在庫ゼロ、初期投資ほぼゼロ。専業主婦から起業した安保奈緒美氏が選んだ「リスクの小さい起業」
株式会社エヌグランディール代表取締役の安保奈緒美氏は、30代後半まで専業主婦として過ごしてきた。子育てが一段落したタイミングで会社員に戻る道ではなく、個人事業主として起業する道を選んでいる。専業主婦から経営者へ転じた経緯を聞いた。全4回の第1回
みんかぶマガジン連載「バリキャリ女性社長のワークライフ・ルール」
目次
専業主婦から個人事業主、経営者へ。
安保氏が代表を務めるエヌグランディールは、経営者・経営幹部向けのエグゼクティブコーチングと組織開発コンサルティングを手がける。組織づくりや人材育成をテーマに、経営幹部や管理職、将来のリーダー候補となる20代の若手層まで幅広く支援している。安保氏が起業を考え始めたのは30代後半。子育てが一段落し、自分のキャリアを見直すタイミングだった。
「子育てをしながらフルタイムで会社に戻る生活は、当時の自分にはどうしても想像できませんでした」と安保氏は話す。
会社員という雇用収入の道を選ばず、社会復帰の手段としてまず選んだのが、自分で時間や働き方を調整できる個人事業主という形だった。誰かが用意した枠の中で働くよりも、自分で未来を作る側に立ちたいという思いがあったという。その考え方が、後に起業という選択につながった。
リスクを抑えた起業の裏で、唯一お金をかけたもの
業種はコーチングや人材育成を選んだ。そこには20代の頃、派遣会社でキャリアアドバイザーとして働き、スタッフのキャリアの伴走に携わってきた経験が活かせることに加え、もう一つの理由があった。
「物販とは違って、コーチングや人材育成という仕事には在庫がありません。だからこそ、リスクを抑えて始められたのだと思います」
起業した当初は、オンラインでの会議システムが普及し始めた時期でもあった。そうしたツールが広がり始めたタイミングだったことも、初期投資を抑えられた要因の一つだという。在宅で事業を始められたことで、店舗を構える業態のような開業時の重さも回避できた。店舗型のビジネスであれば、業者やアルバイトの雇用なども必要になり、開業前の負担は大きくなる。安保氏が選んだのは、そうした負担を最小限にとどめられる業態だった。
一方で、心理学やコーチング関連の資格取得には相応の費用をかけてきた。在庫や設備投資を抑える代わりに、自分自身のスキルと知識に資金を投じる。これが、起業初期における資金配分の基本方針だった。
設備や在庫といった外側へのコストを抑え、知識や経験という自分自身への投資に資金を回す——この考え方は、現在の事業内容にも引き継がれている。経営者・経営幹部向けのエグゼクティブコーチングと組織開発コンサルティングは、いずれも設備投資を必要としない知識集約型のビジネスモデルだ。起業時に選んだリスクの小さい業態という方針は、10年以上を経た今も変わっていない。