1億貯めた男の真理「S&P500をコツコツ買い続けるのが正解」…なぜ銀行に預けるとお金は減っていくのか
高校での金融教育がスタートするなど、子どもの金融リテラシー向上が求められている日本。そんな中、投資によって資産1億円を築いた「たぱぞう」さんも、子どもたちへの金融教育の重要性を強く説く。たぱぞうさんが自身の子どもにも語っている、知っておくべき投資の知識と米国のマーケット事情とは――。
※本稿はたぱぞう著『僕が子どもに教えている1億円のつくり方』(KADOKAWA)から抜粋・再編集したものです。
第1回:億万長者が持つ「趣味」とは…【統計】金融教育を受ければ「年収も資産も多くなる」
第2回:なぜ、収入の2割は必ず貯金するべきか…金持ちしか知らない、億万長者「四つの特徴」
「投資」はインフレへの対抗手段にもなる
お金を増やす手段は、ずばり「投資」です。相続などで手元に資産がふんだんにある人を含め、億万長者のほとんどの方は投資をしています。理由は簡単です。日本でお金を預けても、「ご褒美」である利息は非常に少ない。お金を口座に入金する「入金力」の向上だけで億万長者を目指すのは日本では難しいのです。
仮に毎月10万円貯めたとしましょう。現在の日本では銀行等に預けても利息はほとんどつきませんから、利息はゼロと仮定します。億万長者への入り口を1億円と定義するならば、10万円を1000カ月、つまり83年以上貯め続けて達成できる金額です。一方、投資で元手を増やすことができれば、1億円を貯めるのに1億円はいりません。複利効果を合わせて、元本5000万円を4%で運用できれば18年間で達成です。
投資とは、お金が増えることを期待して、自らのお金を投じることで、さまざまな対象があります。日本株や米国株、世界株に投資する株式投資、上場投資信託(ETF)や投資信託、各国が発行する国債に投資する債券投資、金や小麦などへの商品投資から不動産投資、最近では暗号資産投資なんてものも生まれています。
さて、儲かるかもしれないがお金が減る可能性もあるのが投資、お金は大きく増えないが減りもしないのが預金、と思っている方も多いかもしれません。しかし、銀行等に預けておいても、実はお金は減っているのだということをご存じでしょうか? なぜなら、近年日本円の価値は低くなっており、一方で物価は上昇しているからです。
日本は生活に必要な多くのものを輸入している国です。その輸入品の決済に使われるのは米国ドルなどの外貨で、日本企業は円を外貨に替えて支払います。その両替のレートが日本円にとってどんどん不利になっています。いわゆるインフレ状態に突入しているのです。物価の上昇は、お金の価値が下がることを意味します。
100円で購入できていたものが110円になったら、100円玉の価値は下がりますね。ですから、利息がほとんどつかない銀行にずっとお金を預けているお金は、事実上価値が目減りしているのです。私が株式投資をお勧めする理由は、「投資」によって物価やサービス価格の上昇、つまりいわゆるインフレのメリットを享受できる立場になれるからです。
株価は、企業の業績が上がれば上がります。物価やサービスの価格が上昇すれば、企業の売り上げや利益が伸びるので、株価は上昇すると思われるのです。つまり、株式に投資しておけば資産価値を増やす、または目減りすることを防ぐ効果があるのです。ですから、億万長者になるためだけでなく、自分の資産を防衛するためにも、投資にはぜひチャレンジしてほしいです。
円の資産だけではリスク…米国株投資を勧める理由
私はさまざまな投資先にお金を投じてきましたが、一番大きな果実をもたらしてくれたのは株式投資、なかでも米国株投資です。
投資を経験していない人であれば、何から着手すべきかわからないかもしれません。そこでご提案したいのが、「コア・サテライト投資」という考え方です。コアとは核、サテライトは衛星を意味します。コアの部分で「時間はかかるけど安定して資産を増やせる投資」を行い、さらにお金にゆとりがあれば、よりリスクとリターンが高い商品をサテライトとして投資しましょうという考え方です。一番大事なコアの投資では、米国の株式市場のインデックス(株価指数)に連動した投資信託やETF(上場投資信託)を選択するのがいいでしょう。
ところで「日本にいるのになぜ日本株ではなく米国株なの?」という疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。答えを端的に申し上げれば「日本経済よりも米国経済の方がおおむね好調に推移しているし、今後もその傾向は変わらないと考えているから」です。これは東証株価指数(TOPIX)と米国の株価指数S&P500の推移を比べてみるとわかりやすいです。
S&P500は2022年に入って下落しているものの、約35年間という長い期間で見ると右肩上がりです。一方、TOPIXは1990年代半ば以降上下を繰り返しながらほぼ横ばいです。いまだに1989年12月18日に記録した最高値を更新できていません。これが日米の株式市場の大きな違いで、私が米国株式のインデックス連動投資をコアでお勧めする一番の理由です。投資の初心者であれば、これらを毎月コツコツ買い続けていくのが正解と私は考えています。
具体的な商品としては、日本の投資信託であれば三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」、日本のETFであれば「iシェアーズ S&P 500 米国株ETF」、米国ETFであれば「バンガード S&P 500 ETF」があります。初心者であれば、この3種類のどれかに該当するものを毎月定額でコツコツ買っていくとよいでしょう。投資の先輩たちでもこの方法で資産形成をしている人がたくさんいます。
日本円で収入を得て、日本円だけの資産を持っている方が多いと思います。実はこれはかなりのリスクがあります。いわば、日本円に集中投資しているようなもので、日本円の価値が下がったとき、生活が苦しくなる可能性をはらんでいるのです。
24年ぶりの円安水準になっている2022年は、まさに日本円の価値の減少を感じる年になっています。円安は輸入品の価格上昇を招きます。石油も輸入品ですから、火力発電のコストが上昇して電気代が高くなるとか、ガソリンの値段が上昇しているとかを実感していることでしょう。米ドルなど日本円以外の資産を持っていると、このようなリスクを軽減することが期待できるのです。
子どもに伝えている最新米国事情
投資は何も考えずに愚直に続けていただけるものですが、投資を始めるとマーケットの動きに興味を持つようになると思います。そこで、私が子どもに日頃伝えている、最近の米国マーケットの話をします。
2020年半ばに非常に低かった金利が、約2年で直近5年の最も高い水準まで上昇しています。理由はインフレです。米国では2022年に入り、約40年ぶりの高いインフレが起きています。米国経済は2020年春に経験したコロナショックによる景気の底から回復しました。ワクチン接種後、人々は外出し始め、人との接触に対する抵抗感もなくなりました。その結果、2020年と比べて経済は正常に機能し、モノやサービスの需要が拡大したのです。
実は需要に対して、供給は思うような回復をしていません。最大の問題は人手不足です。国内の工場、港湾、トラック会社、倉庫などがフル稼働できるだけの人材を雇用できなくて、生産や出荷が遅れがちになりました。人手不足はレストランや病院でも同様です。モノやサービスに対する強い需要があるにもかかわらず、供給側がその需要を満たすことができていません。
この結果、「供給」が貴重品になりました。貴重品の値段は高いですね。だから、米国ではモノやサービスの価格が上昇する、つまりインフレが起きているのです。需要が満たされるまで、インフレは続くと見込まれています。
ですから、マーケットでは、インフレを必要以上に進行させないためにお金の価値を上げるための政策がとられます。金利の引き上げです。たとえば、預金の金利を上げれば、多くの人が銀行で預金します。そうすると、世の中に出回るお金が少なくなり、お金が貴重品になります。貴重品のお金を使って消費や投資をする人は少なくなりますから、経済が冷え込みます。その結果としてインフレが収まり始めることをFRBは目論んでいます。
S&P500は5年前と比較すると大きく上昇していますが、2022年に入ってからは下向きになっています。金利を引き上げる状況が続くと、米国経済が不活発になると想定し、株を売る人が増えた結果です。
それでも私は資産形成手段として米国株をお勧めします。S&P500の推移を見ても米国株が圧倒的に優位です。米国株とて、常に好調ではありません。しかし米国がくしゃみをすれば、米国以外の国は風邪や肺炎になっていることが少なくありません。たとえ軟調なマーケットでも、米国株が相対的に優位になることが多いのです。