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なぜ日本のメディアはトランプを批判し続けるのかーー“欧州の空論”に毒された、国益喪失のシナリオ

「トランプは予測不能だ」「国際法を無視している」――。年明けから日本のメディアに溢れかえるのは、欧米のリベラルな価値観に毒された、一面的なトランプ批判ばかりだ。しかし、その感情的なレッテル貼りは、日本の国益を著しく損なう危険を孕んでいる。ベネズエラでの独裁者拘束、グリーンランド取得交渉の真意、そして機能不全に陥った欧州の「平和ボケ」。世間が「暴挙」と断じるそれらの事象の裏には、実は中国やロシアの拡大を阻む極めて冷徹な地政学的ロジックが隠されている。

 国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が、歪められた報道の嘘を暴き、日本が生き残るために直視すべき「唯一の同盟国・米国」との冷徹な付き合い方を提言する。

 みんかぶプレミアム連載「渡瀬裕哉の常識革命」

目次

日本に蔓延する見当違いなトランプ批判。国際法違反という言説の欺瞞

 トランプ大統領に関する批判的な見解が年明けから垂れ流されている。曰く、ベネズエラのマドゥロ拘束は国際法違反だ、米欧がグリーンランドを巡って戦争になるなど、日本においても見当違いも甚だしい言論が跋扈していることは嘆かわしいことだ。

 米国は日本にとっては唯一の同盟国である。その唯一の同盟国が日本を直接的・間接的に脅かしている権威主義勢力の跳梁跋扈を制しているのが現状だ。彼らが我々日本人にとって平和かつ安定的な環境を作ろうとしている行為に脊髄反射的な反対することは現実的にも知的にも不誠実な振舞いである。

 ベネズエラのマドゥロ氏は、米国だけでなく、日本、EU諸国、中南米諸国も不正選挙によって選ばれた正統性がない支配者として扱われてきた存在だ。ベネズエラからは麻薬の流入による治安悪化や多数の難民が発生しており、米国だけでなく周辺国の脅威となっていることも明らかだ。したがって、米国が限定的なオペレーションで問題の中心となっていた人物を拘束したに過ぎないことだ。それにも関わらずトランプ大統領を批判する言説が溢れたことは素直に驚きを禁じ得ない。

欧州の“平和ボケ”を正したトランプの剛腕。安保政策と関税を天秤にかけるディール

 特にEU諸国は、ベネズエラ発の麻薬のアフリカ経由ルートで苦しめられており、マドゥロ政権の度重なる人権侵害を何度も認めてきている。本来、EU諸国は米国の行為を称賛こそすべきであり、同行為を国際法違反だとすることは無責任かつ偽善的な態度に過ぎないものだ(権威主義国全体のスポンサーである中国へのベネズエラ産原油供給の動きも現状では止まっている)。

 また、グリーンランド取得に関しては、トランプ政権が具体的な動きを起こす前に、デンマークや欧州諸国には何度も問題に対処するチャンスがあった。よく知られているように、北極圏は氷山の融解によって、北極海航路の重要性は中長期的に高まりつつある。デンマークの情報機関による報告書でも、中ロの影響力拡大は中長期的な課題とみなされてきている。第一次トランプ政権時からグリーンランドの中国による鉱山や空港への投資の話は存在していた。それらに対してトランプ政権が警告を行い続けたため、グリーンランドへの中国による経済的な侵略行為は止まっているだけだ。

 欧州がグリーンランドの地政学的な重要性を軽視し続けた結果、トランプ政権が領土取得に向けた交渉を始めることになったのだ。実際、トランプ政権がデンマークに直接的に圧力をかけ始めた後、EU諸国は慌ててグリーンランド防衛のための安全保障政策を策定・展開した。筆者は2025年2月に訪米して共和党関係者にヒアリングしたが、その段階でトランプ政権のグリーンランド取得姿勢については広く認識されており、1年経っても米国の主張の分析を本気にしなかったEUの平和ボケが正されたに過ぎない。実際、欧州がグリーンランドの安全保障に関する対応姿勢を示した後、欧州諸国への課税が示唆された関税も撤回された。

中露を疲弊させるトランプの包囲網。日本にとって「願ったりかなったり」の状況

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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