インフレ下でどう資産を守るか…投資歴30年のベテラン投資家が教える「慣れた先に何をすべきか」
インフレの常態化、生成AI銘柄の厳格な選別、そして高市政権の積極財政がもたらす円安リスク…。
デフレ脳からのアップデートを迫られる中、投資歴30年のベテラン投資家・名古屋の長期投資家ことなごちょうさんは、いかにして自分の資産を守り、育てているのでしょうか。
インフレという不可逆なトレンドを生き抜くための次なる一手を伺いました。インタビュー連載全3回の第1回。
目次
住友金属鉱山、いつまで握り続ける?
ーー前回取材をさせてもらってから1カ月ほど経ちました。最近はなにか変化を感じていますか?
最も明確に変わったのは金銀プラチナです。金の場合、日本円で1グラム1万円を超えてから2万円を超えるまでがあっという間でしたよね。さすがにあのペースは異常で、上がりすぎた分の調整として、5月から6月上旬は下げに転じました。ただ、インフレが構造的に続く以上、いったん落ちてもやがてまた買われる局面は来ると見ています。
自分自身は貴金属のポジションは持たずに、代わりに住友金属鉱山を保有していて、先日半分を利確し、今は200株です。銅がピークをつけるまでは手放さないつもりでいます。
その銅ですが、金銀プラチナが下がっているなかで銅だけが上がっていて、しかも長期で見ると過去最高値圏まで来ています。「こんなに上がるとは」という人もいるでしょうが、構造的に考えると必然とも言えます。供給側では新規の銅鉱山の開発が追いついていない一方で、電気自動車やデータセンター、送電インフラの整備など、銅を大量に消費する産業が世界規模で急拡大しています。需給の方程式が根本的に変わってしまっていて、単なる投機ではなく実需に裏打ちされた上昇なんです。
ーー物価高が止まらない中、ウォルマートなどの実体経済を映す企業の決算をどうご覧になっていますか?
直近のウォルマートの決算自体は悪くありませんでしたが、その後に示したガイダンスが弱かったと感じています。同社自身が今後のインフレを懸念しているというメッセージを出していて、インフレが激しいというよりも「止まらない」というのが正確な表現で、それが業績見通しの慎重姿勢に直結しています。
加えて今、米国では利下げどころか利上げ観測が強まっています。日本もすでに利上げ方向で動いています。各国がもはや利下げできる状況ではなくなってきたため、歴史的に見ても利上げは景気の冷却につながります。景気が悪化するとEPS(一株当たり利益)が下がり、PERも収縮して株価が下がる教科書通りの連鎖が起きることが懸念されますが、それが現実味を帯びて近づいているという感覚があります。
株価の二極化、いまは健全?
ーー生成AI関連銘柄を中心に、株価の二極化についてはどう見ていますか?
以前は、生成AI関連というだけで周辺銘柄まで一斉に上がるような、わかりやすい相場でした。ところが今は、同じ日にフジクラが6%以上下げる一方で、東京エレクトロンが5%上がるというように、動きがまちまちになることもあります。
前夜にSOX(フィラデルフィア半導体株指数)が大きく下げたことで「今日の日本株は暴落する」と言っていた人たちもいましたが、実際は引け間際に切り返して、それほど影響を受けないこともあります。私は、市場のメカニズムが変わってきていると分析しています。
この流れを見た上で出した私の見解は「生成AI関連だから何でも上がる相場は終わった」ということです。これはネガティブな話ではなく、むしろ健全化です。業績の裏付けがある銘柄は評価され、そうでない銘柄は捨てられる、本来あるべき選別が始まったのではないでしょうか。
直近の決算が強ければ強く、弱ければ弱くなっていくのは相場の常です。ある種の転換期に入ったと思っています。
インフレ化でどう資産を守る?
ーー前回「デフレ脳からの脱却が重要」とおっしゃっていましたが、個人投資家の意識はどう変わってきていますか?
商品自体の価格が上がることへの抵抗感は、以前と比べると明らかに薄れていて「嫌だけれど上がっていくものだ」という感覚が日常になってきたと思います。ただ値上げへの抵抗感は薄れても賃金の上昇が物価の上昇に追いつかない人が多く、その不満が政治的な不満と結びついて、世界各国で既存与党が選挙で敗れる流れが続いていますよね。これはインフレが民主主義の風景まで変えているということでもあります。
最近では、いわゆる「ステルス値上げ」という言葉を見たり聞いたりする人も多いでしょう。消費者はこうした変化に1年もすれば慣れてしまうものですが、問題は「慣れた先に何をすべきか」がまだわかっていない人が多いことです。
インフレには慣れたけれど、インフレ下でどう資産を守るか、何に投資すれば正解なのかが手探りになっています。日本人はバブル崩壊以降30年以上デフレを経験してきたから、これは仕方のないことではあります。自分自身もそうですけどね。