「住宅ローンはペアローンかシングルローンか」と悩む人に伝えたい、税理士が教える不動産購入の“シンプルで安心なルール”とは

マイホームを買うとき、「ペアローンにするかシングルローンにするか」で悩んだ人も少なくないだろう。税理士の森田貴子氏は、不動産購入には「シンプルで安心なルール」があると話す。年収1000万円世帯の正しい不動産の買い方について、森田氏が解説する。全3回中の2回目。
※本稿は森田貴子著『資産増、年収増、余裕増 世帯年収1000万円超の人が知っておきたいお金のルール』から抜粋、再構成したものです。
目次
住宅ローンは「名義や持分を支払いと一致させる」
「家を買うとき、名義ってどうすればいいの?」実はここを間違えると税金がかかることがあります。
共働きで不動産を購入するとき、「夫婦どちらの名義にするか」「共有なら割合はどうするか」で悩む人は少なくありません。
ポイントは、実際の支払い額と所有権(持分)の割合を一致させること。そうしないと思わぬ税金(贈与税)が発生してしまう可能性があります。
たとえば、5000万円の物件を購入するとして、夫が3000万円、妻が2000万円を負担したなら、持分は「夫6:妻4」として登記するのが正解です。
妻が支払いを負担していないのに「夫5:妻5」としてしまうと、妻は夫から財産(不動産の一部)を無償でもらったとみなされ、贈与税の対象になります。
贈与税は親族を含む他人からタダで財産をもらった人にかかる税金ですが、もらった財産が年間110万円を超えると課税され、10〜55%の税率がかかることもあります。
「収入がない妻の名義を半分に入れたいんだけど?」
その場合は要注意です。妻(または夫)に収入や貯金がなく、親からの資金援助もないなら、無理に共有名義にするのは、むしろリスクになります。このケースでは、お金を出した側を100%の名義にするほうが安全です。
不動産購入は人生の大きな支出。名義や持分を「実際の支払い」と一致させるのが、もっともシンプルで安心なルールです。
ローン負担も所有権割合とそろえるべし
「ローンを一緒に組むなら、名義の割合はどうすればいいの?」
不動産を買うときに悩んだことがある人は多いのではないでしょうか。住宅ローンを夫婦で組むときも、年収や貯蓄の割合に応じて借入額を分担し、その割合に合わせて不動産の所有権割合を設定します。
たとえば夫の年収が600万円、妻が400万円なら、ローンの負担も「6:4」、所有権の持分も「6:4」にします。もし貯金を頭金に入れる場合は、「年収+貯金」で総負担額を考え、その比率で持分を決めます。
「借入額と持分が合っていないとどうなるの?」
その差が贈与と見なされます。
実際のローン負担と所有権の割合をそろえることで、あとから「贈与扱い」されるリスクを防ぐことができます。大切なのは、出したお金と登記上の持分を一致させること。このルールを守るだけで安心して家を持つことができます。
ローンを組むときも「実際に出す金額」と「所有権割合」をそろえる。これがシンプルで確実な基本ルールです。
税務調査が入るかも?!税務署からの「お尋ね」とは
不動産を購入すると、税務署から「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」(以下「お尋ね」)という書類が届くことがあります。
不動産購入後に届く「お尋ね」は、資金の流れを確認するためのものです。購入した不動産の所在地・種類・細目・面積(㎡)などが記載され、別添の書類に必要事項を記入し、同封の返信用封筒で返送する形式になっています。
これは税務署が「不動産の取引内容や資金の出どころに不自然な点はないか」を確認するために送付するものです。
回答の法的義務はありませんが、回答しないと「何か隠しているのでは?」と疑われ、不明点が解消されないと直接確認が必要と判断され、税務調査に発展する可能性があります。正確に記入して返送することをおすすめします。
税務署は不動産購入からローン返済するまでの期間に資金贈与が行われていないかとチェックしています。「お尋ね」でチェックされる主なポイントは以下のとおりです。
・共有者の持分割合→持分と実際の出資割合が一致しているか
・預貯金の額→出資した金額が、本人の収入・蓄えに見合っているか
・ 借入金の額→収入に見合わない借入であれば名義人以外が実質負担していないか
・ ほかの資産を売って資金としている場合→売却したときの申告(譲渡所得の申告)が正しく行われているか
・ 親からの贈与→年間110万円を超える贈与があった場合、申告されているか
なお、親から住宅購入のためにまとまった資金の援助を受ける場合は、「住宅取得等資金の贈与の特例」を利用すれば省エネ等住宅の場合は1000万円まで、それ以外の住宅の場合は500万円までの住宅取得資金の贈与は税金がかかりません。
親が子の住宅ローンを肩代わりすると「贈与」とみなされます。ローン返済の資金援助に住宅非課税制度を利用することはできません。
相続時精算課税制度を利用することで、最大2500万円まで贈与税はかかりません。夫婦でローンを組んでいる場合、実際に返済しているのが一方だけであれば、それも贈与と判断される可能性がありますので気をつけましょう。不動産売却後に届く「お尋ね」も同様に対処しましょう。
「平等」よりも「実態に合わせる」が重要
不動産の購入は、人生の中でも大きな買い物です。「共有名義にしたほうが平等だから」と安易に決めず、出資額・ローン返済の実態に合わせて名義・持分を決めることが、税金トラブルを防ぐ最大のポイントです。
共働き夫婦が住宅を購入し、持分割合を夫6割・妻4割に設定したとします。このとき住宅ローンを組む方法として、「連帯保証」と「連帯債務」の2つがあります。
名前は似ていますが、法律上の立場や返済リスクの大きさは大きく異なります。連帯保証とは、住宅ローンの契約者(主たる債務者)が返済できなくなった場合に、連帯保証人がその債務を全額返済する仕組みです。借入の名義は夫、妻は「保証人」となる形です。万が一、夫が返済できなくなった場合、妻が全額を返済する責任を負います。
ただし妻は借入人ではないため、住宅ローン控除を利用できるのは夫だけで妻は全額支払う義務が生じます。
・連帯債務は夫と妻の両方がローンの借入人となり、返済義務を共有する形
持分割合に応じて返済負担を背負うことになり、住宅ローン控除も夫婦それぞれが利用できます。一方で、返済リスクも夫婦両方にかかってきます。
・連帯保証は片方が主、もう片方が保証する
・連帯債務は両方が借入人となる
シンプルにこう整理しておくと、仕組みの違いがわかりやすくなります。
