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なぜ今、お笑い界を追うのが一番面白いのか?吉田豪が「粗品vs哲夫」からひもとく、情報を立体にする快楽

 年末年始、イベントや執筆に大忙しだったプロインタビュアー・吉田豪氏が今、最も「情報の密度が濃く、追いがいがある」と断言するのが、テレビの枠を超えて多層的なドラマが展開される昨今のお笑い界だ。2025年末から2026年年始にかけて、芸人たちがSNSやラジオ、YouTubeを横断して繰り広げた応酬を、自身のルーツである「プヲタ(プロレスオタク)」的リテラシーでひもといていく。粗品と笑い飯・哲夫の騒動の深淵、そして表のニュースには決して出ない“アンタッチャブルな話”とはーー。

 みんかぶプレミアム連載「吉田豪の月イチ気になる話。」

目次

情報を重ねて「立体」にする快楽。ルーツにある“プヲタ的リテラシー”

 最近公開されたニューヨーク嶋佐(和也)さんのインタビュー、ちゃんと課金して最後まで読んでくれてる反響が結構あって嬉しいですね。嶋佐さんの“絶妙な浅さ”というか、カルチャーど真ん中のことばかり話す感じがちゃんと見えるのが、正攻法のカルチャー誌とは違う角度の面白さとして、一部の読者に届いたのかもしれないです。

 いま、とにかくお笑い関係の情報が供給過多なぐらいの時代になってるじゃないですか。地上波のテレビやラジオも、お笑い中心になりすぎだと批判されているぐらいなのに、地方ローカル番組やYouTubeやネットラジオまで追うとそれだけで時間がなくなるし、さらにはライブや配信やnoteとかの課金コンテンツも豊富で、無料でも楽しめるエンタメとしていちばん充実しているのがお笑いだと思ってるんですよ。そういう意味で言うと、ボクのライフワークって、一言で言うと「物事を立体的にすること」なんですけど、それがいちばん手軽に楽しめるのがお笑いになってるんですよね。

 ボクは何か世間でスキャンダルとかトラブルが起きたときに、その人の著書や過去のインタビューを掘り起こしたりして、その伏線になるようなバックボーンを探したりするのが仕事になってるんですけど、とにかくいろんな情報を集めて立体的にするのが大好きなんですよ。たとえば高倉健のオフィシャル本で原稿を依頼されたとき、元妻の江利チエミを筆頭にいろんなタレント本から高倉健エピソードをかき集めて、あまり知られてないような情報満載の記事にしたんですけど、とにかく多角的にものを見たい人間なんですよ。すごい数のタレント本を所持して、すごい数の人を取材してきたからこそ、どんどん立体的にできるようになってきているという。

 たぶん、この癖がついたのは、ボクが「プヲタ(プロレスオタク)」だったことが影響していると思うんですよね。昔のプヲタって『週刊プロレス』『週刊ゴング』『週刊ファイト』それぞれの雑誌で論調が全然違うのを、読み比べて確かめていたわけです。同じ試合や同じ選手の評価が雑誌によって全然違ってきたりするし、『格闘技通信』や『ゴング格闘技』とかまで加えると、プロレス雑誌だと何ページも使ってレポートされていた試合がNO FAKEを標榜していた『格闘技通信』だと小さな写真とキャプションだけで処理されてたりする。そういうのが楽しかったんですよ。いまで言うプチ鹿島さんがやっている「新聞の読み比べ」みたいなことを、ボクらは日常的にやっていたんです。この「情報のレイヤーを重ねる楽しさ」を、いま一番コスパ良く味わえるのが、実は「お笑いの世界」なんですよね。

粗品vs笑い飯・哲夫。これは最高のドラマだ

 それだけ大量に溢れているお笑い関連ニュースの中で、この年末年始にボクが追いかけていて一番楽しめたのが、「粗品さん×笑い飯・哲夫さん」ですね。

 これ、経緯を追うだけでも見事なんですよ。まずは『鬼越トマホーク喧嘩チャンネル』に粗品さんが出て、若手時代から哲夫さんにどれだけ世話になってきて大好きなのかを語る。その翌日が女芸人No.1決定戦の『THE W』。そこで番組側に頼まれた粗品さんが、『ytv漫才新人賞決定戦』というローカル番組で見せていた「審査員無双」ぶりを地上波ゴールデンでも発揮して、それまで微妙だった『THE W』をようやく面白くしてくれた。しかも、キッチリとダメ出しした上で、こうやったら面白くなるという具体例も提示して、番組終了後のアフターパーティーでは、全ての出場者に対してコメントを出して、番組内では言えなかった優しい言葉を掛けるというケアも完璧すぎたんですよね。

 その後、哲夫さんが地方局のラジオで自分の審査の時間が短くなったことにボヤき、それを粗品さんが拾って即座にYouTubeでアンサーを返す。これで『M-1グランプリ』での哲夫さんの審査にも注目が集まり、そこで哲夫さんが司会の今田耕司さんにいきなりいじられ、「粗品さんと電話して着地させた」とコメントして。正直つまらない着地のさせ方しちゃったなと思ったら、後に粗品さんがYouTubeでそれは嘘だと暴露して、かなり克明に電話の内容を話すことでとことん追い詰めつつ、ちゃんとオチをつけた。こうやって「即座に情報が集まって立体になる」感じが最高なんですよね。たぶんお笑いが誕生して、いまがいちばんそういう楽しみ方が出来る時代になってるんだと思います。

 『M-1』にしても、放送当日だけでも『敗者復活戦』〜『本戦』〜『大反省会』(その裏で優勝者インタビューもある)〜『打ち上げ』があって、アナザーストーリーとか出場者や審査員のYouTubeやラジオを追うと時間がいくらあっても足りなくなるじゃないですか。審査員でもある中川家が「打ち上げやらずに帰らせてあげて」って言った気持ちもわかるぐらいの過酷さになってきてますけど、それは視聴者にしても同じなんですよ。毎年、仕事でもないし誰に頼まれたわけでもないのに『M-1』の日はスケジュールを空けて、丸1日いろいろ追い掛けなきゃいけないからホント大変なんです……。

“元祖・動画流出男”おしみんまる。広まりはじめた特異な人間性

 最近だと、元・犬の心のおしみんまるさんという芸人さんが、後輩のしずる・池田さんにブチギレられた事件なんかもそうですね。

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この記事の著者
吉田豪

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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