ネトウヨのアイドル高市早苗、もはやこれまでか…奈良県知事選の「衝撃すぎる惨敗」の戦犯に自民党内から「調整能力が皆無」の声

このまま退場することになってしまうのか

 安倍晋三元首相が「保守派のスター」と太鼓判を押した自民党の高市早苗経済安全保障担当相がピンチに立たされている。総務省が作成した放送法の「政治的公平性」に関する政府解釈の行政文書をめぐり野党から追及され、4月9日の奈良県知事選では、高市氏が擁立を主導した候補者が落選したのだ。調整不足から保守分裂を許した高市氏には責任論も噴出しており、女性初の宰相への道に暗雲が立ちこめる。安倍氏の後ろ盾を失った “スター” は、このまま退場することになってしまうのか。

 「もしかしたら、自民党奈良県連推薦以外の方を党本部が応援されたのかなという疑問の声もあがっており、きちんと検証するというのも党本部と県連の信頼をしっかり構築して、今後一体となって活動していくことのためには大切なことだ」。投開票日から2日後の4月11日、日本維新の会候補が当選した奈良県知事選での責任を問われた高市氏は、記者会見で自民党本部の対応に不満を漏らした。

日本維新の会は大阪府以外で初めて公認知事が誕生

 奈良知事選には、高市氏が総務相時代の大臣秘書官だった平木省氏を擁立。自民党奈良県連の推薦候補となったが、党本部は推薦を見送った。5期目を目指した現職の荒井正吾氏は海上保安庁長官から自民党参院議員に転出し、過去4回の知事選でも自民党の支援を受けてきた経緯があり、党内や支持層への配慮からだった。

 現職と新人の6人が争った知事選で、日本維新の会は大阪府以外で初めて公認知事が誕生。高市氏が自民党奈良県連会長として擁立した平木氏は20万票弱を得票したものの、維新の山下真氏に約7万票の差をつけられ、次点に終わった。荒井氏は約9万7000票の3位で、現職が敗れたのは72年ぶりとなった。

「むしろ奈良県連と党本部が別々の候補者を応援したのではないか」

 もちろん、選挙において単純な足し算は成立しない。ただ、2位の平木氏と3位の荒井氏の得票数を合わせれば山下氏を上回っているだけに、保守分裂がマイナスに働いたのは間違いない。自民党奈良県連からは党本部への恨み節も漏れる。選挙結果の責任を痛感しているという高市氏は、同時に党本部の対応に疑問を投げかけているのだ。

 4月11日に閣僚として開いた記者会見では「昨日もずいぶん電話やメールをいただいたが、自民党奈良県連が分裂したように報じられるということについては、平木候補を全力で応援してくださった奈良県連の皆さんからは、耐えがたいという声をいただいているので説明させていただく」と語った上で、「2月から昨日までの間に、主に関西で報道されたことがもしも事実であれば、今回は奈良の自民党の分裂ではなく、むしろ奈良県連と党本部が別々の候補者を応援したのではないか、ということになってしまうかと思います」との主張を展開した。

「森山選対委員長の対応を検証したいというのが地元の要望」

 高市氏は、自民党の森山裕選挙対策委員長が荒井氏を激励したとの報道を例示し、「地元から寄せられたのは、報道が事実かどうか県連会長として確認して欲しいという声だった。県連で平木候補の推薦を正当な手続きを経て決定し、党本部の推薦を賜りたいということで、県議長、市長会長、町村会長、市議会議長会会長、町村議長会会長、県連三役などがたびたび上京し、幹事長や選対委員長に党本部推薦を要請した」と説明。その上で「都道府県連が推薦を決定した候補者を、党本部が推薦するか否かについての判断基準を明確化していくことも、課題の1つなのかなと思う」と厳しい表情を見せた。

 記者からは「森山選対委員長の対応がおかしかったということか」との質問が出たが、高市氏は「事実関係の確認はできていない。ただ信頼構築はやはりとても大切なこと。それらも含めてしっかりと確認し、検証したいというのが地元からの非常に強い要請だった」と語気を強めた。

「根回しが下手」というイメージはマイナスに

 自民支持層が割れ、維新候補に惨敗した森山選対委員長は4月9日夜、記者団に「最初の候補者調整のところで少し反省しなければならない」「なんとか良い調整ができないかと微力を尽くしてきたが、結果としてなされなかった」などと語っている。自民党内には、統一地方選挙の後半戦に向けて維新の躍進を許しただけに、むしろ高市氏に対して「調整能力が不足している」(党ベテラン)との冷ややかな視線が送られているのも事実だ。歯に衣着せぬ発言で保守層のハートをつかんできたものの、「根回しが下手」というイメージは今後の政治家人生でマイナスに働くとの見方も広がる。

 2021年の自民党総裁選で岸田文雄首相や河野太郎デジタル相、野田聖子元総務相と戦った高市氏は、事前の予想を覆して善戦した。安倍元首相が全面支援し、自民党最大派閥の議員を中心に、1回目の投票では国会議員票で2位の114票を獲得。3位に終わったものの、無派閥議員ながら存在感の大きさを見せつけた。岸田首相も無視できない「保守派のスター」となった高市氏は、その後に党政調会長を経て、経済安全保障担当相に就いている。

「捏造だ!」激怒発言も、「そもそも大した話じゃないじゃん」の声

 だが、2022年7月の安倍元首相死去後、後ろ盾を失った高市氏には、孤立感が漂うことになった。同年12月に、岸田首相が防衛費増額の安定財源として増税の方針を示したことに「首相の真意が理解できない」と反発。さらに「閣僚の任命権は首相にあるので、罷免されるなら仕方がない」とまで言い切ったが、自民党内で高市氏を擁護する声は広がらなかった。

 加えて、立憲民主党の小西洋之参院議員が今年3月2日に総務省作成の内部文書を公開し、2014~15年の放送法解釈見直し問題を提起。当時総務相だった高市氏は自らに関する文書内容が「捏造(ねつぞう)だ」として事実であれば議員辞職すると応戦してきたが、自民党内からは「そもそも大した話ではないのに、自分の発言によって炎上させている」などと冷めた見方も受けている。もしも、安倍氏が権勢を振るっている状況であれば考えられないような “ぼっち感” だ。

大ダメージの安倍派が着々と再建に動き出している

 それは来年秋に控える自民党総裁選との関係も無縁ではないだろう。長期政権を目指す岸田首相は再選に向けて着々と手を打っており、低空飛行を続けてきた内閣支持率も回復基調にある。高市氏自身は次期総裁選での再出馬について「『弱っちい』と言われたら仕方ないが、未定だ」とするものの、前回総裁選の結果を鑑みれば岸田氏への有力な対抗馬となるはずだ。

 だが、安倍氏を失い孤立感が漂う高市氏の支援態勢が整うのかどうかは疑問と言える。前回総裁選は、安倍氏や森喜朗元首相の意向を踏まえて自民党最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の議員がサポートに回ってきた。しかし、会長ポストが空席となっている安倍派では、安倍氏の一周忌をにらみ後継会長選出をめぐる動きが加速している。

総裁選、立候補は厳しいか

 最大派閥の元会長である森氏は、3月24日夜、後継会長候補といわれる萩生田光一政調会長や世耕弘成参院幹事長、松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、高木毅国対委員長を集めて会食し、今後の派閥運営などをめぐって意見交換している。森元首相は、5人の中から1人を次期会長にすべきだとの考えを示しており、新体制が発足するのは時間の問題だ。

 現在の集団指導体制から移行することになれば、最大派閥の新会長が宰相候補として総裁選に立候補することを意味する。前回は会長の安倍氏による意向で派内からの擁立は見送ったものの、新体制においては総力を挙げて高市氏を支援するというのは考えにくいのだ。

 女性初の宰相候補と言われてきた高市氏だが、もし次期総裁選で立候補できなければ、求心力をさらに失うことになるだろう。地元・奈良では知事選と県議選で維新の躍進を許し、党内でも孤立化しつつある高市氏は、今後どのような道を描いていくのか。「ガラスの天井」は簡単には壊せそうにない。

この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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