「部下」の育て方を知らない上司はAIも使えない・・・「社長」になった個人投資家が「最後は自分」と断言するワケ
生成AIの登場で、個人投資家もプロ並みの分析を手にできる時代になった。だが、使い方を誤れば、AIはあなたにとって都合のいい「イエスマン」にもなる。
「大事なのは、どこまで任せ、どこを自分で決めるかの線引きです」。そう語るのは、TBL Advisory代表のジョン・シュウギョウ氏だ。
証券会社に月数十万円を払わなければ届かなかった情報が、月数千円で手に入るいま、問われるのは道具の性能ではなく使い手の腕だという。
『生成AI投資の教科書』の著者に、初心者が今日から実践できるAI投資の作法を3回にわたって聞いた。連載全3回の最終回。

なぜ、AIは「保有株」に甘いのか
投資でAIを使うとき、最初に警戒すべきは、AIがイエスマンになることです。とりわけ、自分が持っている銘柄や、これから買おうとしている銘柄について聞くと、AIは驚くほど強気の答えを返してきます。
理由は単純です。「この銘柄は有望ですよね」という含みを持って尋ねれば、AIはその期待を汲み取り、有望である材料を集めて話を組み立てます。人間が無意識にやっている「見たい情報だけを集める」動きを、AIは大量に、しかも高速でやってのけます。
冷静さを失ってしまえば、自分にとって都合の良い思い込みが加速度的にふくらみます。ここで返ってきた強気の分析を真に受けると、高値づかみをしたり、下げても「まだ大丈夫」と根拠のない塩漬けを続けたりすることになります。
これは、少し試すとすぐ体感できます。同じ銘柄について、「この株の強みを教えて」と聞いたときと、「この株を空売りするなら、どこを突くか」と聞いたときとでは、返ってくる中身がまるで変わります。前者では好材料が並び、後者では弱点が並ぶ。AIは、問いの向きに沿って材料を集めるからです。つまり、こちらが買いたい気持ちで聞けば、AIは買いたい理由を上手に揃えてくれる。自分の期待が、そのまま分析の結論に化けて返ってくるわけです。これほど心強い相棒はいませんが、投資においては、これほど危ういこともありません。
そこで私は、AIにわざと自分を否定させます。強気の結論が出たら、そこで止めずに、「この見立てが崩れるケースを3つ挙げてほしい」と指示する。上昇シナリオではなく、下落やシナリオ崩壊の芽を、具体的に3つ出させるわけです。そのうえで、「その3つがあっても、なお買う理由は何か」と重ねて問う。自分の出した結論を、自分で崩しにいかせる。これは人間でも難しい作業で、AIも本気で考え込み、最初の強気がそのまま維持されることは、むしろ稀です。
コツは、崩れる理由を数えさせるだけでなく、その一つひとつがどれくらいの確率で起きそうか、起きたら株価はどこまで下げるかまで具体的に語らせることです。そこまで詰めて初めて、「なんとなく上がりそう」だった話が、どこまで下がりうるかまで見えた判断に変わります。
もう一手が、AI同士を戦わせる方法です。たとえばGeminiに出させた買いの判断を、そっくりそのままClaudeに渡し、「この分析で、論拠が弱いところ、見落としているリスクを突いてほしい」と頼みます。返ってきた反論を今度はGeminiに戻し、「こう指摘されたが、反論できるか」と問う。この往復を2、3度させると、片方だけでは気づけなかった穴が埋まり、強気一辺倒だった見立てから、脆い部分が削られていきます。手間はかかるので、全銘柄でやる必要はありません。本気で仕込みたいもの、判断を外したときの痛手が大きいものに絞れば十分です。
いずれも、AIに答えを出させて終わりにせず、その答えをもう一度AI自身に見直させる、という一手間です。この一手間をはさむだけで、高値づかみや、思い込みでの塩漬けは、かなり減らせます。