建設株と生成AI関連株の対照的な動き…投資歴30年のベテラン投資家が見る「この先にあること」
本稿で紹介している個別銘柄:西部技研(6223)、エスペック(6859)
インフレの常態化、生成AI銘柄の厳格な選別、そして高市政権の積極財政がもたらす円安リスク…。
デフレ脳からのアップデートを迫られる中、投資歴30年のベテラン投資家・名古屋の長期投資家ことなごちょうさんは、いかにして自分の資産を守り、育てているのでしょうか。
バリュー株・小型株に資金が戻ってくるのはいつなのか。なごちょうさんの見解などを伺いました。インタビュー連載全3回の第2回。
目次
投資家にとって積極財政は良い・悪い?
ーー高市早苗内閣の積極財政の方向性についてはどう評価されていますか?
積極財政という方向性自体は、現在の日本の構造問題と照らし合わせると、一概に良し悪しを判断できない面があります。有効求人倍率は高く、失業率は諸外国と比較して十分に低い水準です。消費の弱さは確かにありますが、これは財政問題というより、むしろ高齢化に起因すると捉えています。
本来であれば、高齢者人口の増加は医療・介護セクターの成長を意味するはずですが、国がその分野への支出を抑えようとするあまり、薬価を非常に低くし続けているため、外資系製薬会社の中には日本市場から撤退するところも出てくるくらいです。自ら成長産業の芽を摘んでしまっているわけで、非常に惜しいですよね。
財政運営については、片山さつき財務大臣との路線の違いが報じられることもあります。ただ、片山氏は財務省出身で専門的な知見をお持ちですから、外から見えるイメージと実態が異なる部分も少なくないでしょう。積極財政と財政規律のバランスをいかに取るか、それが今後の政権運営における最大の焦点になると見ています。
ーー食品の消費税を1%に引き下げが実現した場合、投資的な観点から、どんな影響が考えられますか?
直接的な恩恵を受けるのは、食品メーカーとスーパーでしょう。食品自体の税負担が減れば、素直に販売量の増加へつながりやすいため、スーパー側も客足が伸びる方向へ動くと思います。
一方で割を食うのは外食産業と見ています。食品の購入が1%になるのに対し、外食は10%のまま据え置かれることが予想されます。ここまで差が開けば、消費者の行動パターンは変わるでしょう。実際、今の時点でも外食に行くと「高くなったな」と感じる場面が増えていますよね。外食企業の株価にも、じわじわと影響が出始めている印象を受けていますし、外食企業のコスト構造を見ると原材料費の占める割合はそこまで高くありません。むしろ賃料や人件費の負担のほうが重いですから、食材の仕入れコストが多少下がったところで、それが業績の抜本的な改善に直結するかといえば限定的です。実際、飲食店を運営する某企業のIRセミナーで同様の質問をぶつけてみたところ、会社側も「プラスにはならない」と認識していました。
その分、受け皿として浮上しそうなのが中食です。スーパーで惣菜や調理済み食品を買って家で食べるスタイルは、外食に比べて割安感があります。宅配ミールキットのヨシケイなども中食の範疇ですが、こちらは配送コストや人件費も同時に上がっているため、恩恵をそのまま享受できるわけではありません。構造的に見れば、スーパーへ食品を卸しているメーカーこそが、最も素直に恩恵を受けられるセクターだと考えています。
ーー建設・インフラ系は一時期かなり注目されていましたが、最近は軟調な印象です。まだ上値余地はあるでしょうか?
建設株が2月の高値を抜けきれずに苦しんでいる背景には、コスト構造の明らかな変化があります。資材価格と人件費が、7~8年前と比較して倍近い水準に跳ね上がっているのです。
発注側も予算が合わずに工事を見送るケースが出始めており、工場建設からオフィスビル、マンションに至るまで状況は同じで、建設需要が落ち込めば、当然ながら建設株の業績にも波及します。
興味深いのは、そこで浮いた資金がそのまま生成AI関連へ向かっている点です。特にイランへの軍事行動が報じられて以降、その傾向は顕著になりました。資金の流れが建設からAIへと大きくシフトしている局面であり、建設株と生成AI関連株の対照的な動きは、まさに現在の相場の縮図と言えます。資材価格が落ち着きを取り戻さない限り、建設株が本格的に見直されるタイミングはまだ先になるというのが私の予想です。