中国経済崩壊か…著名エコノミスト「習近平が総書記になって以降、中国経済は減速傾向を強めている」「中国経済の失業率の実態は、公式統計よりもっと深刻との見方も強い」

日本経済がインフレに苦しむ中、中国もまた国内経済の減速傾向に苦しんでいる。中国の政治経済事情を知悉しているエコノミストの柯隆氏が、習近平政権の正念場を分析するーー。
目次
習近平が総書記になって以降、中国経済は減速傾向を強めている
強権政治の最大の弱点の一つは、自らのレジティマシー(正当性)を制度的に証明しにくい点にある。2012年秋の中国共産党大会で習近平が総書記に選出されて以降、中国経済は年を追うごとに減速傾向を強めてきた。習近平政権はこの十数年間、「中華民族の偉大な復興」という強国復権の夢を繰り返し人民に訴えてきた。しかし、経済成長が持続的に鈍化している現実を踏まえれば、軍事力の強化よりも、まず人民生活を安定させ、豊かにすることこそが優先課題であるはずだ。
2026年3月に開催された全国人民代表大会で、李強首相は政府活動報告のなかで内需不足の深刻化に言及した。しかし、その一方で、内需を本格的に回復させるための有効な政策は依然として打ち出されていない。中国の内需低迷の直接的な転機となったのは、新型コロナウイルス禍である。当時、習近平政権は感染抑制を最優先し、大都市を中心に厳格なロックダウン(都市封鎖)政策を実施した。住民は自宅あるいは隔離施設への滞在を強制され、飲食店をはじめ、多くのサービス業が営業停止に追い込まれた。
中国経済の失業率の実態は、公式統計よりもっと深刻との見方も強い
当初、2023年にコロナ禍が収束すれば、中国経済は急速なV字回復を遂げるとの期待があった。しかし、現実には中国経済はL字型の停滞局面に入り、成長率はむしろ低下を続けている。
コロナ禍の後遺症は雇用市場に深刻な打撃を与え、とりわけ若年層の失業問題を悪化させた。16〜24歳の若者失業率は、2026年3月時点の公式統計で16.9%に達しているとされるが、実態はさらに深刻との見方が強い。
その背景には、最も多くの雇用を創出してきた中小零細サービス企業が大量に倒産したことがある。さらに、中国経済の実態を映し出すより生々しいデータとして、週に数時間しか働けない不完全就業状態の非正規労働者が約2億4000万人に達していると指摘されている。
雇用環境の悪化により、家計の消費性向は大きく低下し、逆に貯蓄性向は上昇している。中国経済のデフレ傾向を深刻化させている最大の要因は、まさにこの消費性向の低下にある。中国政府は毎年、高い経済成長目標を掲げ、中央政府も地方政府もその達成に奔走している。しかし、成長目標を実現する政策として重視されているのは、依然として消費刺激よりも投資拡大である。
経済成長を持続させるためには、本来、需要と供給が大まかに均衡していなければならない。企業が投資して生産した財やサービスが家計に消費されることで、初めて新たな投資意欲が生まれる。しかし、現在の中国経済では供給が需要を大幅に上回り、深刻な供給過剰が発生している。
鉄鋼、自動車、建設資材などの製造業は大量の過剰設備を抱え、生産された製品は市場で消化されず在庫として積み上がっている。一方、消費者はコロナ禍以降、将来不安を背景に消費を控え、生活防衛を優先する傾向を強めている。
デフレを深刻化させる中国国内の不動産不況
コロナ禍が残したもう一つの大きな負の遺産は、不動産バブルの崩壊である。2021年、大手不動産デベロッパーである恒大集団が外債のデフォルト(債務不履行)に陥った。国内債務であれば、中国政府による救済余地は一定程度存在したが、外債についてはほとんど支援が行われなかった。
しかし、問題の本質は単なる債務処理ではない。デベロッパーのバランスシートそのものが崩壊し、さらに若年層失業の拡大によって住宅購入能力を持つ層が急減したことで、不動産市場そのものが構造的に弱体化したのである。
理論的にいえば、インフレにもデフレにも「コンテージョン(伝染)」効果が存在する。物価上昇局面では、人々は「将来さらに価格が上がる」と予想して消費を前倒しするため、インフレ期待がさらにインフレを加速させる。しかし、デフレ局面では逆の現象が起こる。消費者は「将来もっと安くなる」と考え、現在の消費を先送りする。その結果、高所得層から低所得層まで一斉に支出を抑制し、企業の過剰設備問題が一気に表面化する。
現在の中国経済は、まさにこの典型的なデフレ循環に陥っている。