どうなる為替・株価? 金融アナリストが見る資金が「集まる場」と「抜けやすいセクター」
いま、投資家が注目しているのは「次」に資金が集まる場所です。高市早苗政権初の経済財政運営指針「骨太の方針」を読み解いた金融アナリスト・個人投資家の三井智映子さんはどう見るのでしょうか。
資金が集まるセクター・短期的に注意が必要な銘柄の特徴などについて解説していただきました。インタビュー全2回の最終回。
これから資金が集まるのは?
ーー早速ですが、これから資金が集まるセクターはどこか、お考えをお聞かせください。
まず、骨太の方針が出ましたので、それを踏まえてお話しします。
引き続きAIですが、AIの中でも堅めなのは電力やデータセンター周辺、つまりインフラです。AI向けの技術革新は非常に速いので、難しいと感じる方も多いはずです。技術そのものを追う銘柄はサテライトとして機動的に売買する必要が出てきますが、電力インフラは参入障壁が高めで、更新需要が比較的長く続きやすい特徴があります。受注残高の増加や生産能力の拡大余地といった点を確認しながら、腰を据えて見られる分野だと思います。
次に防衛とサイバーセキュリティです。実はこの取材で、三菱重工業などを挙げようと思っていたくらいで、私も保有しています。今でもそれほど割高感はありません。防衛は単年度で終わるテーマではなく、複数年の予算と受注残に支えられるセクターです。
政府方針でも安全保障関連の見直しや防衛生産基盤の強化が進められていますし、今回の日米協調介入の流れの中で、防衛予算の話が日米間で出る可能性もあると考えています。世界の分断が長期、超長期のテーマになっていく以上、ポートフォリオに入れておいて良いと思います。防衛関連は宇宙など、骨太の方針の複数のテーマにまたがる銘柄が多い点も魅力です。
もう一つは銀行です。金利が上がる時代になりましたから、地銀株は良いと思います。今回の日米協調介入はかなり強い介入でしたが、介入には時間稼ぎの側面があります。日本の円安には構造的な要因があるということを忘れてはいけません。
エネルギーを買わなければならず貿易赤字が続く。デジタル赤字もある。新NISAでS&P500やオール・カントリーといった外貨建て資産を買う流れも円安圧力です。加えて高市総理の積極財政も基本的には円安圧力になりやすく、植田日銀総裁は実質的な金融緩和を続けており、日米金利差もあります。
この構造が変わらない中で、協調介入によって日銀の利上げの確率が上がっています。「年一回あるかないか」だった見方が、来年中頃までに三回程度あり得るという織り込みになりつつあります。利上げの可能性まで含めて考えると、地銀、そしてメガバンクは良いでしょう。骨太の方針に地方創生が入っていることも追い風です。国土強靭化や建設インフラ関連も良いと思います。
ーー建設系の企業は最近なかなか株価が上がらない印象もありますが、どのように分析されていますか。
私は悪くないと思っています。インフラの老朽化は待ったなしで、絶対にやらなければならない分野です。ゼネコンは意外と底堅く推移してくるのではないかと個人的には見ています。ただし選ぶなら、骨太の方針に関連する大手ゼネコンなど、政府のお金が入ってきそうなところから選んだほうが良いというイメージです。
短期的に注意が必要なのは?
ーー逆に、資金が抜けやすいセクターはどのあたりでしょうか。
そもそも「マネーが集まりにくいところに、あえて投資する理由は何か」を自問していただきたいのですが、具体的には、期待先行で上昇したAI・半導体株の一部、金利上昇の影響を受けやすい高PERのグロース株、財務負担の重い不動産、市況がピークの可能性がある資源などは、短期的には注意が必要かもしれません。高PERのグロース株の中でも、赤字が続いていて増資による資金調達を繰り返している企業や、ストックオプションによる希薄化が大きい企業は、慎重に見たほうがよいと思います。
ーー先ほど夏枯れ相場の話がありましたが、「サマーラリー」という言葉もあります。平均するとどちらの相場が多いのでしょうか。
過去のデータでは、実際に夏は弱いのです。「弱い半年」は5月から始まると言われます。もちろん、これはあくまで傾向であって、未来を保証するものではありません。
ただ、需給面で言えば、夏に市場参加者が減ることはまず間違いありません。海外投資家が休暇に入りますし、今年前半に利益が出ていれば、利益確定のタイミングは夏の前に来る。この構図は変わらないと思います。
サマーラリーは独立記念日(7月4日)前後からレイバー・デー(9月7日)くらいまでの期間を指します。株価の方向を見るならサマーラリーという整理でも良いのですが、売買高や市場参加者の減少を見るなら、夏枯れという整理のほうが基本的には適切でしょう。夏枯れの薄商いの中で一部の大型株だけが買われ、結果的にサマーラリーになる、ということもあり得ます。
毎年注意しているのは、7月の中央銀行イベントが集中する週、いわゆる「中銀ウィーク」です。夏枯れの中の大イベントで値動きが起きやすく、薄商いの中で狙われやすい。私の体感では、近年は二分の一くらいの確率で株式相場か為替市場が大きく崩れていますから、7月の中銀イベントの週の前までにはポジションを軽くしておくと決めて投資したほうが資産は守りやすいです。
また、今年は米国で中間選挙も控えています。ボラティリティはメンタルを消耗させます。メンタルを休ませる意味でも、資金を守る意味でも、中銀イベント前はポジションを軽くしておくのが基本だと思いますし、過去のデータを振り返ると10月くらいからの回帰でも、傾向としては遅くないと言えます。
今はプロでも読みにくい相場です。過剰流動性で値動きが速く、システムトレードも増えていますから「安くなったら買いたい銘柄リスト」を作っておくことをお勧めしています。個人投資家の最大の強みは、ずっと持っていられることです。ヘッジファンドと違って「ここまでにパフォーマンスを出す」という締め切りがありません。
自分が良いと思った銘柄が成長していくと思えるのであれば、下がったときに「この株価なら納得して買える」というタイミングで愚直に仕込んでいく。これが個人にとって合理的な投資戦略の一つだと考えています。