立憲野田、参院選で「与党過半数割れに」…来年度予算を人質にとられた窮地・石破「唯一の手」選択的夫婦別姓制度が鍵に

野党第1党の立憲民主党・野田佳彦代表が今夏の参院選で「与党過半数割れ」を目指す意向を表明した。石破茂首相(自民党総裁)が秋波を送る自民、公明両党との「大連立」の可能性は否定し、政権交代を旗印に野党勢力の共闘を進める。韓国の現職大統領に内乱容疑の拘束令状が発布されるなど波乱の幕開けとなった2025年、日本の政界はどうなるのか。経済アナリストの佐藤健太氏は「参院選での野党共闘は簡単ではない。ハンドル操作を誤れば政権交代は夢のまた夢となるだろう」と指摘する。
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主要野党をまとめ切れない立憲・野田
「参院選においては、少なくとも改選議席の与党過半数割れは実現し、もっと大きな目標としては(非改選も含めた)さらなる与党の過半数割れに勢いをつけていけるように頑張っていきたい。そのためにも、真価が問われるのは国会でいかに存在感を示していくかだ。特に32ある1人区で有為な人材を擁立し、野党系がしっかりと勝利をあげて劇的な変化をつくりだしていくために、全力を尽くしていきたい」
立憲の野田代表は1月4日の記者会見で「今年の通常国会は、まさに『熟議と公開』の国会運営の真価が問われる」と位置づけ、野党も責任を負いながら政治を前進させる1年にすると決意を示した。政府が編成した115兆円超の来年度予算案には修正を求める考えを強調し、「納税者の立場から賢い支出であるかどうか厳しくチェックし、何を勝ち取ることができるか協議していきたい」と説明。その上で「政権交代させるため野党の力を結集することに主眼を置いて、今年は取り組んでいきたい」と語った。
三重県伊勢市の伊勢神宮を参拝し、野党第1党の代表として年頭会見に臨んだ野田氏の視線は、すでに半年後の「決戦」に注がれる。だが、その瞳に余裕は感じられない。たしかに石破首相率いる自民党は昨年10月の衆院選で公示前から56議席減という大敗を喫し、公明党(24議席)を足しても衆院の過半数(233議席)に満たない状況に陥った。無所属議員らを加えた会派勢力でも13議席足りず、野党議員の協力なくして予算などを成立できない苦しい政権運営が続く。
ただ、立憲の野田代表が首班指名選挙で選ばれる状況かと言えば、決してそうではない。数の上では野党勢力が多いものの、日本維新の会(38議席)や国民民主党(28議席)などは一定の距離を保ち、衆院の首班指名選挙では石破氏が221票、野田氏は151票にとどまった。上位2人による30年ぶりの決選投票でも野田氏は160票で、無効票が84票に上る。
だからこそ、今夏の参院選は「決戦」と言える
つまり、基本政策や主張の違いから野田氏は主要野党をまとめ切れていないのだ。
最近の政権交代のケースを見れば、まずは参院で与党を過半数割れに追い込み、次の衆院選で衆参両院の多数派を形成する。だからこそ、今夏の参院選は「決戦」と言えるわけなのだが、参院は衆院選とは異なり、改選を迎える議員が総定数(248)の半数しかいない。今回は東京選挙区の補欠選挙も組み込まれ、125議席を争う。
自民と公明の与党系改選組は67で、選挙が3年後までない非改選組は75に上る。野党系の改選組は50、非改選組は48だ。つまり、与党は今度の参院選で50議席以上を獲得できれば非改選組と合わせて過半数を維持できる。逆に18議席減となれば参院でも過半数割れとなる。そこで勝敗のカギを握るといわれる32の「1人区」に注目したい。
今回、改選を迎える議員は2019年の参院選で勝利した人々だ。この時、立憲や国民民主など野党4党は全1人区で候補者を一本化したものの、「与党系22勝、野党系10勝」となっている。2022年の参院選は「与党系28勝、野党系4勝」だ。実は、野党系が大勝したのは2009年の政権交代前に行われた2007年参院選までさかのぼらなければならない。この時は民主党の勢いが強く、「与党系6勝、野党系23勝」だった。
野党統一候補で勝てる選挙区
共同通信が昨年10月に配信した先の衆院選での比例獲得票に基づくシミュレーションによれば、立憲、維新、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の6野党が立民に一本化すると想定したケースでは与党が「3勝29敗」となり、過半数割れに追い込むことができるという。一本化から維新が抜けたケースでは与党が「10勝22敗」だ。それぞれの野党が別候補を擁立した場合は「29勝3敗」となり、野田代表が掲げた「少なくとも改選議席の与党過半数割れ」には野党系候補者の一本化が欠かせないことがわかる。