あなたの年収が劇的にはね上がる、超一流の「話し方」「聞き方」「学び方」
本業のアナリスト業務に加えて、講演やセミナーにも積極的に登壇。「プレジデントオンライン」で執筆した記事は、2020年に半年間で累計6000万PVを超えた実績を持つ、”日本一多忙でバズるアナリスト” の馬渕磨理子さん。稼げる収入源となる「書く力」と「話す力」を伸ばす方法を伺いました。(第5回/全5回)
※本記事は、馬渕磨理子著『京大院卒経済アナリストが開発! 収入10倍アップ高速勉強法』(PHP研究所)より抜粋・再編集したものです。
第1回:アナリストがこっそり推奨…読むだけで年収が上がる「競合アナリスト」レポート8選
第2回:どんなに忙しくても「ToDoリスト」は手書きにするべき理由…年収を10倍にする究極仕事術
第3回:残念なガリ勉高学歴が知らない「年収を爆上げする知識のつけ方」…まずは師匠を見つけなさい
第4回:年収1億円プレイヤーが本当に読んでいるもの
半年で6000万PVを記録。バズる記事に共通するたった1つのルールとは
ここまで「インプット」をメインにお伝えしてきましたが、最後に少しだけ執筆やプレゼンテーションなど「アウトプット」のコツをお伝えします。
執筆は私が最も大切にしている仕事の一つです。「プレジデントオンライン」に寄稿した記事は2020年2~7月の半年間で6000万PVを記録し、多くの方々に記事を読んでいただきました。
執筆で意識していることを紹介するとキリがありませんが、「プレジデントオンライン」で記事を書くにあたり、1つだけ決めたルールがあります。「絶対に自分の考えを書くこと」。
以前は、企業分析やトレンド解説について書くことが多く、自分の考えを書いていませんでした。客観的なアナリストレポートには個人の意見はむしろ「ノイズ」になると考えたからです。しかし、経済メディアには似たような記事がたくさん並びます。そこで独自性を持たせるには、自分の考えを多く記したほうがいいと思い、このルールを課したのです。
締め言葉にファクトや批判は不要。読み手がワクワクする文章を書くコツ
数字を用いた分析記事としての役割は認識しつつも、自分の考えを書くと「人格」「メッセージ」が生まれます。記事を読んだ人が書き手のキャラクターにまで興味を持ってくれたらしめたもの。あなたのファンになってくれるでしょう。
また、自分の意見を述べることは、責任を伴う行為です。周囲の人や所属する組織に対しても責任を持たなくてはなりません。そうした覚悟がにじみ出るメッセージには、説得性が生まれます。そうした記事に、読者はリアリティと独自性を感じてくれているのではないか。そう思い、私見を述べるようにしています。
もし、あなたが自分の専門性を活かして何かを執筆する機会があるのなら、ファクトを並べたり、批判をしたりして終わるのではなく、建設的かつ独自の意見で締めてみてください。読み手がワクワクするような原稿になると思います。
「あんたバカァ?」と思われるくらい、そぎ落として話す
学びが深まると、その知識を使って説明したくなります。一方で、簡単に説明するのが難しくなっていきます。説明を簡略化すると、「この人は、詳しいことは知らないんじゃないか?」と誤解されるのが心配になるのかもしれません。
しかし、バカにされていいんです。
会話の相手が必ずしも、自分と同じ知識水準とは限りません。ビジネスパーソンなら相手に合わせて話す内容を変えないと、仕事にならないでしょう。バカにされるくらいわかりやすく話すほうが、結果的には多くの人に伝わります。
たとえば、2022年4月にドル=130円に到達しましたが、理由の一つには日銀の「指し値オペ」があります。これを金融業界の言葉のままで解説した場合と、ビジネスパーソン向け、初心者向けに話す場合で比較すると次のようになります。
- 金融業界向け
- 「日銀は金融政策決定会合後、10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる指し値オペを毎営業日実施するとしています。これによって約20年ぶりに1ドル=130円台の円安・ドル高水準となりました」
いかがでしょう。金融業界で働く人には簡単とは思いますが、普段から『日経新聞』などで経済用語に触れていない人には、「指し値オペ」「円安・ドル高」が難しく感じるかもしれませんね。
- ビジネスパーソン向け
- 「日銀は長期金利が0.25%以上にならないように、国債を購入し続けることを決めました。アメリカでは利上げが行なわれ、金利が上昇しています。日本は金利が一定ですが、アメリカでは金利が上昇しているため、日米間の金利差が拡大しています。ドルが強く、円が安くなり、1ドル=130円台の円安となりました」
だいぶ柔らかな表現になりました。でも「長期金利」「利上げ」「国債」が人によっては聞き慣れないかもしれません。
- 初心者向け
- 「日本は金利を上げない方針ですので、アメリカとの金利差が開いています。金利が高い通貨のほうが、人気が高まります。金利の高いアメリカのドルが強く、日本の円は弱くなり、1ドル=130円台の円安になっています」
これで、だいぶわかりやすくなったのではないでしょうか。「日銀の10年物国債を0.25%の利回りで無制限に買い入れる指し値オペ」を「日銀は金利を上げない方針」にまで、簡略化するには勇気がいりますが、バッサリいきます。
話を聞くスピードと、文章を読むスピードは違います。専門用語を使わず、小学生でもわかる言葉を使う。そうでないと、金融業界以外の人には何も伝わらないのです。
シンプルなプレゼンテーションが人の心に刺さる理由
そもそも、プレゼンや説明のゴールって何でしょうか? 聞き手の頭の中に絵を描き、納得してもらうことでしょう。「なるほど!」「理解できた」「頭がスッキリした」という感想が得られたら合格です。
自分がどう思われるかはいったん横に置き、「聞き手のためになる」話し方を意識してみてください。他業界の人に話す際は、とくに注意です。
しかも、限られた時間内に趣旨を伝えなくてはなりません。自分の知識の深さを見せつける時間はないはずです。”聞いてくれた人のための時間にしよう”。そう意識すると、自分の体を覆う鎧(よろい)が落ちていくように、余計な言葉がポロポロと取れていきます。
余計な要素がそぎ落とされたシンプルなプレゼンテーションは共感を生みやすいものです。納得感があるから、「これはすごいよ!」と周りにシェアされやすくなります。自分を良く見せようとしない姿勢も相手からすれば好感が持てます。
「相手を思ってした仕事」は時間をかけて熟成して、必ず評価されます。バカで結構。いずれ、熟す時が来る。そう思っていれば、簡単で平易な説明をすることに怯(おび)えなくなります。