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「いま」「ここ」という喪失なきアウラへ…羽生結弦『RE_PRAY』横浜公演アンコール上映(2)

(c) AdobeStock

日野百草 ファンしか知らない羽生結弦

目次

2025年の「いま」「ここ」へ

 羽生結弦というアウラは喪失しない。

 私はふたたび『Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd “RE_PRAY” TOUR 横浜公演 アンコール上映』で羽生結弦という「私」と出会う。RE_PLAYがRE_PRAYへと変わる、そのアウラを求めて。

 2023年から、2025年の「いま」「ここ」へ。

 それにしてもーーいったい『RE_PRAY』とは何だったのだろう。

 これは何度でも問いたい。あくまで私見だがアイスストーリーで言うなら『GIFT』は明快だった。社会性の強い、普遍的な構成だった。

 『Echoes of Life』もそうだ。サイバーパンク的な終末世界を描くSFに人の命とその普遍性を辿る物語だった。深読みすればいくらでも考察できるだろうし羽生結弦自身の言葉もある。

 しかし、フィギュアスケート史のみならず芸術史、文化史、大きな歴史の流れの中にある比較史とするなら、また違った景色が見えるように思う。

 『UNDERTALE』『ファイナルファンタジー』シリーズ、『エストポリス伝記2』など羽生結弦の幼少期、青春期に影響を与えたゲームの世界がベースとなっていることは周知の事実である。

 それはもう、多くが考察してきたことだろう。私もこの『RE_PRAY』ツアーで書いた10万字ほどの中で触れてきた。

 1990年代、私は19歳のときに角川書店(現・KADOKAWA)の「コンプティーク」編集部に入り、それこそパソコンゲームはもちろんスーパーファミコン(スーファミ)、PCエンジン、セガサターン、メガドライブ、プレイステーションなどあらゆるゲームの数々を執筆してきた。レーザーアクティブや3DO、PC-FXなどもあった。いまやよほどのマニアか古参ゲーマーでなければわからないハードもある。優劣や上下、貴賤とは関係なく、ときにアウラは喪失する。

 『エストポリス伝記II』(1995年)もこの時代のスーファミソフトから始まっている。『UNDERTALE』は2010年代なので隔世の感はあるが、羽生結弦の30年の「大好き」を詰め込んだことは確かだろう。

『RE_PRAY』はその発露であった

 ただし「大好き」だけでは優れた物語は生まれない。「大好き」だけでは仕事にならないように、多くがその「大好き」を職業にできないように。

 そこに創作とするなら「共感」がなければならない。共感なくして支持は得られない、お金はいただけない。

 その「共感」こそエンターテイメントにあり、羽生結弦のエンターテイナーとしての力だったように思う。『RE_PRAY』はその発露であった。

 私は当時『UNDERTALE』のToby Fox「MEGALOVANIA」における羽生結弦を「歴史上最高のスピナー」と書いた。

〈およそ1分30秒に渡るエッジの音という言魂を通し、闇の中で自己と対峙したストーリー上の羽生結弦は、真っ赤に染まったその世界で、これでもかとばかりに至高のスピンを魅せつけた〉

〈羽生結弦のフィギュアスケートはそうした次元を過去の競技会時代から超越してしまっているのだが、「MEGALOVANIA」におけるスピンはまさしく、その証左であった〉

〈誤魔化しがきかない、とでも言おうか。「MEGALOVANIA」導入のエッジワークもそうだが、本当に誤魔化しの効かない道を、あえて選んでいるように思う〉

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、修士(芸術)、芸術修士(MFA)。文芸論、人物評伝および比較史におけるポップカルチャー、またフィギュアスケートなど舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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