投資が不安な初心者こそ知ってほしい、長期資産形成の基本「インデックスファンド」という第一歩

投資初心者の中には、「全世界株式(いわゆるオルカン)とS&P500のどちらを選ぶべきか」で迷うケースが多くみられる。近年は米国株の強さが際立ち、S&P500のリターンが注目される機会も増えている一方で、ファイナンシャルプランナーの鳥海翔氏は、「老後の安定的な資産形成という目的に照らして考えると、短期的な数字だけを基準に判断することはかなり危険」だと指摘する。オルカンとS&P500、それぞれの特徴と、投資目的に沿った判断基準について整理する。全3回中の3回目。
※本稿は鳥海翔著『マンガでわかる 「だまされない」お金の増やし方 思考停止でも月10万円受け取り続ける投資術』(KADOKAWA) から抜粋、加筆修正したものです。
第1回:老後資金作りに「株式投資は危険」は誤解……インデックス投資が資産形成の王道である理由
第2回:たくさんある「オルカン」、これを選べばOK!初心者でも迷わない長期投資に向いている4つの主要商品
目次
アメリカの経済的強さが支えるS&P500
全世界株式と並んで高い人気を持つS&P500は、アメリカを代表する500社で構成される株価指数です。これまでの実績を比較すると、S&P500は全世界株式よりも高いリターンを示す場面が多くあります。
その背景に、アメリカ経済の圧倒的な強さがあるのをご存じですか。1872年からGDP世界1位を維持し続け、先進国では珍しく人口も増加傾向にあるのです。アメリカの人口は2020年の3.3億人から、2050年には3.8億人へ拡大すると予測されており、人口動態の面でも他国を大きく上回っています。
世界経済は人口とともに拡大する傾向があるため、人口増のアメリカが長期的に強いとみられるのは当然ですよね。さらに米ドルは国際的な基軸通貨であり、世界の取引の約45%を占めています。英語話者人口も15億人と圧倒的で、資源や気候、国土などの面でも優位性があります。こうした複合的な強さがS&P500の長期的なリターンを支えてきました。
しかし、ここで注意しておきたいのは「目先の数字にとらわれると投資の目的が揺らぎやすい」という点です。短期の成績が良い商品に乗り換え続けると、やがて高リスク商品に流れやすく、結果的に資産を減らしてしまう人は少なくありません。
投資目的が老後の安定的な資産形成であれば、最も重視すべきは、20〜30年後に目的を達成できる再現性です。その意味で、分散効果の高い全世界株式は極めて堅実な選択肢といえます。
「全世界株式とS&P500の組み合わせ」は分散投資ではない
誤解されがちな論点として、「全世界株式とS&P500を組み合わせれば、さらに分散投資となるのではないか?」という考えがあります。一見、合理的ですが、実際には分散効果はほとんどありません。具体的に説明していきます。
まず、S&P500を5000円買うと5000円分が米国株になります。全世界株式を5000円買うと、そのうち約3000円が米国株です。合わせると8000円が米国株、残り2000円が米国以外という構成になり、むしろ米国比率が過度に高まります。つまり商品数が増えても、本質的な分散にはつながりません。
長期投資で重要なのは、途中で挫折せず続けられることです。投資の成否は商品そのものよりも、投資家自身の行動によって左右されます。多くの研究でも、継続の中断や途中売却がリターン低下の主因であることが示されています。
全世界株式は値動きの振れ幅が比較的落ち着いており、心理的ストレスを抑える効果があります。行動のブレを抑え、投資を継続しやすくする点にこそ大きなメリットがあります。
全世界株式のメリットは「続けやすい」こと
資産形成で最も大きなリスクは、実は「相場そのもの」ではなく、自分の行動です。どれほど優れた商品を選んでも、不安になって途中で売却してしまえば成果は得られません。
全世界株式は値動きが比較的安定しており、長く続けやすいという特徴があります。この続けやすさが、長期投資ではとても大きな意味を持ちます。
また、将来どの国が成長するのかを個人が判断し続けるのは容易ではありません。全世界株式が採用している「時価総額加重」という仕組みは、世界経済の変化に合わせて自動的に投資比率が変わるため、将来を予測しなくても市場全体の成長を取り込むことができます。未来予測に依存しない点は、大きな安心材料になります。
一方で、S&P500の強さも確かなものです。アメリカ企業の高い競争力、指数の入れ替えによる新陳代謝、テクノロジー企業の成長など、魅力は多くあります。「アメリカの強さに期待したい」という選択は合理的で、決して誤りではありません。ただし、その選択が自分の投資目的やリスク許容度と合っているかを冷静に確認することが欠かせません。
「儲かるか」より重要なのは、自分の目的に合った投資を選ぶこと
資産形成では、どちらが儲かるかではなく、自分の目的にどちらが適しているかを基準に判断することが欠かせません。
例を挙げると、月数万円を積み立てて20〜30年後の老後資金を準備するのであれば、値動きが安定し、長く続けやすいという点で全世界株式は合理的な選択肢といえます。投資経験が増えた後にS&P500を一部取り入れるなど、柔軟な組み合わせを検討することも可能です。
人生のライフステージによって家計の優先順位は大きく変わります。独身期、子育て期、教育費の負担、住宅購入……など、支出が変動する局面は何度も訪れます。
こうした変化のたびに投資を中断してしまうと、複利の力が十分に働きません。どの環境でも無理なく続けられる設計が重要であり、その意味でも全世界株式の安定性には大きな価値があります。
また、相場の好調な年を逃すと長期リターンは大きく低下します。市場から離れずに居続けることが、資産形成における最大の鍵です。値動きに振り回されず続けやすい商品ほど、長期成績も安定します。行動経済学でも、心理的負担の少ない仕組みが投資継続率を高めるとされており、分散の広い全世界株式はその点でも理にかなっています。
さらに、迷って投資を始められないこと自体も長期的には大きな機会損失になります。どちらが絶対に正解というわけではありませんが、迷って動けない状態が続くくらいなら、まず全世界株式で積み立てを始め、経験を重ねながら自分に合った構成へ調整していく方法が現実的です。
重要なのは、焦らず、ブレず、目的に沿った投資行動を継続することなのです。
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