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498円ぐらい払えVS無課金勢の激しい攻防…WBCネトフリ独占「大谷翔平の『養分』になれて私は幸せ」

(c) AdobeStock

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わった。2連覇を期待された日本代表は準々決勝で敗退し、次の大会に向けて様々な課題が浮かび上がった。その一方で今回の大会を巡っては、日本代表の活躍以外の議論も巻き起こった。それは、日本では一切地上波で試合が放送されず、その代わりネットフリックスが放送を独占したことだ。この問題について経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説していく。「私は大谷翔平の養分になれて幸せである」。そう小倉氏が語る理由とは――。

目次

ネトフリ、いうほど高くないのでは…

 日本中が熱狂した2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、かつてない激しい議論を巻き起こした。全試合の映像配信をNetflixが独占したためである。「国民的行事なのだから無料で見せてほしい」と嘆く無課金勢と、「たった498円なのだから文句を言わずに払えばいい」と主張する層との間で、SNSなどを中心に大きな攻防が繰り広げられた。

 冷静に計算してみよう。プロ野球の公式戦を球場で観戦しようとすれば、チケット代だけで数千円は必要になる。さらに交通費や飲食代を合算すれば、1回の観戦で1万円ぐらいは簡単に消えていく。現地でしか味わえない熱気があるのは間違いない。しかし、家族全員がリビングに集まり、最高のアングルから高画質で全試合を見つめても、かかる費用は最初の1ヶ月でわずか498円である。広告付きプランとはいえ、イニングの交代時間に合わせて自然に映像が切り替わるため、純粋に野球というスポーツに没頭できる。忙しい大人にとって、時間を気にせず見逃し配信を楽しめる利便性は圧倒的だ。千円以下の出費で世界中が注目する試合を網羅できる事実に、筆者は何の違和感も抱かない。むしろ安すぎるくらいだとさえ感じる。

ラジオに流れた無課金勢

 一方で、映像の有料化に踏み切れなかった無課金勢はどうしたか。完全に無料で提供され続けたメディア、すなわちラジオ放送へ流れたのである。ニッポン放送などのラジオ局が全国に向けて生中継を行い、映像が見られない環境にある人々にとって、ラジオから流れてくる実況中継は救世主となった。

 耳から入ってくる情報だけで試合の展開を想像する体験は、驚くほど豊かな時間を提供してくれたようだ。ジャーナリストの須田慎一郎さんから教わったのだが、ラジオでのWBC聴衆は、それはそれは感動的なものだったのだという。

日本人は野球に金を払う国民なのに…

 今回のラジオ中継は、高額な有料配信に抵抗感を持つ層や、インターネットの操作に不慣れな高齢者層にとって、ラジオは野球と社会をつなぐ大切な命綱として機能した。有料の最先端映像配信と、無料の伝統的な音声放送が両輪となって日本中を巻き込む空間を作り上げていた事実は、非常に興味深い現象であった。

 では、なぜNetflixの独占配信となったのか。背景には、日本市場が持つ異常なまでの価値がある。報道によると、WBCの放映権を獲得するためにNetflixが支払った金額は、日本市場だけで150億円に上るという。前回大会の放映権料が30億円であった事実を踏まえると、5倍という跳ね上がり方である。世界的に見ても、ひとつの国だけで巨額の放映権料が動く事例は他に類を見ない。日本市場だけで、世界中のスポンサー収入をはるかに凌駕する利益を生み出している異常事態である。

 筆者には、日本のメディアに対して言いたいことがある。日本中から150億円という巨額の資金が集まるほど、日本人は野球に対してお金を支払う情熱を持っている。日本の視聴者が良質なコンテンツに対して正当な対価を支払う意志があるのなら、なぜ日本のテレビ局はみすみす外資系の動画配信サービスに独占権を奪われてしまったのだろうか。

無料放送を義務付けるべきだという意見

 民放のテレビ局が単独で巨額の資金を用意することは、現在の広告収入に依存するビジネスモデルでは不可能に近いのかもしれない。しかしテレビ局もインターネット配信や有料サービスを展開しているはずだ。単なる無料放送の枠組みにとらわれず、日本の企業として知恵を絞り、資金を集め、権利を獲得する気概を見せてほしかった。日本人の情熱が生み出した巨額の資金が、日本の企業を潤すのではなく、海外のプラットフォームに吸収されていく現状には一抹の寂しさを覚える。日本の放送業界には新しいビジネスモデルを構築して対抗していく強い姿勢を期待したい。

 国民的関心の高いスポーツイベントは、法律で無料放送を義務付けるべきだという意見も聞かれた。イギリスやヨーロッパの一部、韓国や台湾などでは、特定の重要なスポーツ大会を誰もが無料で見られるように保障する仕組みが存在する。日本には法的な決まりがないため、商業的な判断に委ねられてしまう状況に不公平感を抱く人がいるのも理解できる。

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