2027年、台湾有事は本当に起きるのか…鍵を握るのは台湾有権者の関心、トランプ政権を支えるシンクタンク、中国軍の真の実力

まことしやかに囁かれてきた「2027年に台湾有事が起こる」説について、国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が分析するーー。
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目次
「2027年に台湾有事が起こる」説は本当か
「2027年に台湾有事が起こる」という言説は、日本の安全保障議論において一種の合言葉のように語られてきた。その背景には、米軍関係者の分析、中国の軍事力増強、台湾海峡の緊張などがある。しかし、こうした危機の物語は、台湾内部の構造変化、米台関係の実質的再編、中国の軍事侵攻能力の現実的限界、そしてトランプ大統領の政策思想を支えるAFPI(America First Policy Institute)の対中方針を丁寧に読み解くと、必然性を大きく欠いていることが見えてくる。
危機は語りやすい。しかし、現実はもっと複雑で、もっと抑制的で、もっと構造的だ。2027年問題を冷静に見つめ直すことは、台湾海峡の未来を理解するうえで不可欠である。
台湾有権者の主な関心は経済
まず大前提として、台湾社会の政治文化が長期的に生活優先・経済優先へとシフトしている点を踏まえておきたい。
住宅価格の高騰、賃金停滞、少子化、医療・介護の負担、国際経済連携、これらが台湾有権者の主要関心であり、軍事的緊張は常に二次的な位置づけに留まる。台湾の政権は、どの党が担っても最終的には生活政策を中心に据えざるを得ない。軍事的緊張を自ら高めるような政策は、社会的支持を得にくく、台湾内部の政治構造は現状維持を求める状況となっている。したがって、台湾側から中国に軍事的な介入機会を与える独立宣言の類が出ることはあり得ない。
台湾が経済的圧力を受けて中国に靡く可能性は
では、台湾が経済的圧力を受けて中国に靡く可能性はどの程度あるだろうか。台湾経済は長らく中国市場への依存が高いとされてきた。しかし近年、輸出構造は大きく変化している。米国向け輸出が最大の比率となり、東南アジア・欧州との連携が強まり、半導体サプライチェーンは多極化し、TSMCは米国・日本・欧州で投資を拡大している。この経済構造の変化・多角化は台湾の安全保障を強化する方向に動いており、中国が経済的な影響力工作をすることによって安易に台湾への飴と鞭を行使することを難しくしている。
中国は台湾侵攻のための大義名分確保を得ることが難しい上、台湾懐柔のために経済的誘因を用いる手法にも限界がある。そのような中で無理筋の軍事行動を起こしたとしても、台湾側に内応する勢力を十分に育てることは容易ではない。そのため、中国側には軍事力による無理筋の侵攻しか選択肢はない。しかし、台湾は中国に対する十分な抵抗力を有している。台湾の戦略は非対称抑止を中心にしており、機動ミサイル、機雷、無人機などの非対称戦力は、中国軍の上陸作戦を極めて困難にする。したがって、中国にとって軍事侵攻はもはや容易な選択肢ではない。