「留学も長期インターンもなくていい」ASD・阪大卒YouTuber綾瀬ちいが教えるガクチカがない人の自己PR術

「ガクチカに書けるような経験がない」「目立つ実績がなければ、大手企業には受からないのではないか」。就活を始めてESを書こうとすると、そんな不安を感じる学生は少なくない。
大阪大学文学部を卒業した綾瀬ちいさんは、ASD(自閉スペクトラム症)であることを公表し、自身の経験や考えをYouTubeで発信している。就活では商社やデベロッパーを中心に約10社へエントリーした。本人によると、途中で辞退した企業を除けば、選考で落ちたことはないという。
第1回では、就活の経緯と自身の特性を振り返ってもらい、ESや自己PRで経験をどう伝えていたのかを聞いた。
みんかぶマガジン連載「28卒就活 絶対第一志望企業に内定する!」
辞退した企業以外は選考落ちせず
──就活の動画、拝見しました。今日は、そのときの経験を改めて伺えればと思います。まず、どんな業界を受けていたのか、就活をざっと振り返っていただけますか。
商社とデベロッパーを中心に応募していました。エントリー数はあまり多くなくて、10社あるかないか、8社か9社くらいだったと思います。
動画でも、当時の自分を「大手病だった」と言っているんですけど、本当にその通りで、大手ばかり受けていました。納得できる内定をいただいたときに、それ以外はバーッと辞退したので、最後まで受け切った会社も少ないですね。辞退したところ以外では、落ちていません。
──それはすごいですね。
書類や面接を通過する、その流れは得意だったのかなと思います。ただ、そもそも受けた数が少ないので、私の経歴をそのまま参考にしてね、とは言いにくいです。
面接では強みに出たASDの特性
──ご自身の得意なことや苦手なことは、選考の場でも感じましたか。
私はASD(自閉スペクトラム症)という特性があることを公表しています。診断されたのは大人になってからなんですけど、面接では良い方向に出た特性があったと思います。
言葉で考えたり、話したりすることは比較的得意です。その代わり、地図を読んだり、空間を把握したりするのは苦手で、得意と不得意に凸凹があります。
面接は、言葉で順番にやり取りする場なので、得意なところを生かしやすかったのかなと思います。一方で、いろいろな方向から話しかけられるのは結構苦手で、「今、誰がしゃべった?」となってしまうんですよね。
面接でうまく話せても、みんなでしゃべる場になると難しいんですよね。飲み会や内定者懇親会は大人数になるので、そこはしんどかったです。同じコミュニケーションでも、場面によって全然違うなと感じました。
内定者懇親会で感じた違和感。入社前に辞退するまで
──選考は進んでいった一方で、内定をいただいた後はどうだったのでしょうか。
入社前に内定者懇親会などへ参加する中で、自分の内面や特性と、その会社の価値観や雰囲気が合っていないと強く感じるようになりました。選考では評価されて、入社を決めた会社だったんですけど、ギャップが大きかったんですよね。
私は適応障害を発症して、最終的には内定を辞退しました。
──内定が取れた後にも、難しさがあったんですね。そうした経験を、今はどんな思いで発信されているんですか。
うまくいった話だけではなくて、「ここは失敗したな」と思うことも伝えたいですね。YouTubeでは、自分の経験や、普段考えていることを話しています。就活もその一つで、ESや面接で意識していたことや、実際にあった出来事を動画にしています。
私自身、選考に受かることと、幸せに働ける会社を選ぶことって、本当に全然違うんだなと感じました。振り返って初めて分かったこともあるので、そういう経験も話していますね。
ASDと分かる前から、「なぜ人と違うのか」を考えていた
──ご自身のことを、よく振り返っていらっしゃるんですね。自己分析は、就活を始めてから取り組んだのでしょうか。
就活のために、急に自己分析を始めたわけではないですね。診断される前から、ちょこちょこ「人と違うな」と思うことはありました。
それが良いとか悪いとかではなくて、「何がズレてるんやろう」「このズレはどこから来てるんやろう」と、ずっと考えていました。就活を見据えていたというより、自分ってこういう人間だなと考えるのが、趣味じゃないですけど、癖みたいになっていましたね。
深掘りされても困らないESを作るコツ
──ESや面接でどんなことをしていたのかも、伺いたいです。まず、ESを書くときに大事にしていたことは何ですか。
基本的には、嘘をつかないことです。面接でも同じなんですけど、自分の経歴の大元に関わるところで話を作ったら、絶対に本番で違うことを言ってしまうなと思っていました。
同じ会社で4回くらい面接があることもあって、何度も何度も試されているように感じました。その中で、一貫性をすごく問われているんだろうなと思いましたね。話がぶれていたら、なかなか信用してもらえないですよね。
例えば、よくある「アルバイト先の売上に貢献しました」という話がありますよね。私は全くしていないんですけど、それを書いたら、「どのくらいの売上から、どのくらいに伸ばしたんですか」「何割増えたんですか」と聞かれるかもしれません。
私はバイト先の売上には関わっていなかったので、そこを突っ込まれたら答えられません。数字で聞かれたら、嘘ってすぐに苦しくなると思います。
ゼロから経験を作ることはしませんでしたし、実際にあったことも、できるだけ盛らないようにしていました。「嘘をついてるのかな」と疑われるくらいなら、本当のことを話した方がいい、というスタンスでしたね。
ESに書くときも、その話を詳しく聞かれたら答えられるか、考えてみるといいと思います。見栄えを良くしようとして説明できなくなるより、自分が本当に経験したことを、ぶれずに話せる方が大事だと思います。