テスラ「サイバーキャブ」公開が告げる“マイカー消滅”の未来 「今まで通りの稼ぎ方」に固執する企業から消えていく現実
2026年9月、テスラの完全自動運転車「サイバーキャブ」が東京・青山で公開された。ハンドルもペダルもない2人乗り無人タクシーの登場は、単に移動の利便性を高めるだけでなく、マイカーの所有コストや駐車場の必要性、さらにはカーシェア大手・パーク24などの収益基盤を根本から揺さぶる可能性を秘めている。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、無人タクシーの拡大がもたらす都市生活の変化と、既存産業へ波及する構造変化を分析する。
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日本上陸を果たした「2人乗り無人車」のリアル 実車展示で見えた移動コストの崩壊
9月11日、テスラのサイバーキャブが東京・青山で公開された。ハンドルもペダルもない2人乗りの車だ。日本で客を乗せて営業を始める日は、まだ発表されていない。今回の上陸は実車の展示である。それでも、この車が日常の道具になった街を思い浮かべると、影響を受けるビジネスの多さに気づく。
例えば、今のタクシーより安い運賃で無人車を呼べるようになり、都市部で十分な台数が走る場面を考えてみたい。サイバーキャブに限らず、各社の無人タクシーが使われる街である。
朝、自宅を出る前にスマートフォンで車を呼ぶ。駅まで乗り、そこから電車に乗り換える。家族に送ってもらう必要はなく、駅前に自分の車を置く必要もない。会社まで車で行く人も、到着したら降りるだけだ。運転していた時間を、メールを読んだり、休んだりする時間に使える。
休日の買い物も変わる。行きは歩き、重い袋を抱えた帰りだけ車を呼ぶ。駐車料金を無料にするために買い物を足す必要はない。夜は自宅から少し遠い飲食店へ出かけ、食事が終わったらまた車を呼ぶ。駐車場のない店でも、近くに安全に乗り降りできる場所があれば通える。
病院通いで家族の都合を聞かずに済むメリット 移動の自由と「付き添い」という残された課題
運転をやめた人なら、病院へ通うたびに家族の都合を聞かずに済む。自分で乗り降りできる人には、外出を決める自由が増える。介助が必要な人には、車が来るだけでは足りない。玄関から車まで付き添い、荷物を持つ人の仕事は、別に用意することになる。
こうした移動で用が足りる家庭は、車を買い替える際に計算し直すことになる。車両代に保険料、税金、車検代、毎月の駐車料金。それらを払う代わりに、必要なときだけ運賃を払った方が安いなら、車を手放す。家族で2台持っていた車を1台に減らすだけでも、家計の支出は変わる。旅行先でも、市内を回るだけならレンタカーを借りずに済む。宿に着いてから借りる店へ行き、返す時間に合わせて旅程を切り上げる手間もなくなる。駅から歩けるか、駐車場があるかを基準に選んでいた宿や店にも、客を呼ぶ方法が増える。
客を降ろした無人車は、買い物が終わるまで駐車場で待たず、次の客を迎えに行く。電池が減れば充電し、車内が汚れれば清掃する場所へ戻る。街には、買い物客が車を置く駐車場のほかに、無人車をまとめて充電し、点検する車庫が必要になる。
「車が減っても道路は空かない」回送走行の罠 駅前に集中する無人車と乗降スペースの争奪戦
車を持つ人が減っても、道路まで空くとは限らない。電車や徒歩から車へ移る人が増え、客を乗せずに迎えに行く車も走るからだ。朝の駅前には乗り降りする車が集中する。料金の安さと同じくらい、どこで客を乗せ、どこで次の注文を待たせるかが、街の使いやすさを左右する。
この暮らしが広がる地域では、短い距離を運ぶだけの有人タクシーは厳しい。客は料金と到着までの時間を比べる。運転手が付くことに料金を払ってもらうには、別の理由が要る。予約客の予定に合わせたハイヤーの接客や観光案内、乗り降りの手助けまで含めた送迎などだ。運転技術だけを売っていた会社には、商売の組み直しが迫られる。