私立医学部入試の真の参入障壁は約1,000万円の入学金。進学しなくても支払わされる…子供を国立医学部に合格させるためにやらせておきたいことを医学部識者たちが公開
先行きが不透明な世の中で、医学部人気は根強い。しかし問題なのが費用である。私立医学部は6年間で数千万円の費用がかかってしまうのは周知のとおりだ。そのため、どうしても国立医学部に人気が集まる。
では、国立医学部に合格するために必要なことは何か。教育投資ジャーナリストの戦記氏が分析する。医学部識者たちへのインタビューもあり、盛りだくさんな内容だ。
みんかぶプレミアム連載「受験とキャリアの不都合な真実」
目次
コンピューターサイエンスを学んでも就職難になる時代
教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。
いよいよ新年度が始まりました。本原稿を執筆している2026年4月現在の世の中は、中東情勢の混迷は深めており、また日本の長期金利も2.4%を超え、数年前までは花形だった米国のコンピューターサイエンス学科卒業生の就職難など、これまでとは異なる世界観になってきました。
今後の世界経済がどうなるのか、恐らく誰も正確に見通せない(シナリオを考えることすら難しい)状況ですが、日本在住のお子さんを持つご家庭の大半は、いずれにせよ18歳で大学受験を戦うことになります。今回は、「子供を国立医学部に合格させるためにやらせておきたいこと」というテーマで深堀りをしたいと考えます。
日本の医学部を俯瞰してみる
まず、日本に医学部はどの程度あるのかおさらいしておきたいと思います。
・国立大学: 42校(定員:4,832名)
・公立大学: 8校(定員:840名)
・私立大学: 31校(定員:3,704名)
・防衛医科大学校: 1校(定員:85名)
合計:82校(定員:9,461名)
(※ソース:文部科学省「令和8年度からの私立大学医学部の収容定員の増加に係る学則変更認可申請一覧」参考資料「大学別医学部入学定員等一覧」(令和7年10月16日公表)。定員は令和8年度の計画)
2009年度生まれ(現在の高2)の人口は107万人ですから、同世代の約0.9%が医師というキャリアを歩むことが可能になります。
国立医学部と私立医学部は学費において分断されているのですが、これも俯瞰しておきたいと考えます。
・国立医学部:約350万円/6年間
・私立医学部:1,850万円~4,740万円/6年間
私立医学部の学費が安い順に、学費2,300万円未満の7校は以下の通りです。
順位:大学名(学費/6年間)(住所)
1:国際医療福祉大学(1,850万円)(千葉県成田市)
2:順天堂大学(2,080万円)(東京都文京区)
3:関西医科大学(2,155万円)(大阪府枚方市)
4:日本医科大学(2,200万円)(東京都文京区)
5:藤田医科大学(2,212万円)(愛知県豊明市)
6:東京慈恵会医科大学(2,250万円)(東京都港区)
7:慶應義塾大学(2,265万円)(東京都新宿区)
このうち、慶應義塾大学(慶医)、東京慈恵会医科大学(慈恵)、日本医科大学(日医)の3校が「私立医学部御三家」とされています。また、これに順天堂大学(順天)を加えた4校が「私立医学部四天王」と呼ばれています。
私立医学部入試の真の参入障壁は「合格後の入学金支払い」。進学しなくても、約1,000万円金がかかる
私立医学部の6年間の学費は一般家庭には高額ではありますが、共働きパワーカップルならばなんとかなるのではと考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、私立医学部入試の現実を調査すると、真の参入障壁は「合格後の入学金支払い」にあることが分かります。例えば、2026年受験で、首都圏在住者が「国立医学部と私立医学部を併願する」というセオリー通りの行動を取ったら、何が起きたのか検証してみます。
首都圏の学力上位層が選択するオーソドックスな受験パターンで考えてみたいと思います。私立医学部四天王の合格発表、そして学費の支払期限は以下の通りでした。
(合格発表日→手続期間):大学名/払込金額(辞退する場合の入学金没収額)
2月7日→13日: 国福/450万円(150万円没収)
【つまり、合格した場合は450万円払込が必須】
2月16日→24日: 日医/450万円(150万円没収)
2月20日→26日: 順天/290万円(200万円没収)
【日医か順天か、どちらかを選択可能。日医を選択した場合は、この時点で国福+日医で900万円必要】
3月2日→11日: 慈恵/350万円(5日に100万円没収)
3月5日→12日: 慶應/393万円(20万円没収)
【慈恵か慶應か、どちらかを選択可能。】
3月6日→13日: 東京科学大学医学部
3月10日→15日: 東京大学理科三類
【科医と理三に合格した場合は、慶應は支払い不要】
つまり、最終的に東京科学大学または東京大学理科三類に合格した場合でも、私立医学部に振込みが必要な現金は、国福450万円+日医450万円+慈恵100万円の合計1,000万円で、入学金没収は国福150万円+日医150万円+慈恵100万円の合計400万円になります。最終的に進学する国立大学医学部の学費が6年間で約350万円であったことを考えると、没収されてしまう入学金が400万円となるのです。
このように、私立医学部受験を考える場合は、6年間の学費総額を考えるだけでは不足しており、実際に合格した後の学費振込額と期限を良く考えないと、家計では賄えないことになります。日本円の現金で1,000万円以上を持っているひとは少数派だと考えますので。