自社株購入→資産3億円超を築いたベテラン投資家が見据える「景気後退リスク」と「買い場」

1991年4月、新卒で入社した会社の自社株を購入したところから投資人生がスタートし、3億2,500万円の資産を築き上げた前田嘉一(まえだよしかず)氏。
バブル崩壊、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナショック、そしてトランプショックと、幾度もの暴落を生き抜いてきたベテラン個人投資家です。
今回は、ベテラン投資家が「最大の買い場」と捉える局面などについて語っていただきました。インタビュー連載全2回の第1回。
目次
入社した会社の株購入
ーー投資歴と運用資産について、改めて教えていただけますか。
私の投資人生は、1991年4月に新卒で入社した会社の自社株を購入したところからスタートしました。
当時はもちろん、そこから35年もの長い月日にわたって株と向き合い続けることになるとは夢にも思っていませんでしたが、今振り返れば、結果的にそれがすべての原点になっていたことになります。
新入社員の初任給をそのまま原資に充てていきなり買い付けを行ったため、手元にまとまった運用資金など一切ない、まさにゼロからの出発。そもそも、まだ組織に対して何も成し遂げていない身でありながら「これほど十分な給料をいただいて働かせてもらっていいのだろうか」という、若さゆえの純粋な責任感がありました。だからこそ私は、会社に対して利益を還元し恩返しをするという明確な意思を持って、自社株の購入を選んだのです。
毎月3万円、ボーナス時には10万円という一定の額を崩さずに実直に買い続けた結果、気がつけば6年間で総額600万円ほどを注ぎ込んでいました。利回りや効率的な資産形成のみを追求する現代の投資スタンスとは本質的に異なり、当時の私にとってその一連の積立は、単なる資金投下ではなく、組織と運命を共にするという自分なりの覚悟の形でした。
「振り切れている」相場の現在地
ーー日経平均株価のPERが20倍を超えていますが、まえださんの基準では14倍から16倍だとお話されていたと思います。今、過熱感を抱いていますか?
16倍を超えてきたのが2025年4月のトランプ関税ショックの頃。そこからずっと上がり、振り切れている形になっていると見ています。背景にはAI関連に代表されるところで、利益成長への期待が織り込まれているからでしょう。私自身、AIはアンソロピックのClaude、アリババのQwenを使っていて、実際に使っているからこそ、AI関連の利益成長を伴ってPERが20倍まで上がってきているのも理解はできているつもりです。それでも、今の価格は異常値で高いと感じています。当面はこのまま続いてくると思いますが、私はこの高値圏で買うことはありません。
ーー日経平均株価は7万円に向かうと想定されていますか?
これ以上はさすがに行かないとは考えていますが、高いとは思っています。PERが25倍から30倍までいくというのは考えにくいです。
逆に下値で言うと、PER16倍の約4万円が底値だと考えています。
ーーもし下がるとしたら、どのような要因を警戒しますか。
やはり米国市場の動向が鍵を握っており、そこが崩れれば日経平均株価も確実に巻き込まれると考えています。特にトランプ大統領の一挙手一投足に市場が一喜一憂し、最近ではいわゆるTACOトレードのように相場が脈絡なく動く状態が続いていますが、こうした彼の言動に対して市場が慣れ、反応を示さなくなった時こそが、実際の調整局面を迎えるタイミングだと捉えています。
足元の景気後退リスクは「もう始まっている」
ーー景気後退のリスクについては、どの程度現実味があるとお考えですか?
株価の最高値更新や企業の好決算だけを見ていると、一見すれば景気が良いように錯覚してしまいますが、私は常に自分自身の足元がどうなっているかという実感を大切にしています。
日常生活を振り返っても、これまで1,000円だった散髪代がいつの間にか1,300円や1,400円に値上がりし、バス代も10円値上がりました。すると、庶民の財布のひもが固くなるわけですから、消費が落ち込んでいくことは容易に想像がつきます。
こうしたごく身近な変化を見渡す限り、景気後退はこれから懸念すべき将来のリスクなどではなく、私たちの生活の足元ではすでに始まっているというのがリアルな実感です。
ーー1991年に新入社員で入社された当時はバブル崩壊から下がり出す頃で、これまでデフレを経験されてきたと思います。本格的なインフレの入り口は初めてですよね。
そうですね。インフレでは株価が上がるので、資産を持つということが一番大事だと思います。現金だけを持っているということがマイナスになるので、資産を買っていく。この原則を絶対忘れないというのが一番です。