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“反知性主義=バカ”ではない!国際政治アナリストが読み解くトランプ思想の正体…常識とポリコレの衝突で見えるアメリカ分断の核心

 トランプ政権を論じる際、「反知性主義」という言葉は避けて通れない。しかし日本では、この言葉がしばしば「頭の悪い思想」「反エリートの感情論」といった表層的な理解のまま消費されているのが実情だ。反知性主義を誤解したままでは、アメリカ政治の現在地も、世界の分断の構造も見誤ることになるーー国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏はこう警鐘を鳴らす。本稿では、この誤解され続けてきた「反知性主義」の実像に迫る。

 みんかぶプレミアム連載「渡瀬裕哉の常識革命」

目次

“頭が悪い思想”ではない――反知性主義の本来の意味

 トランプ政権を読み解くためのキーワードとして「反知性主義」という言葉は欠かすことができない。しかし、同時に、この「反知性主義」という言葉は、その語感も相まって誤解されがちな思想となっている。そのため、本稿読者である日本人にも分かりやすく、この反知性主義を解説することで、トランプ政権を支える思想に対して理解を深めたい。

 まず、反知性主義が最初に誤解される点は、「人間の知性そのもの」に反対する思想だと思われがちなことだ。そのため、残念ながら、反知性主義=頭が悪い、と単純に字面だけで判断する人も多い。

 だが、より正確な意味としては、反知性主義は「より厳密には人間の知性から生まれる傲慢を否定する」思想だと考えたほうが実態に近い。つまり、人間の知性に対する謙虚な姿勢こそが反知性主義の本質だ。

なぜ私たちは“賢そうな人”に従ってしまうのか

 たとえば、大学教授のような知的な権威が世の中には存在している。彼らは各々の専門的な分野を持っており、その分野に関しては一般の人々よりも知識を持っていることは確かだ。しかし、彼らが一定の知識を持っていたとしても、彼らが世の中を思い通りに設計できるほどの知性を持っているとは限らない。人間が持つ知性は有限であり、その能力には限界があることは常識である。

 しかし世の中では、そのような人間の知性の限界は忘れられがちだ。したがって、その権威がある人物が発言すると、多くの人はその発言を受け入れてしまいがちだ。たとえ、その発言がおよそ現実感覚に照らし合わせて不可解であったとしても、だ。

テレビに溢れる「知性の幻想」と専門外発言の危うさ

 具体的な例を挙げてみよう。ワイドショーなどに出てくる大学教授などは、自分の全く専門外のことについて、さも全て分かったように発言する。その人物が自分の専門分野について実務的な知識で世の中に貢献することはあっても、それ以外の当該人物の発言はただの偏見である。まして、その専門分野であったとしても、知的な議論とは常に反対意見が伴うものであり、それが世の中の真理とも言うべき絶対的な見解ではない。それにも関わらず、大学教授らの「知性」の幻想を背負った人々は、毎日のように自らの見解を画面の向こうで垂れ流し続けている。

 この問題意識は米国のようなキリスト教社会では更に根深いものとなる。その文化的な文脈では、世界を創造した存在は神ということになる。彼らが想定する神は全知全能であり、そして人間は不完全な存在である。したがって、必然的に人間が神と同じ認知を持つことは出来ず、その知性にはおのずと限界があることになる。そのため、人間の身でありながら、全知全能を装う知性とされる存在には必然的に懐疑的な目が向けられることになる。

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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