進め1億火の玉だ…?「東京新聞全文削除」に見苦しい弁明「みんなで大家さん報道も違和感だらけ」元経済誌編集長の指摘

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 東京新聞が1月1日の紙面に載せたコラムが話題を呼んだ。「中国なにするものぞ」「進め1億火の玉だ」「日本国民よ特攻隊になれ」といった言葉がネット上にあふれていると指摘し、危機感を煽ったものだったが、その後、全文削除された。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が東京新聞の別の報道でも「事実の歪曲を臭いを嗅ぎ取った」と指摘する。それはどんなコラムだったのか。小倉氏が解説する――。

目次

新年一発目、気合いのコラムをあっさり削除

 2026年の幕開けは、ある新聞社が引き起こした前代未聞の不祥事によって、ジャーナリズムの信頼が根底から揺らぐ年として記憶されることになった。

 東京新聞である。

 1月1日、特別報道部長の署名入りで掲載されたコラム記事が、読者からの指摘を受け、後に「全文削除」されるという異常事態に発展したのだ。新聞という媒体において、一度世に出した記事を、誤字脱字の修正ではなく「存在しなかったこと」にする。これは、その記事の根幹が虚偽であったことを自ら認める敗北宣言に他ならない。

 事の発端は、元日の紙面を飾った「新年に寄せて」と題するコラムだった。

 筆者である特別報道部長は、憂国の士を気取り、新年のインターネット空間の現状をこう嘆いてみせた。「中国なにするものぞ」「進め1億火の玉だ」「日本国民よ特攻隊になれ」。

 こうした威勢のいい、まるで戦時中を彷彿とさせるような言葉がネット上にあふれ、人々が熱狂し、戦争へと突き進もうとしている――。コラムは、そのような危機感を煽り、警鐘を鳴らす内容で構成されていた。

 一体あのコラムはなんだったのか

 平和を希求する姿勢、戦争を避けたいと願う心。それ自体は尊いものであり、否定されるべきではない。しかし、このコラムには、ジャーナリズムとして決して越えてはならない一線踏み越えた、致命的な欠陥があった。

 記事の中で「あふれている」と紹介された過激な言葉の数々は、実際にはあふれてなどいなかったのだ。

 読者からの疑義を受け、後に東京新聞自身が調査し、認めた事実は呆れるほかないものだった。これらの言葉は、記者が過去1年間のSNSを必死に検索してようやく見つけ出した、ごく一部の、しかも文脈の異なる投稿であったり、古い投稿であったりしたという。

 ネット空間全体が戦争の熱狂に包まれているという事実など、どこにもなかった。

自らの「正義」のためなら、嘘をついても構わないのか

 記者が「そうであってほしい」あるいは「そうであるに違いない」という思い込み、もしくは意図的な創作によって作り上げられた「虚構の危機」だったのである。

 さらに、この記者の弁明が、報道に携わる者としての矜持を疑わせる。「あふれていますと書いたのは、言葉通りの言葉が多数飛び交っているということではなく、様子を表現したつもりでした」「戦争への熱狂には至っていないと認識しています。そうなる前に歯止めをかけたいという気持ちでした」。

 これは、自らの「正義」のためなら、嘘をついても構わないという告白に等しい。

 実際には起きていない「熱狂」を、あたかも起きているかのように捏造し、存在しない敵(好戦的な世論)を作り上げることで、自らの主張を正当化しようとしたのだ。事実をありのままに伝えるのが新聞の役割であるはずが、いつの間にか、自らの理想とする物語を大衆に信じ込ませるための、宣伝機関に成り下がってしまっている。

 この「事実よりも物語(ストーリー)を優先する」という東京新聞の悪癖は、なにもこのコラムに限った話ではない。一見、無関係に見える経済事件の報道においても、その歪んだレンズは遺憾なく発揮されている。

 それが、「みんなで大家さん」をめぐる報道だ。

みんなの大家さん問題、東京新聞報道に疑問

 誰もが1度ぐらいは目にしたことがあるかもしれない。「みんなで大家さん」という、いささか親しみやすすぎる名称の不動産投資商品の広告だ。年利6%から7%という、今の日本の不動産の状況では考えられない高利回りを謳い、多くの資金を集めていたこの巨大な投資スキームが今、崩壊の危機に瀕している。

 成田空港周辺の広大な土地に壮大な開発計画を掲げながら、出資者への配当が止まった。集められた2000億円もの巨額資金がどこへ消えたのか。老後の虎の子の資金を投じた高齢者たちが、眠れぬ夜を過ごしている現実は、あまりに痛ましい。

 事の本質は、高い利回りの裏に隠されたリスクを十分に説明せず、資金を集めた事業者にある。当然、徹底的な究明が待たれるところだ。しかし、この一連の騒動を報じる東京新聞の記事の見出しを目にしたとき、筆者は先のコラムと同じ「事実の歪曲」の臭いを嗅ぎ取った。

最初に事業の認可を与えたのは大阪

 2025年9月17日、東京新聞はウェブサイトや紙面で、この問題を大きく報じた。その見出しには、こう躍っていた。

<「みんなで大家さん」国も問題視…監督権限を持つ東京都に注意を促していた その間も出資額は膨らみ続け…>(デジタル版の見出し)

あるいは、

<「損害恐れ」都に警告 国交省など>(新聞トップ面)

 事情を知らない読者がこの見出しを見れば、どう思うだろうか。「東京都が監督をサボっていたから被害が拡大したのだ」「悪いのは事業者だが、それを放置した東京都も同罪だ」と受け取るのが自然な心理だ。見出しは記事の顔であり、最も強いメッセージを発する。そこで「東京都」を主犯の共犯者のように扱う手つきは、極めて意図的だ。

 だが、事実は異なる。

「みんなで大家さん」を運営する都市綜研インベストファンド株式会社に対し、最初に事業の認可を与えたのは誰か。東京都ではない。大阪府である。

 2010年3月、大阪府知事の許可(第8号)を得て、この事業は産声を上げた。運営会社の本店が大阪市にあったからだ。許認可の権限を持ち、最初にゴーサインを出したのは大阪府であり、全国的な規模で事業展開される以上、包括的な監督権限を持つのは国土交通省である。

 東京都は、後になって販売会社などが東京に拠点を置いたため、監督の一部(販売会社のみ)を担うことになった1自治体に過ぎない。

公平性を欠いた政治的な意図が透けて見える

 根本的な認可責任を持つ大阪府や、国全体の監督責任を負う国交省を差し置いて、なぜ見出しで「東京都」だけを槍玉に挙げるのか。

 記事の本文を詳しく読めば、国交省の動きや大阪府の存在にも触れられてはいる。しかし、多くの読者は見出しの印象で情報を消費する。

 そこには、「東京都を悪者にしたい」という、報道機関としての公平性を欠いた政治的な意図が透けて見える。大阪府が維新の会、国が自民党政権であることに対し、当時の東京都知事や都政に対する何らかの批判的スタンスを、本来無関係なはずの投資詐欺事件に投影したのではないか。事実よりも「東京都を批判する」という結論が先にあり、そのために見出しが歪められたとしか思えない。

 ネット上の「戦争熱狂」の捏造と、投資詐欺事件における「東京都への責任転嫁」。

 この2つの事例は、1本の太い線で繋がっている。

「結論ありき」の報道姿勢

 それは、「結論ありき」の報道姿勢である。

 前者の場合、「日本社会は右傾化し、戦争へ向かっている(だから止めなければならない)」というシナリオが先にあり、後者の場合、「行政(特に特定の自治体=東京都)の怠慢を暴く」というシナリオが先にある。そして、そのシナリオに都合の良いように、事実を作り出し、あるいは切り取り、見出しを操作する。

 ここにあるのは、現実の世界をありのままに直視し、読者に判断材料を提供するというジャーナリズムの精神ではない。あるのは、記者の脳内にある「こうあるべき世界」や「こうあってはならない世界」の幻影を、現実の出来事に無理やり重ね合わせようとする、独善的なプロパガンダの姿勢だ。

「戦争反対」という正義のためなら、存在しない熱狂をでっち上げてもいいのか。「権力監視」という正義のためなら、責任の所在をねじ曲げて特定の自治体を叩いてもいいのか。

 答えは、否である。

 正義は、事実の上にしか成立しない。事実を軽視した正義は、単なる独りよがりの妄想に過ぎず、時に社会を誤った方向へ導く凶器になる。

 かつて、戦争への熱狂を煽り、国民を破滅へと駆り立てたのもまた、一部の新聞であったことを忘れてはならない。形こそ違えど、事実よりも感情や物語を優先させる危うさは、現代の「平和主義」や「権力監視」を標榜する記事の中にも、形を変えて潜んでいる。

 投資に失敗し、資産を失うことは個人の悲劇である。しかし、私たちが日々接する情報が、歪められたレンズを通して届けられ、世界認識そのものが操作されることは、民主主義社会全体にとって、より深刻で長期的な悲劇をもたらす。

 東京新聞の一連の報道姿勢は、反面教師として、私たちに多くのことを教えてくれる。

 静かな怒りを持って、監視を続けなければならない。問題を起こした事業者が市場から退場させられるべきであるのと同様に、事実を誠実に伝えない言論もまた、読者の厳しい審判によって淘汰されるべき運命にある。

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