米中二国間の“グランドバーゲン”は起こるのか……台湾を守る「シリコンシールド」の行方
東京大学公共政策大学院教授で国際文化会館地経学研究所長の鈴木一人氏は、中国が台湾侵攻を決断するかどうかは、アメリカの介入にかかっていると指摘する。トランプ政権下で米国の関与は揺らいでいるのか、その中で日本にできることは何か。鈴木氏に聞いた。
みんかぶプレミアム連載「鈴木一人 地政学×経済安全保障=地経学」
目次
アメリカの関与が揺らいでいる
中国が台湾に対して武力行使をしようと考えたとき、最も大きなリスクとなるのは“アメリカの介入”です。私は台湾への侵攻が2027年に起こる可能性は低いだろうと考えていますが、それは現状まだアメリカの抑止が機能している点も大きな要因です。
逆に、アメリカが台湾を手放す、つまり台湾侵攻に介入しないことが確実視されるような状況になれば、中国の計算は変わります。もしそうなれば、台湾への武力侵攻に踏み切る可能性は大いにあるでしょう。
だからこそ、台湾有事を防ぐためには、アメリカの関与が重要です。アメリカが台湾に関与する意思を持ち、それが中国に伝わり続けている状態であれば、中国の計算は保守的になり、容易に武力行使に踏み切らないだろうと想定できます。一方で、レアアースなどで中国に弱みを握られた場合、アメリカは行動しにくくなり、必然的にリスクは上がります。
ただし現状、中国が「アメリカの台湾へのコミットメントは弱まっている」と考えてもおかしくない状況が生まれています。
5月の米中首脳会談では、中国側が「台湾問題に口を出すな」というこれまで以上に強い態度をあからさまに示しました。そしてこれまでであれば、アメリカ側は「現状変更は認めない」などと話し、それが抑止になっていました。ところが今回は、台湾問題について言及しませんでした。見方によっては、これは台湾への武力侵攻を許可したとも取れる動きです。
“グランドバーゲン”は起こるのか
米中関係をめぐっては、台湾を犠牲にして米国が経済的な利益を得る、いわゆる“グランドバーゲン”が起きるのではないかという懸念がささやかれています。
私としては、グランドバーゲンが簡単に起こるとは思っていません。というのも、グランドバーゲンとは、見方を変えれば、中国がアメリカに何かを差し出し、その代わりに台湾への行動を黙認してもらうということです。
しかし、いまの中国は、「アメリカは、中国なしには生きていけない状況にある」という認識を強めているように見えます。そのため、アメリカから「これをやってあげましょう」と恩着せがましく言われること自体を、望ましくないと考えているのです。
その象徴が、先端半導体をめぐる中国側の態度です。アメリカは、エヌビディアのAI向けGPUである「H200」の一部輸出を認める方向を示しましたが、中国側はアメリカからの輸入を認めていません。そこには、「いずれ自分たちで先端半導体を作り出せる」という自信が見えます。