この相場はいつ崩れる? ベテラン中長期投資家が見据えるタイミングと徹底した投資スタイル
本稿で紹介している個別銘柄:テクノフレックス(3449)、ALSOK(2331)
神戸を拠点に個人投資家向けの勉強会を主催し、現物中心の中長期投資を続けてきたキリン氏。投資歴は約11年、年間ベースでのマイナスは2018年が最後という安定した戦績を持っています。
もともとは小型グロース株を愛してやまない逆張りの投資家でしたが、半導体・AIが相場を牽引する今年は、その型を大きく崩さざるを得なくなっていると言います。
急落してもわずか数日で値を戻す今のマーケットで「暴落」の判断はどう行うのか。キリンさんに語っていただきました。
みんかぶプレミアム特集「激動相場 この夏の狙い目」第7回。
目次
半導体・AI関連銘柄はいつか崩れる?
ーー骨太の方針や積極財政といったテーマは気にされますか?
あまり気にしても仕方ないですし、「防衛」「インバウンド」など、言い出すことはあまり変わらないと思い、静観しています。
ーー仮に、食料品だけでも消費税が1%になった場合、株への影響はどう見ますか?
下がるにしても時限措置になる気がしていて、そんなにインパクトはないのではないでしょうか。これでグロースに資金が流れるかと言われると、それは違うと思いますし……。
ーー地政学リスクのなかで、日本株に最も影響を与えるのは何だと思いますか?
中東情勢でしょうね。戦争もまだ続いているようですが、終わりそうな雰囲気の時もあるのに、なかなか終わらない。ホルムズ海峡閉鎖の影響で実際に物が入ってこないということが起きると影響は大きく、トランプ大統領の一言でコロコロ振り回されている印象です。
ーー具体的に、相場や企業にどう効いてきますか?
今、ナフサの価格がすごく上がっていて、数カ月前と比べて2倍以上になっているんです。化学メーカーの仕入れは苦しく、製品価格に転嫁できる企業は強いけれど、できないところはきついでしょう。いろいろな会社に話を聞くと「ナフサは2カ月先くらいまでは確保できているけど、それ以降はわからない」という企業も出てきています。とはいえ、イランと米国が戦闘終結の覚書にサインをしたので今後は落ち着くと思いたいですね。
ーー半導体とAIがこれだけ強いなか、もし崩れるとしたら何がきっかけになると思いますか?
正直、引き金は分かりません。相場が何年先まで織り込んでいるのか予想できないぐらい上がっている銘柄もあるので、いずれ崩れるはずです。それでも、成長が続いているなかで相場だけが崩れることも全然あるので、「これがきっかけ」と特定するのは難しいです。下がってもすぐ上がりますから、崩れるまで持っておくしかないというのが今のスタンスです。
今の相場が「崩れた」と判断する基準は?
ーーボラティリティが激しいからこそ、その「崩れた」を察知するのが難しそうです。
難しいですね。瞬間的に大きく下げても、今の相場はすぐ持ち直すので、1日や2日では判断がつきません。1週間下げ続けたら、さすがに怖くなる人が多いでしょうけど、最近は1週間株価が落ち続けることはないですからね。
コロナ前なら想像もつかない感覚ですが、急落が1週間続けば自分のポジションの調整をどうするか考えるという構えです。
キオクシアについてもどこで腹をくくるかは、相場の地合いを見ながら都度判断する、という曖昧さを残しておくしかないです。
ーーAIが登場する前と後で、投資の方法も変わったということでしょうか?
間違いなく、そうだと思います。本当はもっと早く変えなければならなかったのでしょうけど、10年、20年と長くやってきた人ほど、これだけ大きな転換は経験がないのではないでしょうか。
一度定めた手法を変えるのは難しいもの。また、僕もインフレ時代を経験するのは初めてです。マイルールを見直すときが来たと割り切っています。
ーー円安がこれだけ進んでいることに、メリットは感じますか?
製造業の業績にはプラスに働きますし、多少米国株を持っている身としては助かります。国としては困るかもしれませんが、とても狭い視野で見ればありがたく思っています。
ーー別の記事でも損切りについては触れましたが、小型・大型で使い分けているのでしょうか?
先に説明した「ボラティリティがある銘柄は多少買値を下回っても様子を見る」とお伝えしました。これは、大型株はチャートが右肩上がりのものが多いので、自分の入るポイントが多少おかしくても、その右肩上がりが崩れなければ無理に売らなくて良いという考え方ですね。
一方で、小型グロースは速攻で損切りします。大型株と比べて全体として動きが弱いので、こちらは以前から守っていたルールを徹底しています。
ーー含み益を理想的な形で確定できた思い出はありますか?
具体的にお伝えすると、テクノフレックス【3449】が今年一番キレイに上がってくれました。継手を作る会社ですが、半導体製造装置用の配管も手掛けており、その点に着目して年明けに購入したものです。2.5倍くらいのところで半分利確してしまいましたが、半分は今も大事に抱えています。
ほかにも、小型株などで業績見通しに強い数字が反映されるだろうと予測できた時がありました。その時は思った通り、決算発表のタイミングで翌期のガイダンスの数字がすごく良くて、株価が一気に跳ね上がったんです。それ以上の材料は僕も持っていなかったので、そこで売ることができました。そういうケースはありますが、トレンドに乗っているだけの「よくわからないけれど上がっている」というような時は、大体利益を溶かしてから売る感じになってしまいますね。
ーースペースXの上場が話題ですが、どう評価していますか?
宇宙はあまりよくわからないので、結局申し込まなかったんです。当たらないだろうと思いまして……。
もともと米国株にそれほど入れ込んでいないので、スペースX自体は無理に触らなくてもいいかなと思っていますが、話題が回り回って熱い相場になれば考えようと思います。
僕は「今来ているものを持っておけばいい」という投資スタイルです。
とはいえ、もともと順張りのスタイルではなくて、小型で安ければ安いほどありがたい、という逆張りで買うことが多かったんですが、それだとなかなか上がらない株ばかり持つことになってしまったため、多少はスタイルをいじらざるを得なくなったというのが正直なところです。
ーー今のような相場で短期的にも利益を出すには、どこに着目して、どんな企業を買えばいいと思いますか?キオクシア以外で。
キオクシア以外ですか!痛いところを突かれましたね(笑)。今の相場は動きが極端なので、銘柄を問わず、今上がっているものに乗るのが一番早いと思います。僕は小型株を買う時は「PER(株価収益率)を見ろ」と言っていましたが、今の大型株相場では一旦それは忘れて良いです。大型株のトレンドについていくのであれば、チャートと出来高を大事にすると良いのではないでしょうか。