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自民・宮沢税調会長「誠心誠意対応したつもり」…103万の壁“年収の壁引き上げ協議”で国民民主のブチギレ退席!迷走維新が石破にラブコール

 自民党、立憲民主党に続く衆院第3勢力である日本維新の会の方向性が定まらない。新代表に就いた吉村洋文大阪府知事は、来年夏の参院選で非改選議席を含め現有18議席以上を目標とする考えを示している。ただ、与党を過半数割れに追い込むため32の「1人区」で野党の一本化を目指す一方、石破茂政権の2024年度補正予算案に賛成するなどフラフラなのだ。12月17日に国会内で開いた「年収103万の壁」引き上げをめぐる自民、公明、国民民主3党の税調幹部では、自民党が譲歩を求めてきたことから国民民主は「これ以上協議はできません」と「打ち切り」を通告した。これに自民党の宮沢洋一税調会長は「私としては、誠心誠意、対応してきたつもりだ」と話していた。経済アナリストの佐藤健太氏は「自民党と本気で闘うつもりがあるのか否かが分かりづらい。中途半端さを引きずれば来夏も厳しい戦いを強いられるのではないか」と見る。

目次

「非常に厳しい党勢でのスタート」

 10月の衆院選で敗北した維新は馬場伸幸代表(当時)が責任を問われ、12月1日の代表選では「最後の切り札」である吉村氏が約8割の得票でトップに選出された。吉村氏と言えば、高い発信力や新型コロナウイルス対策などが評価され、一時は「将来の宰相候補」に名が上がるほどの人気を得た。2023年4月の大阪府知事選・大阪市長選・大阪市議選で維新は勝利し、先の衆院選でも大阪の全19小選挙区を制覇。公明党との初の直接対決も完勝し、府内では向かうところ敵なしの勢力を抱える。

 ただ、気がかりなのは全国展開に向けた脆弱性と得票数だ。自民党派閥の「裏金問題」で相手候補に大逆風が吹く中、先の衆院選では広島4区や福岡11区で勝利したものの、関西以外は苦戦。公示前議席を4倍増にした国民民主党が比例票を3年前の前回から約2.5倍に伸ばしたのに対し、維新は約805万票から300万票近くも集票力を落としている。公示前の4倍近い議席に伸ばした3年前とは状況が一変し、野党で「独り負け」(吉村氏)となっている。

 衆院選の結果は公示前から6減の38議席にとどまったものの、比例票の多くは近畿ブロックでの得票が占めている意味は小さくない。吉村代表は12月13日、日本記者クラブでの会見で「非常に厳しい党勢でのスタート」と焦りを隠さなかった。馬場前執行部が「政府・自民寄り」と批判されてきたことを踏まえ、独自色の発揮に腐心する新執行部は「対峙すべきは自民党」とのスタンスを見せる。全国での党勢拡大よりも「戦略的地域」を選定し、候補を擁立していく方針という。

維新は減税や規制改革などに取り組む改革政党ではなかったのか

 前任者の「失策」を踏まえた方針転換は、どこの組織でも見られるものかもしれない。ただ、吉村代表の掲げる戦略がイマイチよくわからないのは「どこに向かっていく政党」なのか不明なところにある。まず、吉村氏は「永田町の古い感覚、政治のやり方、それをぶっ壊して現役世代が頑張れるような、そんな政策を実行していく改革政党でありたい」と語る。この点においては大賛成だ。いわゆる「国対政治」と呼ばれるような誰が、いつ、何をしているのか国民にわからない政治とは決別した方が良いだろう。高級料亭やホテルなどで飲酒しながらでなければ物事を決められない政治も有権者からは支持されないはずだ。

 ただ、吉村氏は「僕は野党第1党を目指しません」「自公政権の与党過半数割れを目指していくことに重きを置くべきだ」とも語っている。その一環として、来夏の参院選1人区では他の野党と候補者調整をすべきとの考えを示しているのだ。一見すると、ごもっともな主張であるように感じるが、維新が減税や規制改革などに取り組む改革政党であると期待してきた筆者からすると正直、「えっ、一体どこを目指しているの?」と拍子抜けしてしまう。

 吉村氏は12月2日の「BSフジLIVE プライムニュース」にリモート出演し、参院選での候補者調整について「例えば同じく野党の間でも、全く考え方も違う同士で選挙のために選挙区調整をするのは野合・談合に近く、なかなか有権者の方も納得できるものではない。ただ、やはり与党の過半数割れを目指すべき。複数区では全ての野党が戦えば良いが、1人区では準決勝を行い勝った者が決勝戦で自民と戦うことが必要。ルールを作るのはすごく難しいがチャレンジしてみませんかと思っている」と説明した。

野党一本化を進めたい維新・立民

 たしかに「与党の過半数割れ」を第1の目標に設定するならば、維新を含めた野党が1人区で候補者を一本化するのが望ましい。共同通信が10月29日配信した衆院選での比例獲得票に基づくシミュレーションによれば、立憲民主、維新、共産、国民民主、れいわ新選組、社民の6野党が立民に一本化すると想定したケースでは与党が「3勝29敗」となり、定数248の過半数を割り込むという。

 野党の一本化から維新が抜けたケースでは、与党は「10勝22敗」。それぞれの野党が別候補を擁立した場合は「29勝3敗」になるというのだから、第1目標の達成には6野党の共闘が欠かせない。予備選を踏まえた一本化を提唱する吉村氏の意向に対し、立憲民主党の野田佳彦代表は「一本化の実現を早めにしていきたい」と前向きに受けとめている。

6野党による一本化の効果が計算通りに働くかは未知数

 ただ、吉村氏自身が「全く考え方も違う同士で選挙のために選挙区調整をするのは野合・談合に近い」と語るように、6野党による一本化の効果が計算通りに働くかは未知数だ。馬場前代表が「選挙区調整は政策協定を結んだ延長線上にある。有権者から野合に見える」と慎重だったのは当然のことだろう。維新が共産党を含めた政党との間で政策協定などを締結する姿が想像できない。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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