聞いたことのない説だが、実態として、今、再稼働に向けて日本の各電力会社は必死で取り組んでいる。政府もそれを後押ししている状態だ。三浦瑠麗氏の説が正しいとするならそんなことはしないだろう。

再エネ比率5割を夢想する三浦瑠麗氏、反対押し切り原発再稼働を実現した細野豪志氏‥どちらのエネルギー政策が国民のためになるのか

 今、電気代の高騰がかろうじて抑えられている地域は、原発が稼働する電力会社の管轄ばかりであることは火を見るより明らかだ。脱原発を唱えるリベラル政党「緑の党」が長期間政権入りするドイツでも、脱原発が進み、去年にも原発のすべてが稼働を停止する予定だったが、エネルギー高騰によってドイツ世論の80%が原発稼働の延長を望んだことから、いまだに稼働は停止していない。過激な発言で知られる環境運動家のグレタ・トゥーンベリさんも「すでに(原発が)稼働しているのであれば、それを停止して石炭に変えるのは間違いだと思う」として、原発稼働を擁護する発言をしている。

 さらに、三浦瑠麗氏はダメ押しの発言をしている。「結論めいたことを言うと、先進各国と平仄(ひょうそく)をあわせるには2040年~50年にかけて電源構成にしめる再エネの比率を5割前後まで引き上げるのが解なのです。そろそろ、日本における議論も神学論争のステージを卒業して、そのためにどんな手を打つべきかというステージに移行すべきなのです」という。

 原発再稼働が神学論争なのか。私の目には、太陽光発電を中心とする再エネ比率が50%を達成できる、しなくてはいけないということのほうが神学的に見える。

 これらの点は、事件が落ち着けば、再起すると思われる三浦瑠麗氏自らが、きちんと弁明をしてほしいものだ。引用が、2019年当時ということで、三浦瑠麗氏は、ウクライナ戦争前の状況で語ったものだから、アンフェアだという人もいるかもしれない。しかし、2022年9月16日に開催された「Gas Oneサミット2022」というフォーラムにおいて、三浦瑠麗氏は、「(日本は)危機感が足りない。各国はグリーン投資を進めたのに、日本はそこまでいっていない」「できるところは全部やるというのが国を挙げてのカーボン・ニュートラル(温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること)の正しい道だと思う」(2022年10月10日・『プロパン・ブタンニュース』より引用)としていて、残念ながら立場は変えていないようだ。

 三浦瑠麗氏は他にも自身が行った独自の世論調査で「原子力に関して、自民党を支持する人は消極的容認、反対する人は積極的な強い否定感情」という結果が出たことを根拠に、原発政策が放棄するほうに向かうとしている(例えば、2021年3月1日『エネルギーフォーラム』での発言)。

 他方、細野豪志元環境大臣のように、震災直後から世論の大反発を受けながらも原発再稼働に奔走し、当初否定的だった橋下徹大阪市長(当時)を説き伏せ、実際に再稼働の実現を果たした人物もいる。細野氏は今、メガソーラー建設阻止に向けて奔走している。

 日本は民主主義国家であり、世論調査が大事なこともわかるが、私は、細野氏のような、世論を気にしつつも一定の距離を保つ姿勢こそが求められていると考える。

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