「高市相場はアベノミクスの再来」は大間違い? 投資スクール社長が指摘する“決定的な違い”
本稿で紹介している個別銘柄:アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ソフトバンクグループ(9984)、ファーストリテイリング(9983)、村田製作所(6981)、キオクシアホールディングス(285A)
「サナエノミクスで日本株はまだまだ上がる」ーー。
高市政権が掲げる積極財政や成長投資への期待から、防衛、半導体、造船などの「国策銘柄」に注目が集まっている。政策の後押しが続くなら、関連企業の株価も上がり続けるはず。そう考える投資家も少なくないだろう。
ところが、投資スクール「Financial Free College(FFC)」を運営する株式会社Financial Free Collegeの社長・松本侑氏は、年末年始の日本株に慎重な見解だ。
「アベノミクスとサナエノミクスでは、金利をめぐる環境がまったく違います。政治への期待だけで株価が上がり続けるとは考えにくいですね」
今後の日本株で警戒すべきリスクは何か。急騰後に値を崩した半導体株に、再び買い場は到来するのか。松本氏に伺った。
みんかぶプレミアム特集「サナエノミクスの勝ち方」第6回。
アベノミクスとは「金利」が真逆だった
ーーサナエノミクスへの期待から、さらなる日本株高を予想する声もあります。現在の相場をどのように見ていますか。
サナエノミクスへの期待だけで、日本株が大きく上がり続けるとは考えていません。
高市政権の政策はアベノミクスを継承する部分が多いのですが、両者には決定的な違いがあります。金利です。
アベノミクスの時代は、当時の黒田東彦総裁のもとで日銀が大規模な金融緩和を進めました。低金利が企業の資金調達を支え、株式市場にもお金が流れ込みやすい環境だったわけです。
一方、植田和男総裁が率いる現在の日銀は、政策金利を引き上げる方向にあります。掲げる政策は似ていても、金融政策の方向は正反対。株価への影響が大きいのは、むしろ金融政策のほうだと私は見ています。
ーーAIや半導体、防衛への成長投資が進めば、企業業績にもプラスになるのではないでしょうか。
政策の恩恵を受ける企業はあります。ただ、政府が打ち出した投資が企業の受注や売上、利益として表れるまでには、数年単位の時間がかかります。
それに比べて、政治への期待で株価が上がる期間はずっと短い。その期待は、高市政権が発足した2025年の時点で、すでにかなり株価へ織り込まれました。
政権2年目のいま、内閣改造などで一時的に買われる場面はあっても、上昇は限定的かつ短期的なものにとどまるでしょう。
ーー年末年始にかけて、株価が下がる可能性もあるのでしょうか。
直近1年と比べれば、やや軟調な展開になると見ています。日銀は景気後退でも起きない限り、利下げには動きにくいかと。
据え置きか利上げが基本線です。利上げ観測を背景に長期金利も高止まりしているので、こうした金利環境が1〜2カ月で変わるとは考えにくいですね。
日経平均を押し上げる「一部の大型株」の正体
ーー日経平均は高値圏で推移しています。相場が軟調になるという見方とは、矛盾しませんか。
そこは日経平均の構成を見ておく必要があります。
日経平均は、アドバンテスト(6857)、東京エレクトロン(8035)、ソフトバンクグループ(9984)といったテック系の銘柄だけで3割弱を占めます。
ファーストリテイリング(9983)を加えれば4割近い。一部の値がさ株が上がるだけで、指数全体が押し上げられる構造なんです。※1
しかも、日本の半導体関連株は米国市場の影響を強く受けます。米国の半導体株は絶好調とまではいかなくても、じり高が続いている。その流れが続けば、つられて日経平均が上がる可能性は十分にあります。
ーー日経平均が上がっていても、日本企業が幅広く評価されているとは限らないわけですね。
そうですね。どのセクターも等しく上がる相場ではありません。
AIや半導体にはいまも資金が集まる一方、造船や海運、エネルギーなどは上値の重い展開が続いています。
数カ月単位で成績を求められる機関投資家は、短期的な値上がりを見込みにくい銘柄を売り、勢いのある半導体株へ資金を移す動きに出やすいんです。
ーー高市政権が力を入れる分野でも、株価が上がらないことはあるのでしょうか。
当然あります。国策として長期的な成長が見込まれる分野でも、目先の株価が上がるとは限りません。
とはいえ、相場では割高になった銘柄が売られ、出遅れていた割安な銘柄が見直される局面が必ず来ます。いま人気のないセクターを無理に追いかける必要はありません。さらに下がったところで仕込むつもりで、タイミングを待てばよいと思います。