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習近平の野望・台湾統一の最大の障害…なぜ台湾は中国に投資しなくなってしまったのか

習近平の野望・台湾統一の最大の障害…なぜ台湾は中国に投資しなくなってしまったのか
(c) AdobeStock

 5月14日、トランプ大統領は北京を訪問し、習近平国家主席と会談を行った。会談の主要議題の一つは台湾問題だったとみられている。習近平主席は2027年秋の中国共産党大会で4期目続投が確実視されており、そのためにも台湾問題をめぐる主導権を維持したい考えである。中国にとって台湾問題は「核心的利益」と位置付けられているからだ。

 しかし、台湾をめぐる中台関係の現実は、中国政府の思惑通りには進んでいない。その象徴的な現象が、近年における台湾企業の急速な「中国離れ」である。エコノミストの柯隆氏が解説するーー。

 みんかぶプレミアム特集「中国経済崩壊か 習近平の黄昏」

目次

中台経済関係を支えた台湾資本

 1949年、中国大陸での国共内戦に敗れた国民党政権は台湾へ移転した。その後、中国と台湾は長期間にわたり政治的に対立したが、経済面では1980年代以降、急速に結びつきを強めた。

 1978年、鄧小平は改革・開放政策を打ち出し、中国経済の近代化に着手した。そのなかで中国政府は台湾資本の誘致を積極的に進め、「両岸一家親(海峡両岸は一つの家族)」というスローガンを掲げた。

 一方、台湾には大陸出身者やその子孫が多く居住しており、彼らのなかには故郷とのつながりを重視する人も少なくなかった。1980年代から90年代にかけて、台湾企業は中国へ大量の投資を行い、中国の輸出産業の発展に大きく貢献した。

 ところが、その後の台湾では政治体制が大きく変化した。1996年に総統直接選挙が実施され、台湾の民主化が事実上完成したのである。これにより、中台関係は「同じ中国」という歴史認識だけでは説明できない新たな段階に入った。

強まる中国の統制と台湾の民主化

 1989年の天安門事件以降、中国は経済改革を継続したものの、政治改革には踏み込まなかった。一方、台湾では民主化が着実に進み、多党制と自由選挙が定着した。

 この政治体制の違いは、中台統一問題における最大の障害となっている。

 とりわけ習近平政権発足後、中国国内における統制強化や香港への締め付けは台湾社会に大きな影響を与えた。香港で導入された国家安全維持法や政治的自由の縮小は、多くの台湾人に対し、「一国二制度」の将来像に対する不信感を抱かせる結果となった。

 こうした政治環境の変化は、台湾企業の投資行動にも影響を及ぼしている。

台湾企業の中国離れはどこまで進んだのか

 台湾企業による対中直接投資は近年急速に減少している。

 2010年、台湾企業の対中直接投資額は約146億ドルだった。しかし、その後減少傾向が続き、2020年には59億ドル、2025年には15億ドルまで落ち込んだ。

 さらに注目すべきは、台湾の対外直接投資全体に占める中国向け投資の割合である。

 2010年には83.8%に達していたが、2025年第1四半期には2.7%まで低下した。かつて台湾企業の海外投資といえば中国が圧倒的な中心だったが、現在ではその構図が大きく変化している。

 背景にはいくつかの要因がある。

 第一に、米中対立の激化である。中国に生産拠点を置くことが地政学的リスクとなり、多くの企業がインドや東南アジアへ生産拠点を分散させるようになった。

 第二に、中国国内の人件費上昇である。かつての「世界の工場」としての優位性は低下し、ベトナムやインドネシアなどが新たな投資先として注目されるようになった。

 第三に、中国経済そのものの減速である。不動産市場の低迷や消費の伸び悩みにより、中国市場の成長期待は以前ほど高くなくなった。

 一方、台湾経済は中国依存から脱却しつつある。2026年第1四半期の実質GDP成長率は14.5%に達し、AI向け半導体や高性能サーバーの輸出が成長を支えている。かつてアウトソーシング産業を中心としていた台湾は、いまや世界有数の半導体供給拠点へと変貌したのである。

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この記事の著者
柯隆

柯隆(か・りゅう) 1963年中国・南京生まれ。88年来日、94年名古屋大学大学院、経済学修士号取得。長銀総研、富士通総研を経て、2008年東京財団政策研究所主席研究員に。中国政治、社会関連の著書多数。「『中国「強国復権」の条件』(慶応義塾大学出版会)が第13回樫山純三賞を受賞、近著は『ネオ・チャイナリスク研究』(2021年、慶応大学出版会)。日本と中国双方の政治、経済に精通したオピニオンに定評。

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