AIバブルはITバブルと酷似? 資産2億円を築いた著名投資家が教える「個人投資家の闘い方」

本稿で紹介している個別銘柄:スカパーJSAT(9412)、アストロスケール(186A)、クリーク・アンド・リバー社(4763)、日本ケミコン(6997)
「キオクシアで資産を何倍にもした」。そんな話を横目に、乗り遅れたと焦っていないでしょうか。
文房具店主としても仕事をこなしながら、資産2億円を築いた「名古屋の長期投資家」ことなごちょうさんの答えは明快で、「今から飛び乗るのは絶対にやめた方が良い」。
その根拠は、ITバブルとの類似と、SpaceX上場が示した市場マネーの限界にあります。
資産を築くために、今必要な準備とは何か。なごちょうさんに語ってもらいました。インタビュー連載全2回の第1回。
ITバブルとAIバブルの共通点
ーー日経平均株価は依然として高値圏で推移している印象がありますが、現在の相場をどうご覧になっていますか。この過熱度を、1から10で表すと、どのあたりでしょうか。
バブル後の高値どころか、「永久に抜けない」とまで言われたバブル期の高値から、下がったとはいえ3万円ほども上の水準にいるわけですから、高値圏という認識で間違いないと思います。
過熱度でいえば7から8ぐらいではないかと思います。9まではいっていない気がするんですよね。
ーー以前お話を伺った際、このAI相場はITバブルに似ているとおっしゃっていました。今もそのお考えに変わりはありませんか。
今でもそう思っています。ITバブルのときは、インターネットがこの先いつまでも成長し続けると誰もが信じていたところに、ある日突然、業績が一気に崩れました。今の生成AI相場でも、スマホやSSDに使われるNAND型フラッシュメモリ、コンピュータのメインメモリであるDRAMなどが「すべて足りない」と言われていて、生産枠が何年も先まで埋まっているという話が出ています。NVIDIAのチップも予約で数年先まで埋まっているといわれていますよね。
ただ、ITバブルのときも何年も先まで注文で埋まっていたのに、あるときからキャンセル料を払ってでも注文を取り消す返品の山が発生し、最高益から一転して大赤字に転落した企業がいくつも出ました。同じことが今回起きないとは限らないと思っているんです。
もっとも、当時の痛みを知っているからこそ、特にメモリメーカーは需給バランスが大きく崩れる事態を何よりも恐れています。SKハイニックスやサムスンから工場新設の話は出ていますが、各社とも慎重な姿勢を崩していません。ですから、ITバブルほどひどい崩壊にはならないのではないか、というのが個人的な見立てです。
ーーほかにITバブルと似ていると感じる点はありますか。
ITバブルのときも、IT関連以外の銘柄はほとんど上がっていませんでした。今回でいえば、自動車などは完全に放置されていますよね。最高益を更新しているのにPBRが1倍以下という会社が少なくないです。そういう構図もよく似ていると思います。
年内8万円を目指すのか?
ーーそんな中で、年末の日経平均についてのシナリオをお聞かせください。年内に8万円は行くと思われますか?
先日の7万2,000円台の高値をつけた時も、ここまで上がると予想していた人は少なかったですし、未来のことはどうなるかは分からないという前提でお話すると、8万円は厳しいのではないかと見ています。というのも、需給面の懸念が大きいからです。7月にはSKハイニックスが米国預託証券(ADR)をナスダックに上場し、約265億ドル(約4.3兆円)を調達しました。米国以外の企業による米国上場としては過去最大です。
この先にはOpenAIも控えていますが、こうした超大型の上場が続くとき、新規の資金、つまり預貯金を取り崩したり不動産を売却したりしたお金が入金されてくる可能性は低いです。手持ちの株を売って買い付け資金を捻出する人が多いのは、個人投資家だけでなく、機関投資家も同じです。
実際、SpaceXが上場したときは露骨に宇宙関連株が売られました。売られたというより、SpaceXを買うために現金化されていたという方が正確かもしれません。スカパーJSAT【9412】のチャートは本当にひどい形になりましたし、アストロスケール【186A】もそうでした。
お金は無尽蔵に湧いてくるわけではありません。株式市場に入っている資金には限りがあって、インフレとともに年々増えてはいくはずですが、SpaceXやOpenAIのような案件がいきなり来ると、規模が桁違いです。
2026年6月に上場したSpaceXは、上場初日の終値時点で時価総額が2兆1,000億ドル(約336兆円)に達しました。OpenAIも1兆ドル(約160兆円)規模での上場が取り沙汰されており、いずれも東証プライム市場全体と比較しても途方もない大きさです。
ちなみに今、東証プライム市場全体の時価総額は1,350兆円まで来ています。自分でも「こんなに上がっていたのか」と驚いたぐらいですが、SpaceX一社の時価総額だけで、プライム市場全体の4分の1に相当する計算です。IPOで実際に市場から吸い上げた資金も約750億ドル(約12兆円)と史上最大で、無視できないインパクトだと思います。
ーー日経平均株価の8万円は難しいという見立てですが、S&P500など米国株は上がりそうでしょうか。
S&P500も厳しいと思っています。これから米国では中間選挙が控えていて、それに向けて上がると見る投資家もいれば、市場はもうトランプ氏を気にしていないと見る投資家もいます。
ただ、S&P500はすでに大きく上げていて、ほとんど調整らしい調整を挟まずに最高値圏まで来ています。2025年の関税ショックの局面では調整しましたし、先のイラン戦争でも一時的に下げましたが、それ以外はほぼ一本調子で、今も最高値付近です。ここからさらに上がるのかという問題がまずあります。
加えて、OpenAIの上場も控えていますし、バリュエーションが割高な水準に来ています。昨年10月ごろには、すでにその点を指摘するレポートも出ていました。それがどう決着するかですね。