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コメは買ったことある!小泉進次郎・次期農水相が語った大ウソ「消費税減税、時間がかかる」…経済誌元編集長「時間がかかるのは日本だけ。財務省の入れ知恵」

(c) AdobeStock

 インフレ、増税、実質賃金の低下……日々の生活の中で経済の低迷を感じ取っている読者も多いだろう。物価は上がるが給与は伸びず、税と社会保険料の負担は重くなる一方。企業収益の伸びが報じられる裏で、可処分所得が目減りし、投資や消費に向かう余力は縮小している。いま、問われているのは「構造」そのものだ。

 そんな中で、コメ価格が高騰している中、自身は「コメを買ったことない」と発言しネットで炎上した江藤拓農林水産大臣が辞任に追い込まれた。後任として報道されているのは、江藤氏の発言について「国民の感覚からかけ離れている」と批判していた。ちなみにコメについては「もちろん買ったことあります」とその際回答していた。

 しかし小泉氏、農政とは直接的関係はないかもしれないが、今国民が強く求められている減税について「時間がかかる」などと否定的意見を持っている。経済誌『プレジデント』の元編集長で作家の小倉健一氏がこの問題を斬るーー。

目次

「国民から取る」ことが目的化した日本経済の迷走

 日本経済は、長年にわたり成長力を失い、社会全体が停滞と閉塞に覆われている。働いても報われず、物価は上がるのに賃金は追いつかず、かつて中間層と呼ばれた層は薄れ、生活に余裕のない層が増えている。若者も高齢者も、将来の見通しを持てずにいる。

 このような中で、日本の経済政策を実質的に統制してきたのが財務省である。財務省の目標は明確だ。国民からより多く税を取り、国家支出を正当化し続けること。それを忠実に代弁する自民党政権は、消費税の増税を正義と錯覚し、不要不急の事業に公金を流し込んできた。効果が見えない少子化対策、成果の出ない地方創生、建設費が膨れ上がる万博、学力水準の議論なき教育費無償化。どれもが成長につながるどころか、むしろ社会全体の効率と活力を奪っている。

 この構造を維持しようとするのが、政治家の小泉進次郎氏である。彼は、消費税減税が現実的でないと主張し、「システム改修に時間がかかる」と説明した上で、代わりに現金給付を提案した。年金生活者のような低所得者層に配慮する姿勢を見せているつもりなのだろうが、まるで中身のない優等生の答案である。根本的な政策判断を放棄したまま、耳障りの良い言葉でその場を取り繕う手法には、もはや人々の暮らしを背負う責任感も、経済構造への理解も感じられない。

減税が“できない国”という欺瞞――進次郎発言に見る現実逃避の構図

 小泉氏の「減税は時間がかかる」という発言は、世界の実例と照らし合わせれば、無知か欺瞞かのどちらかとしか評価できない。実際に、2020年にドイツは標準税率の引き下げを6月3日に発表し、わずか28日後の7月1日に施行した。イギリスは7月8日の発表から7日後に、アイルランドは5週間後に、実行した。フランスでは医療物資に対する軽減税率が法案成立前に遡及適用された。開発途上国のケニアですら、発表から7日で全国的な減税を実現している。いずれの国も、政治的決断さえあれば、全国規模の減税も可能であることを証明している。

 小泉氏の言葉が真実だとすれば、欧州もアフリカも日本より技術水準が高く、事務処理能力も優れているということになる。それが事実でないなら、小泉氏の発言は、国民に対する不誠実な逃避であり、財務省の顔色を窺う者にありがちな責任回避である。演説口調の巧さではごまかせない。政治に必要なのは、人々の暮らしを直視する覚悟と、構造を変える判断力である。減税が即効性を持つという事実から目を背け、実行可能性を嘘で覆い隠すような人物に、国家の経済政策を語る資格はない。

「減税すれば円安」は本当か?小野寺発言に見る財政論のご都合主義

 もう一人、自民党の小野寺五典政調会長は、物価高対策としての消費税減税に強く反対し、「消費税をやめれば円安になり、モノの値段が上がる」と述べた。さらに、赤字国債を財源とする物価高対策は円の信認を損ない、円安と物価高をむしろ助長すると語った。この主張は、表面だけを取り繕った一種の恫喝に近く、理論的な整合性を欠いている。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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