「エヌビディア一択」の終焉は近いか OpenAIとMetaが進める“自前チップ採用”の衝撃
米OpenAIが独自のAI半導体「Jalapeño」を発表し、米メタもプログラム作成を自動化する「KernelEvolve」を公表するなど、AI市場では「エヌビディア一択」からの変化が始まっている。AI自身がソフトウェア開発や調整の手間を減らすことで、顧客側は自前チップや他社製品を選びやすくなり、売り手であるエヌビディアの価格決定権を揺らしつつある。元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏が、AI需要拡大の影で起きている市場構造の変化と、株主・投資家が注視すべき利益率リスクを解説する。
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OpenAI独自チップ発表の焦点 性能以上に注目すべき「使いこなすソフト」の構造
6月24日、ChatGPTを開発する米OpenAIが、独自の半導体「Jalapeño(ハラペーニョ)」を発表した。AIが質問への回答を作る計算を、速く、安く進めるためのチップである。私が注目するのは、チップの性能よりも、それを使いこなすソフトウェアの作り方だ。
AIの普及を理由にエヌビディア株を買うなら、買い手の変化にも目を向けるべきだ。同社以外の半導体を使う手間を、AIが減らし始めている。顧客に安く使える別の手段ができれば、売り手は高い価格を保ちにくくなる。AI市場の成長ではなく、競争が強まった後に残る利益から株価を評価したい。
エヌビディアは、AIに必要な大量の計算を行う半導体を売る米国企業だ。その製品を使う企業にとって、計算の費用を抑えることは利益を増やすことにつながる。サービスの売上が同じなら、回答を作る費用が下がった分だけ、会社に残る金額が増える。買い手が欲しいのは、特定の会社のチップではない。求める仕事を、必要な速さと品質で終えることだ。
OpenAIは半導体大手ブロードコムと組んだ。設計を始め、工場に渡せる設計データを完成させるまで9カ月かかった。設計の案を試し、よりよい形へ直す作業の一部をAIが助けたという。半導体は、買ってつなぐだけでAIの仕事を何でもこなせるわけではない。どの計算を、どの順番で進めるのか。データをどう受け渡すのか。それを指示するプログラムが必要になる。チップの作りに合わない指示を出せば、計算する力が余っていても、仕事は遅くなる。
なぜ企業は高くてもエヌビディアを選び続けたのか 開発の手間まで含めた総合的なコスト計算
エヌビディアは、このソフト作りを助ける道具もそろえている。「CUDA(クーダ)」と呼ばれる、同社の半導体を使うための開発環境だ。よく使う計算のプログラムや、不具合を見つける道具を利用できる。開発者は多くの作業を最初からやらずに済む。
別の会社のチップを選ぶと、この便利さを失う部分が出る。これまで使ってきたソフトを書き換え、計算が正しいかを確かめ、速度が出るように調整する。半導体が安くても、そのために技術者を増やし、長く待つなら、買い替えのうまみは薄れる。
買う側から見れば、「チップに多く払っても、開発の手間まで含めれば得だ」という理由がある。AIがその負担を減らすほど、他社の製品を選ぶために必要な追加費用も小さくなる。OpenAIが8月25日に公表した報告は、この変化を示している。同社はAIを使って、当初は想定していなかった3種類のAIモデルを、2カ月でハラペーニョ上で高性能に動かせるようにした。AIモデルとは、質問を受け取り、学習した内容をもとに答えを出す仕組みのことだ。