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もし中国と戦争になったら「10億人の人口は飢え死にする可能性」経済学者指摘…世界は2つに分断され、日本も戦争に巻き込まれる 

 世界各国で、戦争(ホットウォー)と冷戦(コールドウォー)が勃発している。経済学者の上念司氏は、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとハマスの衝突のような明らかな武力衝突のみならず、日本の尖閣諸島などへ中国の海上警察が押し寄せている現状も、“戦争”であると話す。いま世界中で起きている戦争と、世界の行方について、上念氏が語る。 

※本記事は上念司著『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)から抜粋、再構成したものです(全4本中の3本目)。 

第1回:なぜネットの投資情報はゴミばかりなのか!経済学者「2~4%のマイルドインフレなら、短期的な景気後退局面があってもいずれ景気は持ち直す」 

第2回:経済学者が指摘する「中国EVが詰んでいる理由」…大変だ!アメリカが警鐘「チャイナに半導体製造装置を売ったらダメだ!」

第4回:経済学者「中国経済は長期低落傾向」日本人がやるべき投資はもうこれしかない!世界の流れからみた当然の結論 

目次

中国が日本に仕掛ける戦争行為 

 中国は「九段線」という国際法上なんの意味も持たない謎の線を地図上に引き、その内側はすべて自国の領土・領海だと主張しています。そして、そのような身勝手な「設定」に基づいて、サンゴ礁を埋め立ててそこに軍事基地をつくったり、海上警察によるパトロールを偽装した侵略行為、既成事実化を日々行ったりしているわけです。  

 日本の尖閣諸島や台湾の金門島、馬祖島に海上警察が押し寄せてくる理由はまさにそれです。常に相手を試し反応を見る。反応が弱ければここまではOKとばかりに、領海侵犯行為、既成事実化を図々しく常態化させていくわけです。このようなやり方を「サラミスライス戦略」といいます。そして、これも立派な戦争行為です。  

 中国にとって南シナ海、東シナ海は日本以上に大事なシーレーンです。この 海域で戦争が起これば物流は滞り、中国経済は壊滅的な打撃を受ける可能性があります。 2019年5月時点の中国の輸送機関別分担率は、海上輸送が62・8%、航空輸送が18・9%を占め、これら2つで全体の8割を超えています。鉄道はたったの1・1%しかありません。海上輸送が途絶えたら10億人の人口は飢え死にするかもしれません。まさかこんなバカなことはしないだろう……と思ったら、甘いです!  

独裁者の“イキり”で数十年単位の「ウザ絡み」も 

 たとえば、2022年のロシアによるウクライナ侵略を思い出してください。あのとき、プーチンはウクライナが3日で落とせると勘違いして戦争を起こしました。ロシアは自軍過大評価し、ウクライナ軍を過小評価した。それは大きな勘違い、誤解だったにもかかわらず、独裁者であるプーチンがそう思い込んだらそれが答えなのです。そして、中国もロシアと少しも変わらない権威主義国家です。習近平がプーチンのような誤解、曲解をすれば極めて愚かな戦争を始まる可能性があると考えるべきです。  

 さらに、質の悪いことに彼らは自分の失敗を認めることができません。ロシア軍は30万人以上の死傷者を出し、戦車は3000両以上を失い、黒海艦隊はほぼ全滅した状態であるにもかかわらず未だに戦争を続けています。2024年2月以降のゴリ押しの大攻勢では、毎日1000人以上の死傷者を出しているとのこと。しかし、ここまでやっても未だロシアに勝てる見込みはなく、戦線は膠着しています。 

 もし、中国が無謀にも台湾侵攻やフィリピンに対する侵略戦争を行った場合もこのようなかたちで「ウザ絡み」が続く可能性について考える必要があります。そして、海からの物資搬入を止められたら、中国は一気にロシアに接近してしまうかもしれません。極めて愚かな判断をするのが「独裁者あるある」です。「中国の工業力とロシアの資源でアメリカに勝てる!」とイキり倒してその気になってしまったりするかもしれません。そして、実際にそうすることで数十年単位のウザ絡みを繰り広げることはできなくもない。  

「戦争の世紀」が再びやってきた 

 実を言うと人類は一度それを経験しているのです。若い人は知らないかもしれませんが、かつて世界は西と東に分断されていました。西側は日米欧を中心とする自由主義世界、東側はロシア(ソ連)および東欧諸国に中国、北朝鮮、ベトナム、キューバなどの社会主義世界。この分断された2つの世界が大量の核兵器を持って対峙したのがいわゆる「冷戦」 です。 

 そして、いま私たちの目の前に再び戦争の世紀が戻ってきました。1991年、ソ連崩壊で冷戦は終わったはずなのに、人類は約30年の時を経てまた振り出しに戻ってしまった。  

 非常に残念ですが、この現実を受け入れることが大事です。そして、この戦争は簡単には終わらない。  

 最近、注目されている経済安保もこの文脈で考えるとわかりやすいと思います。冷戦はなぜ冷戦かと言うと、「熱戦(ホットウォー)」ができないからです。核武装した大国同士が熱戦をしたら、それはすなわち全面核戦争を意味します。そんなことをしたら双方が壊滅的な打撃を被って人類滅亡です。  

 戦争は相手をやっつけるだけでなく、自分が生き残らなければ意味がありません。そのため、相手が自分を滅ぼす能力を持つ限り、こちらも相手を攻撃できない。この状態を「相互確証破壊」と呼びます。  

 冷戦時代、アメリカとソ連(ロシア)は相手から大規模な核攻撃を受けても、反撃して相手国を確実に破壊できるだけの核戦力を持っていました。結果として、アメリカとソ連(ロシア)は互いに報復を恐れ先制核攻撃に踏み切れなくなりました。いわゆる「恐怖の均衡」です。  

ロシアーウクライナでも均衡が保たれている 

 実はこの恐怖の均衡は現在の米露関係でも成り立っています。ロシアとウクライナの戦争がお互いにレッドラインを探りながらある程度の節度を持って繰り広げられている理由がまさにそれです。ロシアとしてはウクライナに対する武器援助を断ちたいはずで、本当ならポーランドの補給ルートを叩きたいでしょう。しかし、もしそれをやってしまうとNATO軍の全面参戦を誘発しかねないので、それは抑制する。  

 逆にウクライナは武器援助をもらう代わりに、援助国の意向に従いその武器の使用範囲などを細かく決められています。さらに、ロシアが民間人や民間インフラに対して悪逆非道な攻撃を仕掛けてくるのに対して、あくまでも国際法で許された範囲の自衛権の行使に留めています。  

 このように一番強度の高い戦争である全面核戦争を回避するため、ロシアのような非道な国ですら一定のラインで攻撃を抑制しているわけです。 

中国はすでに戦争を仕掛けてきている  

 そういう意味で言うと、南沙諸島、金門島、尖閣諸島に押し寄せる中国の海上警察も実は強度の低い戦争をしているということに気づいたでしょうか?中国が日本を相手に戦争をすれば、日米安保条約が発動しアメリカが自動参戦します。そうなると最悪の場合は核戦争を覚悟せねばなりません。核戦争を避けるためには、そもそも通常兵器による全面戦争は避けるべき。では局地戦ならいいのかというと、これも全面戦争へのエスカレーションの危険がある。 

 そこで、軍隊を使わないかたちで現状を変更する方法はないのかと知恵を絞った結果、出てきたのがこの海上警察を使った戦法です。手始めに警察によるパトロールということで海上警察がやってきて、実弾発射以外のありとあらゆる乱暴狼藉をして暴れまわるわけです。 

 海上警察で手が足らないときは1000隻近い漁民に偽装した海上民兵が押し寄せたりもします。警察や漁民を軍隊によって実力排除したら全力で被害者ぶって国際社会にアピールするわけです。まさにウザ絡み。しかし、核戦争を避けつつ、他国を侵略して現状を変えたいと思ったらこれは案外いい方法と言えるでしょう。 

『経済学で読み解く正しい投資、アブない投資』(扶桑社)

世界は2つに分断され、インフレ圧力が高まる 

 現在、ウクライナと中東で戦争(ホットウォー)が進行中です。そして、東アジアでは中国がいつ台湾やフィリピンと戦争(ホットウォー)を始めてもおかしくない状態。その全体的な構図は、日米欧などを中心とした自由主義陣営の同盟と、それに対抗する権威主義国家の枢軸の冷戦(コールドウォー)です。 

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この記事の著者
上念司

1969年、東京都生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。在学中は創立1901年の日本最古の弁論部・辞達学会に所属。日本長期信用銀行、臨海セミナーを経て独立。2007年、経済評論家・勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。取締役・共同事業パートナーに就任(現在は代表取締役)。2010年、米国イェール大学経済学部の浜田宏一教授に師事し、薫陶を受ける。金融、財政、外交、防衛問題に精通し、積極的な評論、著述活動を展開している。

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