個別株ほど怖くない、インデックスより攻められる「セクターETF」という選択肢
「個別株投資は怖いけど、インデックス投資じゃ物足りない」。こう考える人に向け、米国証券業界で30年以上の実務経験を持つ米国株トレーダー・マーケットアナリストの鎌田傳氏が勧めるのが、特定の業種にまとめて投資する「セクターETF」だ。セクターETFのメリットについて、鎌田氏が解説する。全3回中の1回目。
※本稿は鎌田傳著『米国株ETF投資――「オルカン・S&P500」の次の一手!』(バトン社)から抜粋、再構成したものです。
「セクターETF」は個別株投資とインデックス投資のいいとこ取り
個別銘柄は大きなリターンを狙える一方で、値動きが激しく、リスク管理が難しい投資対象です。
一方、インデックス投資は幅広く分散できる半面、下落局面への対応が難しく、短期間で大きな利益を狙うことは容易ではありません。
では、個別銘柄の成長性とインデックス投資の分散効果を両立する方法はないのでしょうか。そこで、私がたどり着いた答えの一つが、「セクターETF」です。
ETFとは、「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では「上場投資信託」と訳されます。証券取引所に上場しており、個別株と同じように、市場の取引時間内に売買できる投資信託です。
ダウ平均株価やS&P500 などの代表的な指数に連動するものが多く、米国市場には4700本あまりのETFが上場しています(2026 年時点)。
ETFは複数の銘柄で構成されています。高配当株で構成されたもの、米国以外にも日本や欧州、新興国の企業で構成されたもの、国債や社債、コモディティに投資するものなど、その種類は多岐にわたります。
その中で、私が主にトレード対象としているのが「セクターETF」です。セクターETFとは医療、情報技術、金融、エネルギーなど、特定の業種に関連する企業で構成されたETFです。
実際にトレードしているセクターETF2つ
私が主にトレードしているのは、半導体セクターのETF「SMH」と情報技術セクターのETF「XLK」です。
SMHの主な組み入れ銘柄としては、エヌビディア、TSMC(台湾積体電路製造)、ブロードコム、AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)など、世界を代表する半導体関連企業が30社近く挙げられます。
XLKには、エヌビディア、アップル、マイクロソフトなど、半導体、ハードウェア、ソフトウェア分野の世界的なリーダー企業が70社以上組み入れられています。
ETFは複数の銘柄で構成されているため、仮に一部の銘柄が大きく下落しても、ほかの銘柄の値動きによって損失が分散されるという特徴があります。
そのため、個別銘柄に集中投資する場合と比べて、値動きのリスクを抑えながら、特定分野の成長を取り込むことができます。
1日の値幅が平均で何%あるのかを示す「ADR%」で、過去200日間における1日あたりの平均値幅を比較してみましょう。個別株である「テスラ」の1日の平均値幅が3.61~5.35%であるのに対し、情報技術セクターETF の「XLK」は約2.06%です(2026年8月11日現在)。
このように、ETFは分散投資の効果により、個別銘柄と比べて一つの銘柄の急落による大きな損失リスクを抑えやすいという特徴があります。

上のチャートは、情報技術セクターETFの「XLK」の日足チャートにADR%を加えたものです。
2025年8月から1年間を見ると、ADR%は2.08~1.62%の間で動いています。
次に、同期間の個別銘柄でテスラ(TSLA)の日足チャートを見てみましょう。

ADR%は3.64~5.45%の間で動いています。ADR%で比較すると、テスラの1日の平均値幅は「XLK」の約2~3倍に達していることがわかります。値動きが大きいため、短期間で
大きな利益を狙える一方、反対方向に動いた場合には損失も大きくなりやすいという特徴があります。
ETF投資は分析の負担を減らせる
もう一つ比較のために、より幅広く分散投資されたETFの例として、米国市場に上場している日本株ETFの「EWJ」を見てみましょう。
EWJは、トヨタ自動車やソニーグループのほか、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日立製作所、東京エレクトロン、ソフトバンクグループなど、日本を代表する企業約170 社で構成されたETFです。
2025年4月から1年間のADR%は1.11~0.924%の間で動いています。情報技術セクターETF「XLK」よりも低く、穏やかな値動きをしています。これは、EWJが自動車、銀行、商社、医薬品など、幅広い業種の企業に分散投資しているためです。
このように、一般的にETFは組み入れ銘柄が増え、分散投資の範囲が広くなるほど、ボラティリティが低くなる傾向があります。実際に、個別銘柄のテスラ、情報技術セクターETFの「XLK」、日本株ETFの「EWJ」を比較すると、分散の度合いが高まるにつれて値動きは穏やかになっています。

ETFは個別銘柄への集中投資に比べ、ボラティリティが低く、価格変動リスクを抑えやすい投資対象と言えるでしょう。
私は、個別銘柄にも投資することはありますが、ETFには個別銘柄に投資するより大きなメリットがあります。まず、個別銘柄のように決算発表に神経を使う必要があまりありません。
また、個別銘柄に投資する場合には、その企業の決算や競争環境(A社のシェアを同業のB社に奪われていないか)だけでなく、その企業が属する業界全体の動向まで分析する必要があります。一方、セクターETFであれば、特定企業ではなく業界全体の成長に投資するため、個別銘柄に投資する場合に比べて分析の負担を減らすことができます。
さらに、個別銘柄は値動きが荒くなりがちですが、ETFは比較的安定した値動きをする傾向があります。そのため、長期的な保有もしやすいのです。
