「実はお父さんに200万円貸していて…」死後に突然発覚する“記録に残らない借金”、相続放棄できなくなる最悪のケース
前回は、司法書士の植田麻友氏に、ごく普通の家庭にこそ潜む相続の落とし穴を聞いた。今回は、実際に兄弟間で起こるトラブルの中身と、それを未然に防ぐ「遺言書」という選択肢について聞く。全3回の第2回。
みんかぶプレミアム連載「取り返しのつかない相続」
「友達に貸したお金」という記録に残らない借金の恐怖
相続では、借金も原則としてそのまま相続人が引き継ぎます。引き継ぎたくなければ相続放棄という選択肢がありますが、放棄をすればプラスの財産も一切受け取れなくなります。財産が5,000万円、借金も5,000万円近くありそうだ、といった際どいケースでは、どちらに転ぶか見極めるだけでも一苦労です。
カードローンのような正規の借入であれば、信用情報機関への照会や通帳の記録から比較的把握できます。本当に厄介なのは、どこにも記録が残らない個人間の貸し借りです。
生前に友人からお金を借りていた。そんな話は、家族が知らなければ調べようがありません。信用情報機関への照会では把握できず、現金でのやり取りなどであれば通帳にも記録が残らないからです。ところが、亡くなってしばらくすると「実はお父さんに200万円貸していまして」と連絡が来ることがある。借用書が出てくれば、相続人は返済を求められます。相続放棄の期限を過ぎていれば、原則としてもう放棄という逃げ道は使えません。一定の要件のもとで認められる可能性はありますが、絶対ではないため注意が必要です。
だからこそ、生前の「借りているお金はない?」という一言が効いてきます。親にとっては答えにくい質問かもしれませんが、あとで家族が背負うものを考えれば、聞いておく価値は十分にあります。
大人同士なら「みんな欲しい」より「みんないらない」のほうが多い。分けられない不動産の落としどころ
相続人が全員成人した子供というケースでは、実家をめぐって「みんな欲しい」と争いになることは、実はあまりありません。むしろ多いのは「みんないらない」という状況です。
すでにそれぞれが自分の家を持ち、生活の拠点も別にある。地方の実家に戻る予定もない。そうなると、誰も住まない家をどうするかで意見が割れます。売ってしまいたい人、まだ手放したくない人、そもそも話し合いに参加したがらない人。押しつけ合いのかたちで、協議は静かに難航していきます。
解決の型としては、大きく2つあります。一つは、相続人全員で共同取得したうえで売却し、代金を分ける方法。もう一つは、一人が不動産を取得する代わりに、他の相続人へその分の金額を現金で支払う方法です。前者は誰も家を残したくない場合に、後者は住み続けたい人が一人いる場合に向いています。