旧NHK党内紛 大津氏LINE暴露も『まさかの勝利確定』が見えてきた立花氏…「斉藤新代表の主体性ゼロ」に日本が溶ける
対立する双方で全く意見が噛み合わない記者会見を開くなど、罵倒合戦が収まらない旧NHK党(政治家女子48党)。一方的に大津綾香党首を除名し、齊藤健一郎氏の党首就任を発表した立花孝志氏だが、今後、この政党をどう運営していこうというのか。経済ジャーナリストの小倉健一氏が喝破する
立花vs大津の暴露合戦は続くが、軍配は立花氏か
内紛と混乱の極致に達している旧NHK党(政治家女子48党)は、立花孝志氏と大津綾香氏による人事をめぐる対立と罵り合いが続いている。大津氏は立花氏とのLINEのメッセージ履歴の公開などを仕掛けたが、前身のNHK党で党首だった立花氏は記者会見し、大津党首を除名処分にしたと発表。齊藤健一郎参院議員が代表に、自身が党首にそれぞれ就いたと主張した。
他方、大津氏は別に会見して、人事に同意しておらず、自身が党首の立場にあると強調した。さらに大津氏は4月7日夜、ツイッターに「不正な会計の証拠保全のため口座の名義を旧代表立花孝志から政治家女子現代表者大津綾香に変更いたしました」と投稿。同党の銀行口座とする画像もツイッターにアップしている。党会見で代表権を持たずに党首復帰すると発表した立花氏は、党首だった大津氏が、4月4日に党の銀行口座を大津綾香名義に変更していたと指摘している。立花氏は、大津氏が党内の会議で党首を辞任すると繰り返し語っていたと指摘。「党を解党する危険性があった」などと除名の理由を説明している。
全国紙政治部記者は、同党の罵詈雑言合戦の決着を、以下のように予測する。
「今後、不透明なお金の流れや暴露合戦が続くのだろうが、それらがどのような顛末(てんまつ)を迎えようとも、結局のところ、浜田聡氏、齋藤健一郎氏と現職の議員2人を抱えている限り、立花氏が国政政党を差配する立場となり、大津氏は国政政党の代表ではなくなることは確実な情勢です。支援者からの貸し付けによって資金を補ってきた同党は、元金に年利5%超の利息をつけて返すとして、333人から総額10億5000万円の債務があるとされています。多額の債務の行方については、政党活動に大きな影響を与えかねない問題になる可能性はありますが、立花氏が国政政党に強い影響を今後も与えるポジションを維持できるという意味において、立花氏の勝利となりそうです」
原発、憲法9条…政党共通の公約はなし「議員は自由に発言すればいい」
立花氏は最近になって「NHKをぶっ壊すテレビの販売をしていきたいと思います。皆さんに自信を持ってオススメするテレビです」と、チューナレステレビの販売をはじめるなど、これまでの注目を浴び続ける戦略を加速させていく考えのようだ。一連のガーシー騒動で、全国的な知名度を獲得し、支持率を回復させることに成功した。今後の国政選挙でも、この度、除名となったガーシー氏のような人気タレントやYouTuberを擁立して、参議院選挙において、比例代表でも議席獲得していく方針だ。国政に議席がある限り、多額の政党助成金が交付されることになる。生きていく糧という意味では、魅力的な活動ということになろう。
ただ、旧NHK党が今後も躍進を続け、国政与党になりうるかどうかは相当に厳しい道のりと思われる。立花氏は、かつて「(NHK党から立候補する人物に)政策協定などを結んで、共通の公約をつくるのですか」と問われ、こんなこと回答をしている。
「そのつもりはありません。NHK党の各人が、自由に言いたいことを言えばいい。もし、例えばですが、どこかのチームが原発に反対し、東京のホリエモンチームが原発に賛成したとしても、問題はないと思います。当選して、原発に反対したい人は反対すればいいし、賛成したい人は賛成すればいいと思っています。こちらはバラバラですよと、初めから言っておけば、それが嫌だと言う人は票を入れなければいいし、それでも応援したいと言う人が票を入れればいいというだけです。
自民党だって、共産党だって、日本国民の安全を守るために、憲法9条の改正に賛成したり、反対したりしているわけです。『国民の安全を守る』という目的は一緒ですから、それがNHK党の中で、原発政策において、議員同士で言っていることが正反対でも排除しませんという、それだけのことです。まとまらないものを無理にまとめようとするから、ガバナンスが崩壊するのです。あえて組織をまとめるルールをつくらないと言うのが、究極のガバナンスなのです」(引用は、2022年11月22日付みんかぶマガジン「立花NHK党首『ヒカル・堀江貴文・新庄剛志・朝倉未来・浜崎あゆみを国会議員に』」)
新党首・齊藤健一郎氏の政策はホリエモン主張の羅列
つまり、党として掲げる政策はほぼない、もしくは無視してよく、当選した各議員たちが好き勝手に行動するということだ。
その方針を具現化しているのが、今回、党首に就任した齊藤議員の活動方針であろう。齊藤氏が今後どのような政治家になるかは定かではないが、2020年の都知事選に出馬した際には「勝手に堀江貴文の掲げる提言をホリエモン新党は公約とし、確実に一つずつ実行していきます!」として、政治家としての主体性を放棄する宣言を冒頭に掲げつつ、以下のような政策を公約としている。
江戸城再建、足立区は日本の「ブルックリン」に生まれ変わる、「正解」を教えない教育、大麻解禁、「ジジ活」「ババ活」で出会い応援、限りなく生活コストを下げる、などだ。ホリエモンの著作にあったことを単に並べただけという、主体性のかけらもないが、それはすなわち今後の同党の活動方針となるのだろう。
この方針は、考え方がまるで違う、そして、政治についてよくわからないYouTuberやタレントを、政治家として立候補させるには、理想的な活動方針なのであろうが、例えば立花氏、齊藤氏らが今後国政選挙で10議席、20議席を獲得し、その際に、自公政権が過半数割れを起こしたとしても、果たして彼らは政権入りができるのだろうか。
政権入りしたからには、予算案や首班指名(総理大臣を選ぶ国会内の投票)において賛成票を投じるのは、最低限の政権与党の責務であるが、議員各人の自由な投票行動(永田町用語で「党議拘束をかけない」)を許せば、この責務は果たせないことになるのである。与党が過半数割れを起こしたとても、同党を政権入りさせるメリットがないのだ。政権入りの声をかけるとすれば、他の政党になるだろう。
政権入りには政策に思想が必要…知名度頼りでは限界が
悪名は無名に勝る、という理屈は、ある程度までの規模拡大には寄与するだろうが、有名タレントの擁立だけで票が稼げるのは限られる。むしろ、ガーシー氏の騒動を通して、全国的な知名度を上げることに成功した立花氏が今やるべきことは、NHKをぶっ壊す以外の中核的な政策の確立だ。政策を確立した上で、芸能人を立候補させるのであれば、大きなムーブメントとなりえよう。国民の投票行動は基本的に、与党へは信任、野党へは不満を託すものだ。
極端な例でいえば、南アフリカで「白人を殺せ」と主張していた極左野党「経済的解放の闘士(EFF)」は、マルクス・レーニン主義を思想的基盤にして躍進を果たした。極端な妄念だけでは、多くの人はついてこない。また、無党派の票を取ろうとして、何も主張とする柱がなく、その場、その場で、世論受けするようなことを言い続けるというのも、まとまりがなくなるということだ。
日本で2度の政権交代を果たした小沢一郎氏は「日本改造計画」で政策理論を掲げている。晩年には、執行部にとってのただのトラブルメーカーとなり、見る影もなくなったのは、数合わせに走り、小沢氏が自身の政策を封じ込めてしまったためだろう。これ以上の党勢拡大と政権入りを企図するなら、立花氏は、今後、同党の政策を体系づける必要がある。