個別株はインデックス投資とまったく違う! プロが投資判断を誤る人に「過去のトレード」を教えたいワケ

老後の心配ばかりしている人が多い。新NISAをコツコツ続けながら、それでもどこか不安が拭えない。SNSを開けば「老後は3000万円必要」「いや、5000万円ないと無理だ」という声が飛び交い、見るたびに目標額は膨らんでいく。
しかし、チャンネル登録者70万人超を誇る人気投資YouTuberで、30年以上の投資キャリアを持つ上岡正明氏はこう言い切る。
「30歳までに320万円あれば、老後は十分に間に合います」
たった数百万円。それで本当に乗り切れるのか。30年戦い続けてきたプロが語る、「身の丈の老後資金」の組み立て方とは。連載全3回の最終回。
目次
「個別株」はまったく別のゲーム
前回まで、老後の最低ライン1270万円と、人生の分岐点3000万円について話してきました。最終回となる今回は、3000万円の「先」を目指す人が必ず通る関門──「個別株」の世界について語ります。
ここで強調しておきたいのは、個別株はインデックス投資とまったく違う世界だということです。
インデックス投資は、ある意味で「平均値の世界」です。世界中の優良企業や米国の大企業を、一括して買う。個別の企業を分析する必要はなく、月々コツコツ積み立てるだけで、市場全体の成長を享受できます。
しかし、個別株はまったく違います。個別株の世界では、自分の「審美眼」が試されます。
具体的に必要なのは、ファンダメンタルズ分析(決算書から企業の財務を読み解く力)、テクニカル分析(チャートからタイミングを見極める力)、相場全体を俯瞰する目、そして地政学を含めた金融経済の流れを読み取る力です。
これらすべてを総合した力が、個別株で勝てるかどうかを決めるんです。
つまり、個別株は「総合力の勝負」です。インデックス投資とは、要求される筋肉がまったく違う。だからこそ、軽い気持ちで手を出すと、必ず痛い目に遭います。
「インデックスでうまくいったから、個別株でも勝てるはず」──そう考えた人ほど、最初に大きな損失を出して退場していくのを、私は何度も見てきました。
テーマ株を買うのは博打
ここで多くの方が知りたいのは、「では、どうすれば個別株で勝てるのか」ということだと思います。私は、これを「勝つ」と「勝ち続ける」の2つに分けて考える必要があると思っています。
一度や二度、運よく勝つことは誰にでもあります。アベノミクスの時期に適当に買った銘柄が値上がりして「自分はセンスがある」と勘違いした人は、本当に多い。
しかし、20年、30年と勝ち続けられる人は、ほんのひと握りです。
私自身、株式投資を始めて30年以上経ちますが、毎年プラスを記録できています。なぜ勝ち続けられるのか。
それは、「未来の銘柄」を追いかけていないからです。
素人はいつも「これから上がる銘柄」を探しています。SNSで話題のテーマ株、半導体・AI・宇宙関連──。常に「次の大化け株」を求めて知らない銘柄に飛びつくのは、はっきり言って博打です。その企業の歴史も、業績の癖も、株価の動き方も、何も理解していないんですから。
プロは違います。プロが見ているのは、「過去の自分のトレード」です。
自分が過去に勝った時、どんな状況でエントリーしたのか。チャートのどの形を見て判断したのか。逆に負けた時は、何を見落としていたのか。これらを徹底的に振り返り、言語化し、自分の「勝ちパターン」として体系化していくことが必要です。
そして、もうひとつプロに共通する特徴があります。
それは、「庭の中」で戦うということです。
「庭」とは、自分が日頃から監視している、馴染みのある銘柄群のことです。プロは新しい銘柄に簡単に飛びつきません。自分が深く理解している銘柄の動きを、何年、何十年と追い続けて、その癖を体に染み込ませる。そして、その「庭」の中で、エントリーとエグジットを繰り返す。
私自身、30年戦ってきて、本格的に売買した銘柄は200〜250銘柄ほどしかありません。
「30年で200銘柄」と聞くと、少ないと感じる人もいるかもしれません。しかし手を広げず、自分が理解できる範囲を深く掘り下げる──これがプロの戦い方なんです。「もう新しく仕込める銘柄がない」とぼやけるくらい「庭」を絞り込めて、初めて玄人と呼べる領域に入ったと言えるんです。
逆に、毎週のように新しい銘柄を買い、SNSで話題のテーマ株に飛びついている人は、いつまで経っても自分の「庭」を作れていない。これでは、勝ち続けることは絶対にできません。